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介護に生かしたいお化粧のちから 化粧×介護

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介護に生かしたいお化粧のちから 化粧×介護

臨床化粧療法士®河村しおりさん × 土屋訪問介護事業所・綾部清香さん × インタビュー・Unique 前田りえ


介護サービスのプロフェッショナル、土屋訪問介護事業所でブロックマネージャーを務める綾部清香さんと化粧を介して心身のケアを行う臨床化粧療法士の河村しおりさんの対談です。
介護の現場で、お化粧のちからは生かせるのか。
重度訪問介護のリアルな現状を話の舞台に、介護サービスを提供するヘルパーさん、受け手となるご利用者の双方の立場になってお化粧の生かし方を考えてみました。

前田りえ(以下:前田)
「介護とお化粧というテーマでお話伺いながら、介護現場でのお化粧の生かし方を探っていきたいと思っています。

一見、関係性が薄いように思いますが、お化粧と介護、その接点や結びつきを感じたご経験などはありますか?」


綾部清香さん(以下:綾部)
「今日、河村さんとのお話する機会をいただいたので、あれこれと考えていたら、自分の曾祖母のことを思い出しました。

小さい頃、曾祖母によく面倒をみてもらっていて、わたしはひいお婆ちゃん大好きっ子だったんですが、最近は思い出すこともなくなっていたのですごく懐かしい気持ちになりました。


思い出したのは、お婆ちゃんが通っていたデイサービスでお化粧をしてもらった日のことです。みんなにキレイって言われて、すごく嬉しかったんだと思います。私にも見せたいから、帰ってくるまでお化粧を落とさないで待っててくれて。
あの時の、真っ赤な口紅を塗ってうれしそうなお婆ちゃんの顔、久しぶりに思い出しました」



河村しおりさん(以下:河村)

「すごくいい思い出ですね。お化粧すると気分がいきいきして高揚感が生まれて、人によっては代謝が上がって、口腔ケアにもつながっていく。いい効果がいっぱいあります。

キレイになったねーって言われたら、やっぱりうれしくなりますよね」



綾部「そうですよね。いくつになってもキレイでいたいって思うのは当たり前で特別なことじゃない。それは、病気や障がいを持った方でも同じで、お化粧したり身だしなみが整っていると、気分よし!ってなりますよね。

臨床化粧心理士®の資格をとった方は、高齢者や介護が必要な方にもお化粧のアドバイスを行っているんですか?」



河村「2018年から化粧に関する3種類の資格講座を運用していて、認定資格者それぞれが美容に関する分野だけでなく、いろんな場で活躍しています。医療や介護の現場でも資格を生かしてがんばっている人はたくさんいますね。

臨床化粧療法は、お化粧を介した心理療法という考えが核にあるので、メンタルケアにおすすめなんです。
お化粧というのはあくまでもきっかけであって、行為に過ぎないんですが、それでもお化粧をすることですごくポジティブになったり、自信が持てるようになったり、心理面ではすごくいい効果が出ると思います」


前田「介護の現場でも、お化粧することを望まれる方はきっと少なくはないと思うのですが、いかがでしょう?
実際にお化粧をサポートすることはあるのでしょうか?」 


綾部「土屋訪問介護事業所は、重度介護が必要な方への訪問サービスが主なんです。動くことができなくて、自分ではお化粧をすることが難しいご利用者が多くいます。

動けなくてもキレイでいたい、お化粧してもらいたいという方にはその気持ちに応えたいと思うのですが、ご利用者の生活環境やスタッフとの関係性とか、それぞれ状況も違うので、そういうきっかけをつくるのが難しい場合もあるんです」



前田「お化粧って個人差があるから、サポートする側も得意な人もいれば苦手な人もいるはず。そこが一番の課題みたいですね


河村「お化粧って、いろんな段取りがあって、すべてに意思決定、判断、選択が必要とされる実はすごいハイレベルな行為。だからサポートする人にとってもハードルは高いはずです。

まずはスキンケアからトライしてみたらどうでしょう。肌を守って、清潔感を保つ意味でもスキンケアはとても大切です。
正しいやり方をすることで肌の状態がよくなるし、スキンシップという面でも効果的だと思います」


綾部「高齢者の方には、スキンケアサポートから声掛けするのはいいですね。
病気や障がいで介護が必要になった方に関しては、自分でやっていた頃と同じように生活することを望まれる方が多いんです。だからスキンケアも毎日、朝夕しっかりやってお肌ツルツル。うらやましいくらい(笑)
そんな方に、美容の知識やメイクに自信がないスタッフは積極的にお化粧の話をしにくいんですよね」


河村「病気になっても生活を変えたくない気持ちは、すごくよくわかります。
ご利用者の気持ちが一番だと思うから、まずそこを確認するきっかけが作れるとスムーズだと思うけれど…。
ヘルパーさんの得意、不得意があることを前提にすると、誰でも声を掛けやすくするような、仕組みがほしいところですね」


綾部「ヘルパーさんとご利用者の相性の問題もあるし、コミュニケーショ不足でうまくいかないというケースもあるので、スタッフに上手なきっかけの作り方を伝えたいな、と思うことが多いです」

河村「ちなみに、美容師法という法律では、美容の免許を持つもの以外は首から上のお化粧を行うことが禁止されているんです。この法律遵守の立場からすると、専門知識がない方がお化粧をしてあげることで、トラブルが発生することもあるんじゃないかと。それが心配ですね」


前田「美容師法という法律で規制されるくらいだから、お化粧にはメリットだけでなくて、気を付けなければいけないリスクもあるってことですよね」


河村「お化粧品が肌に与える問題や髪を染める時の市販のカラーリング剤のトラブルとか、いろいろあるんです。
薬を服用されている方も多いだろうし、体力、免疫が下がっている方も少なくはないと思うので、そういう方をケアする最低限の知識は持っていないと心配です」


綾部「美容師法では、そういう縛りがあるんですね。介護の制度では、お化粧はヘルパーの仕事として認められていますね。

居宅介護サービスの中でヘルパー(介護職員)が提供する生活支援業務に、メイクも含まれているんです。
身体整容(※1)の一部です。

私たち(介護職員)がお化粧をお手伝いするのは、美しくなってもらうことが目的ではなくて、身だしなみを整えたり、衛生面のケアの一つ、生活の中で必要なケアというとらえ方をしています」

※1訪問介護サービスや介護保険施設の介護現場で、介護者が提供する生活支援業務に「身体整容」という項目があって、洗顔・歯磨き・整髪・爪切り・耳かき・ひげそり・メイクのサービスが含まれています。


前田「お化粧は身だしなみの一部。そういう介護制度の内容だったり、現場の状況を知らない人が多いのではないでしょうか?

もっと多くの人が知ることになれば、ヘルパーさんを多面的にサポートすることができるのかもしれませんね」


綾部「重度訪問介護では、ご利用者の家族のかわりになって生活を支えることが求められるので、サポートする内容はものすごく多いし、幅広いんです。
人対人の関係性も重視される仕事だから、そういう面でヘルパーのサポートも必要なんです



河村「家族のかわりになって…はすごいっ!って思います。そうやって患者さんを支えているのを、知らない人も多いんじゃないでしょうか。社会に必要な素晴らしいお仕事だと思いますよ。

私たち臨床化粧療法士®もそういう介護事情というか、制度のことを知ることで、発展があるというか、お手伝いできることが見つけられるように思います」


綾部「ご利用者の生活の中に入ると、その方のペースで介護が成り立っているケースが多いのですが、河村さんが話されるように、トラブルにつながらないための知識は持っておくべきだと思うんです。
ご利用者の要望に応える時も、心配があるときはそのことをちゃんと説明することができれば、信頼関係が保てますよね」


河村「正確な情報を知っておくことは大事だと思います。
例えば、化粧をしたら、落とすサポートも考えてあげなくちゃダメですね。体を起こせない方がちゃんとお化粧を落とすにはどうしたらいいのか。
ふき取りタイプのクレンジングを使うとか、使ったことのない商品を使うのであれば肌にあうのかどうかをチェックするとか。
そういった知識を持っていないと、サポートする人も、される人も不安になるし、トラブルを起こさないための学びは絶対、もっておいたほうがいいですよ」


前田「お化粧はキレイになることでの心理的な効果だけでなく、介護の現場では、コミュニケーションづくりに生かすことができると思いますが、いかがでしょう?」


綾部「ヘルパーがご利用者との信頼関係をつくるのに必要なのは、ご利用者のことを知ることなんです。スキンケアやお化粧の話題からいろんなことを知ることができるかもしれないですね。

それにお化粧やスキンケアのサポートを行うと、肌に触れることになるので、グッと距離感がちぢまる気がします」



河村「コミュニケーションに生かすにもいいですね!
スキンケアの話をしましたが、他にはネイルもおすすめですよ。
ネイルは、装飾や好みの色でキレイになった手を自分の目で確認できるところがいいんです。鏡で見るのとは違ったリアル感があって、気持ちがあがりますよね」



綾部「アートっぽく仕上げることができなくても、シールとかありますよね。爪がツルツル、艶っぽい光沢感があるだけでも、ちょっといつもとは違う感じがして楽しいかも」



河村「臨床化粧療法士®協会の活動には、高齢者施設に出向き、お化粧体験や指導を行うこともあるのですが、訪問だとそれは難しいですよね。
でも、ヘルパーさんやご家族に向けて、お化粧のケア方法を知る機会があったら喜ばれるんじゃないでしょうか」


綾部「今、重度訪問介護の現場は人手不足で、十分な介護を受けられない方もいて、それをなんとかしたいんです。
一人でも多くの人が、ヘルパーさんがついて安心して生活していただけるようにするのが課題であって、大きな目標でもあります。

そのためにできるこは何か…を考えると、私は介護現場で働いていた経験から、ヘルパーさんが働きやすい環境を作っていきたいと思っているんです。
お化粧にかぎらずですが、ヘルパーが自分では対応しきれないこともたくさんあるので、そういう時に役に立つきっかけやヒントになるようなことを提供していくことが必要と感じています」

 


河村「綾部さんのお話しを伺って、重度訪問介護についてもっと深く知りたいと思いました。そういうきっかけをいただいてありがたいです。

ヘルパーさんをサポートすることが、患者さんのサポートにもつながっていくのだと思います。

お化粧によるプラスの心理効果をどうやって現場に生かしていくかは、まだ課題がありますね。
私たち臨床化粧療法士®が重度訪問介護の現場でどんなサポートができるか。その方法を見つけていきたいとも思います」


前田「綾部さん、河村さん、ありがとうございました!
介護の状況をよくするには、質と量の両面が十分に満たされることが必要だと思います。

お二人のお話から、介護に関わる方が質をめざしていける環境づくりへの大切さを改めて感じました。
それと、現場を知ることで多くのことに気付かされますね。

こうした領域の異なる異業種の出会いから、新しい支えあいのスタイルが生まれることを期待します」


綾部清香さん

ユースタイルラボラトリー㈱
土屋訪問介護事業所
エリアマネージャー

ユースタイルラボラトリー株式会社が運営する土屋訪問介護事業所に2015年入社。現在、千葉県・神奈川県の事業所管理を行うブロックマネージャーを務める。

★綾部さんのプロフィール詳細はコチラ
https://tsuchiya-houmon.com/4439/

★土屋訪問介護事業所
https://tsuchiya-houmon.com/

 

河村しおりさん

一般社団法人
日本臨床化粧療法士協会
代表理事

 

 

20代前半に指定難病(SLE・全身性エリテマトーデス)の診断を受ける。
闘病生活を送る中で、“化粧”による対人支援の道を見つけ、臨床化粧療法士®としてスキンケアの考え方を提唱。
化粧外来の運営や、医療機関内での美容相談、臨床化粧療法士®の認定・育成に力を注ぐ。

★河村さんへの講演依頼、臨床軽症療法士®へのセミナー依頼についてはこちらをご参考に。
ttps://japanclinical-cta.org/kigyou/
一般社団法人 日本臨床化粧療法士協会
https://japanclinical-cta.org/
★資格に興味を持った方はコチラを要チェック!https://japanclinical-cta.org/manabu/