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ALSと闘うSHUUさん 心の声

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ALSと闘うSHUUさん 心の声

2年前にALSと診断されたSHUUさん。彼のことは、ブログで知りました。
自分の気持ちを正直に綴ったSHUUさんのブログはすごい人気で、たくさんの読者がいます。
毎日更新される日々の小さな出来事は、読んでいるとほっこり癒されるし、病気と闘いながらも優しさを失わないSHUUさんの強さ、溢れんばかりの家族への愛に触れ、温かい気持ちになれます。
けれど、すべてがhappy話ばかりではなく、悲しみや悔しさや時には憤りさえ感じてため息が出てしまうことも。
一喜一憂、こんなにも心を揺さぶられるブログは初めてです。
実際のSHUUさんは、どんな方だろう。
望む未来、見えない苦しみ、伝えたい思い、知ってもらいたいこと、気づいてほしいこと…もっと、もっとたくさん心の声があるんじゃないのかな。

SHUUさん、きかせてください。
今、あなたが伝えたいことは、何ですか?


interview

「今、たくさんの人からエネルギーをもらって生きています。ALSになっても人と繋がれる。生きていくには、孤独になっちゃダメなんです」



「ブログを始めたのは、自分がどうやってALSと向き合って、どんな思いで生きたかを息子に残しておきたかったから。
それと、ALSに罹患した人の参考だったり、生きる活力になれば…という思いもあったので。でも、今では自分が生きていくための活力になっています。
一言で言うと、ブログは心のジム!
ALSに身体の筋肉は取られてしまいますが、心の筋肉は取られません。
ブログの読者からのコメント一つひとつが、心の筋トレになっています。

体が不自由になり、外出が難しくなったり、コミュニケーションがとりにくくなったり、できないことがどんどん増えていますが、それでも、人って繋がっていくことができるんです。人との繋がりがいかに大切で、生きていくのに必要だということを、今、切実に感じています。

もし、病気や障がいがあって孤独を感じている人がいたら、あきらめないで、少しづつでも自分から動いてみると変わることがたくさんあるんじゃないかなと伝えたい。
わたしも、ブログなどで自分自身について発信したり、催しや集まりに参加することで、たくさんの人と新しい繋がりができました。今までやったことのない活動にも参加したり、健常者の頃より忙しいかも(笑)
ずっとふさぎこんだままで、自分の殻に閉じ籠っていたら、今きっとこの世にはいないと思う。
なので、リアルでもSNSでもいいから、まず自分から動いてみる。これは、とても大切なことだと思います」


誰だって震えるほど寂しい時がある。
死ぬほど辛くなるときもある。
そんなとき、SHUUさんの言葉を思い出してほしいと思います。

「自分から動いてみようよ」

辛くても、苦しくても、それでも動いてみよう。
きっと、何かが変わるはず。そう信じてね。

★SHUUさんのブログ

https://ameblo.jp/als-toubyou-kiroku

「多くの人が気づいてほしい、知ってもらいたい『地域格差』。誰もが同じ介護環境で生活できる世の中になってもらいたい」

SHUUさんは現在、長野県にお住まいです。この地で生まれ育ち、ご自身で美容院を経営されているそうです。


「他の場所に住んだことない、生粋の地元民です。
自分の故郷であるこの地をとても大切に思っていますが、病気になり、いざ24時間介護が必要という状況になってみると、介護支援サービスが遅れていて大変なことばかり!地域格差を強く感じています。
現在、長野市で重度訪問介護を受けている人は、自分をいれて2人しかいないようです。事業所は1つもなく、この制度が十分浸透していない事実、それによる生活維持の不便さは生死に関わる問題だと思います。

ちなみに、同居家族がありながら、わたしのように24時間の介護、月744時間を獲得できたのは、なんと市内初なんです!
前例がない、初めてのことだから、申請を出すのも大変でしたが、支援してくれる方々がチームになって頑張ってくれたおかげで、どうにか希望が叶いました。
自分という事例ができたので、今後に繋がっていってほしいと心の底から思っています。」

『地域格差』という言葉が何度も頭を打ち付けます。難病になると、病気だけでなく闘う対象が本当にたくさんあって、へこみます…。
SHUUさんが月744時間を獲得したとしても、肝心のヘルパーさんがいなくては、生活が成り立たない。重度訪問護事業所がないため、ヘルパーさんを自分たちで探すことになり、現在も募集中とのこと。自薦ヘルパーさんを雇用することになるので、それもひと苦労の様子。
ブログを読んでいても、SHUUさんの日常にいかにヘルパーさんの存在が必要不可欠であるかがわかります。
いなくてはならない存在がいないという現状。
でも、それはSHUUさんだけの問題ではなく、重度訪問介護を必要とする多くの人が直面する悩みの種でもあるのです。


「家族のことを思うと、24時間介護体制を整えて、少しでも負担を軽減させたい。自分のためというよりも、寝る時間がほとんどなくて、ずっと頑張り続けている奥さんが辛すぎるし、それを知って何もできない自分も辛いです…」


SHUUさんの伝えたい思い。
声に出すことができなくても、どんなに強く、切実な思いかが心に響いてきます。
この思いを受け止める人がもっと、もっと増えて、拡がって、大きな力になってほしい。誰もが、同じように支援を受けながら生活できる環境が必要です。
わたしも、声あげて伝えていきたい。
それは生きる選択につながっていくことだから。

「生涯、美容師でいたい!これからも、夢を追いかけて、心の声を思いっきり伝えていきたい」

「生涯美容師の夢が、現役としては志半ばで終わってしまいました。
でも、自宅でサロンをやっているので、現役ではないけど、持ってる知識を受け継いでいくことはできます。だから、生涯美容師でいたいという思いは、今も変わりません。
治療薬ができて病気が治り、美容師になると言っている息子(今のところは…笑)と一緒にサロンに立てる日が来ること。
これが、一番の夢!叶ったら最高!!」


SHUUさんがALSになってから、一番といっていいほど激しく落ち込んだのは、もう自分はカットが出来ないと悟った時。ALSに診断されたり、気管支切開の時よりもショックだったそうです。
どれだけ、美容師という仕事にほれ込んでいたか…。


「病院に2週間入院してサロンに戻った初日に、お客様のカットに入ったら腕が全然上がらず…。
もう、カットが出来ないんだ。美容師終わりじゃん。人生も終わりだ…と思いました。
まだ確定してから1ヶ月弱くらいしか経っていなくて、あまりにも早すぎる進行に、どうしようもないくらい絶望的になって…。夫婦で大泣き。
その日はちょうど送り盆で、同じALSで亡くなっている父が空に帰る日だったんです。
一緒に連れてって…って。これ、ブログにも書いたな」

今、自宅の2階をサロンにして、奥さんのあっちゃんとスタッフさんがお客様を迎えているそうです。
あっちゃん、サロンのこともバリバリこなしてすごい。一人でがんばりすぎてない?大丈夫かな…。


「全部一人でなんて、やり切れてないですよ。いつも、SHUUさんに相談しながらすすめているんです。アドバイスしてもらうというか、指示をもらいながら。美容師としてSHUUさんは技術も経験も教わるところばかり。SHUUさんがいるから、やっぱり心強いです」とあっちゃんが明るく返してくれました。
あっちゃんはSHUUさんと一緒に、大切なものを一生懸命守っているんですね。


最近、ご自身の経験をいかして、障がいのある方や病気の方でも気軽に、気楽に利用できる美容サロンになるという、新たな目標もできたそうです。

「自分が当事者になって気づいたんですが、体を自由に動せなくてもおしゃれしていたい。キレイにしていたい。そういう思いはあるけれど、迷惑かけるとか、気を使うから疲れるとか、もう自分なんてとか、あきらめちゃっている人が多いと思うんです。
気軽に行ける美容院があって、キレイになれたら気持ちも上がるし、楽しみが増える。外出が難しい人が、外に出ることにワクワクする、そんな気持ちになるようなサロンにしたいと考えています」

■SHUUさんの自宅2階、美容サロン
SOUP HAIR FACTORY(スープ ヘア ファクトリー)」
カット、ヘアカラー、パーマなどご要望を事前に伝え、予約を入れて来店ください。
※駐車場有 
※エレベーター有(広さに制限があります)  
※車いすのままでの対応可
問い合わせ:026-217-7628

最後に。あっちゃんへ…。

SHUUさんの奥さんであるあっちゃん。全身全霊でSHUUさんを支えています。妻であり、母親であり、サロンの仕事もこなす毎日は、きっと私が想像する何倍もハードなはず。それでも、悲壮感など微塵も感じさせないあっちゃんの明るさには、人を元気にする力がぎっしり!とても、強くて、優しくて、魅力的な人です。


「進行が早く、確定2ヶ月でマスク式呼吸器を使い始め、3ヶ月で車いすになって24時間マスク式呼吸器を使う生活になり、8ヶ月で気管切開と胃ろう。
早すぎて、行政も何も追い付かず、妻は24時間全介助をしながら大量の書類や申請をこなし、毎日ほとんど寝る間もない日が続いて…。
気管切開をしないと生きられない、そんな生きる選択をせまられた時、それでも一緒にいてほしいと言ってくれて…。
妻は病気になった自分と共に生きる選択をしてくれました。感謝なんて言葉では言い表せない。
気弱になって、悲観的なことを言っても、いつもわたしに最善な方法を考えてくれる。本当に心から思ってる、ありがとうって…。
妻と出会えたことが人生最大の幸せです


SHUUさんの思い、あっちゃんにしっかり伝わっていますよね。

読んでいただいた方にSHUUさんからのメッセージです。

「普通だったり、当たり前にできることが、どれだけ大切かを感じて、後悔しない生き方をしてほしい。それが自分の経験から伝えられることです」


後悔しないように、わたしは、まず大切な家族、支えてくれている人に、ちゃんと気持ちを伝えようと思いました。
心の声を一言、一言、丁寧に聞かせていただき、わたしなりの言葉で伝えさせていただいたことに、SHUUさんあっちゃんに心から感謝します。

※このインタビューは2020年11月にnote「NOW・いま」に掲載した記事を年数等のみ更新して「Unique」で掲載しています。

Unique/Writing Maeda Rie