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介護に生かしたいお化粧のちから 化粧×介護
介護に生かしたいお化粧のちから 化粧×介護エンディングノート、遺言でもない、今の思いを伝える「伝えあいノート」。
Uniqueが見つけたイイもの紹介。 千葉県船橋市で認知症カフェを運営する、一般社団法人エプロンさんが発案、制作の「伝えあいノート」です。 表紙をめくってみた瞬間に、ドキリとしました。 あまりにも自分の心境にピタリとはまるメッセージ。 声に出していいたいけれど言いにくい、どうやって伝えればいいのかわからない。それならば、伝えたいことを一つずつ整理しながら書き入れていきましょう。 そんな胸の内をついてくるメッセージからは、お終いに向けて心残りのないようにしたいけれど、まだ早い? それに、なにをどうやって…といったモヤモヤがハレルようで、軽い気持ちでペンをとることができそう。 ノートを開いてメッセージを読んでみると… これは想いを伝えるためのノートです。親子や 夫婦など深い距離の人には 何だか照れくさくて耐えられない事ってありますね。 または、あんまり話ができない雰囲気の関係なら伝えたいのに伝えられていないことたくさんあるのではないでしょうか。 自分だけでなく、友人や仕事仲間、大切な人や家族が病気になったり、老いを感じた時に気づかされること、たくさんあります。 やり残していること、心残り、そして伝えておきたいこと。 面と向かって話すのも照れくさい。それに、うまく言えそうにない。 LINE、メール、手紙…。伝達手段は選び放題だけれど、それでいいの?と腑に落ちない自分がいます。私が伝えたいことは、放置したままになっている、そんな気づきがありました。 介護や 人生の別れは突然訪れます。これは 老若男女 皆に言えることです。その時にああ 伝えておきたかった。ああ知りたかった。と後悔しないよう このノートを活用して話をするきっかけを作っていただけると嬉しいです。 まずは、母の日に母にプレゼント。 「いつでもいいから、このノートに思うまま、書いてみてね。それを、読ませてもらえたらうれしい」 と伝えました。 1ヵ月以上経っていますが、まだノートを見せてくれません。 でも、どうやらゆっくりペースで書き進めているみたい。テーブルの端に置かれたノートの間には鉛筆が挟まっているのを見て見ぬふり。1ページづつ、丁寧にゆっくりと。見せてくれるのを、楽しみに待つことにしています。 最後にこんなメッセージ… ここでお願いしたいのは、まずは人生の終わりに関することではなくこれまでのことから始めていくことが大切ですまた伝えて欲しい人に渡して書いておいてもらう時にはあなたの 伝えたいメッセージを書いてから渡してくださいね パートナーにも「伝えあいノート」 自分の大切な人、パートナーに向けた「伝えあいノート」もあるんです。 いつも顔を突き合わせているお相手ですが、どんなことをやりたいと思っていて、どんなことが一番の思い出になっているとか、知っています? 分かっているようで、知らなかったことのほうが多いものです。 それに、面と向かって先のこと、介護や延命どうしたい?なんて話、なかなかする機会もないですよね。お互いにとって新しい発見が生まれるかも。 足並みそろえてこれからも生活を一緒にする上でも、役に立ちそうです。 このノートはお取り寄せができるので、ご希望の方はエプロン・ホームページからお申込みください。https://apron.group/ 1冊300円(①親御さん ②パートナー) ※ゆうメールでの配達は送料180円(2冊まで)※支払いはゆうちょ銀行への振り込みになります。 介護セミナーや高齢者のケア、ワークショップなど、多彩な活動を行うにエプロンさん。カフェを開いていて、日替わりの美味しいランチがいただけます。 Facebookhttps://www.facebook.com/apron2019BLOGhttps://apron2019.hatenablog.com/ TEL:047-779-4662(平日10:00~17:00) Unique運営事務局 Writing RieMaeda心とカラダを調えるセルフメディケーション・患者と介護者の支えあいのケアを提案していきます。
カラダの不調をなくすための、気持ちイイの先をめざしたセルフケアを。 セルフメディケーション。 自分自身を癒し、体調を調えて過ごす。 それができていれば、きっと毎日、元気でいられるのだろうと思います。 もちろん、病気にならないなんてことはないけれど、リスクは減ります。そして何よりも、つらさから解放されて気持ちよく過ごせるようになれば、自然と心も軽くなりますね。 でも、現実は… -時間がなくて。 -やり方がわからない。 -どうせ長続きしない(あきらめモード)。 できない理由はたくさんあるけれど、この際、思い切って不調を改善するためのはじめの一歩を踏み出してみませんか? Uniqueでそのきっかけがつくれたら…、そんな思いでセルフメディケーションセミナー始めます。 皆さんのご参加をお待ちしています。 病気や障がいがあっても、セルフケアを日常に取り入れてく。支えあいのケアをご提案します。 慢性的なカラダの不調は心にも影響を及ぼします。呼吸がしずらく感じたり、動悸がしたり、夜なかなか眠れない…。自律神経の乱れもほっておくと修復が難しくなってきます。 自分ケアは早いに越したことはない。 それは、障がいや病気のある、なしに関わらずです。病気や身体の機能障害の影響からくる様々な不調は、日々のケアで療養生活にも違いが出てきます。 例えば、車いす生活を送る方は、足のむくみに悩む人が多くいます。むくみが軽減できればカラダ全体に血流がよくなり、冷えや頭痛、関節のこわばりなども改善することも。 ご自身で行うことが難しいときは、ご家族やサポートされる方と一緒に、ケアの方法を学んでみてはいかがでしょう。 Uniqueでご提案するセルフメディケーションは“自分だけで行うケア“ではなく、支えあいのケアでもあります。 家族やサポートされる方と支えあいながら続けていき、それが日常の中で浸透すれば、ケアのある生活習慣が生まれていきます。 大切な人を支える方にも知ってもらいたい。 障がいや病気のある人も、ない人も、支援される方、支えているご家族も、皆さんに気付いてもらいたい。 セルフケアで自分を、生活を変えていきましょう。 カラダが欲する。心がリラックス。自分自身が求めるバランスの調え方を見つけましょう! Uniqueのセルフメディケーションセミナーでは、様々なセルフケアを学ぶことができます。 自分にあった方法を見つけていくために、興味をもったセミナーに体験してみることをおすすめします。 どんなセミナーが行われるのかは随時、インストラクター紹介を掲載していきますのでお楽しみに。 ご興味をもっていただけたら、facebookグループ「Unique S-medi」に参加してみてください。 セミナー内容やインストラクター紹介、イベント情報も配信していきます。 Unique Self-medication | Facebook 【イベント・セミナー開催報告】 ●10/16(日)セルフメディケーションイベント開催 https://unique-w.net/category-event/4141/ https://unique-w.net/category-event/4225/ https://unique-w.net/category-event/4254/ ●11/23(祝・水)リンパドレナージセミナー開催6/21「歌おう!つながろう」YouTubeLIVE 絵本「フィーロくんのいと」
Uniqueとたか&ゆうき主催のYouTubeLIVE、後半は絵本の紹介です。 「フィーロくんのいと」は、ALS患者の合田朝輝さんの思いを子どもたちに伝えるために、合田さんの友人たちが協力し合い、完成した絵本です。 主人公のライオンのフィーロくんは、体がうごかなくなるという病気になって絶望し、家に閉じこもってしまいます。 そんなフィーロくんを支えて、励ましているのが、親友のねずみのナウくんです。 ある時、森は火事になり、たくさんの森の仲間が助けを求めていました。 ナウくんは、みんなのためにフィーロくんだからこそできることがある!とフィーロくんに伝えます。 その言葉に気付かされ、フィーロくんはナウくんと一緒に森の窮地を救っていきます。 YouTubeライブでは、この作品をただ紹介するだけではなく、協力者であり、合田さんの近しい友である皆さんと一緒に、読み語りの映像を作り観ていただくことにしました。 より深く、より印象深く、絵本に託した合田さんの思いが伝わってほしいと思ったからです。 出演者は皆、読み語り初チャレンジでしたが、それでもセリフには一言、一言、心が込められていて、すてきな作品を皆さんに観ていただくことができました。 合田さんからのメッセージ「あとがき」 読み語りの最後は、フィーロくんのモデルとなった合田さんが合成音声で、ご自身の「あとがき」を読み上げてくれました。 絵本を作った「豊浜絵本制作隊」のこと 絵本は合田さんの友人が発起人となり、絵描きとして作家活動を行っていたデニー・ホリミズさんに声がかかり、3人が力をあわせて作品を生みだしました。 住む場所も近所、同じくらいのお子さんがいるという近しい関係での共同制作。 地域の名前をとって「豊浜絵本制作隊」と名付けたそうです。 絵本では、その美しい色合いと、登場するキャラクターの存在感ある描写にまず眼を奪われることでしょう。 絵を担当されたデニーさんは、 「合田さんの思いを伝えるには、どんなふうに表現したらいいのかを常に考えながら描いていきました。 登場する動物は立体感を出すためにコラージュという手法を使っています。 どのシーンにも思いが込められています」と言います。 一年以上かけて制作した皆さんの思いが届きますように。 そして、合田さんを中心に生まれた「豊浜絵本制作隊」の“つながり”が、もっと大きく、広く伝わっていくことを願います。 ■デニーさんの作品をもっと見たい方は…https://lit.link/dennyhorimizu ■合田朝輝さんインフォメーションhttps://lit.link/tomokigoda ■絵本の購入 https://p-books.jp/ehons/ehon/b0762/ ★6/21 YouTubeLIVE アーカイブ https://www.youtube.com/watch?v=ZNH5uHeC0sE&t=1551s たくさんの応援コメントありがとうございました!6/21「歌おう!つながろう」YouTubeLIVE たか&ゆうき
Uniqueとたか&ゆうき主催のYouTubeLIVE無事終了しました。 リレーソングや絵本「フィーロくんのいと」の読み語り。初めてのチャレンジ盛りだくさんで、最後までドキドキの1時間半でした。ライブを振り返りながら、たか&ゆうきのこと、リレーソングや新曲のことを再度、ご紹介していくことにします。 ★6/21 YouTubeLIVE アーカイブ https://www.youtube.com/watch?v=ZNH5uHeC0sE&t=1551s 歌への思いが絆に。たか&ゆうき。 たかさんとゆうきさんが初めて出会ったのは、デイサービス。 ちょっと変わった出会いのようですが、それから二人の活動がスタートしたのだから、運命の出会いと言えるかもしれません。 たかさんはALSの診断後、デーサービスに通うようになり、介護者として働いていたゆうきさんと音楽の話で意気投合。 ユニットを組んで、音楽活動を始め、2022年には念願のコンサートを開き、会場には二人を応援する観客でいっぱいになったそうです。 ALS患者と介護者。 なかなかレアな組み合わせの二人。 たかさんは「ゆうきの歌をたくさんの人に聞いてもらいたい。そのために、自分も歌い続けたい」と。 ゆうきさんは「たかが、ずっと音楽を続けていけるように、そのために二人で活動する」と話します。 ずっと前から心を許す友のように支えあっている二人の歌は、 少し切ない歌詞とメロディー。 リレーソングのお題になった「いろえんぴつ」も、思わず子供の頃を思い出してしまう懐かしくてやさしい歌です。 参加してくれた方は、それぞれの思いで歌に挑戦してくれました。 世界で一つ、37人の気持ちがつながった「いろえんぴつ」。 ずんずんと心に響いてきて、いつの間にか口ずさんでしまうほど惹きこまれた、というコメントをたくさんいただきました。 参加してくれた皆さん、本当にありがとうございました。 ★リレーソング「いろえんぴつ」 伝えたい言葉が詰まった新曲「限りある時の中で」 たかさんが体調を崩して出演が難しくなったため、今回はゆうきさんがたかさんの分まで頑張りました。 新曲「限りある時の中で」をゆっくりと、強く、静かに歌いきかせてくれました。 この歌は、難病を抱えながら生活を送る人へのプレゼント。何人もの患者や患者を支える方の話を聞いて、伝えたい言葉、なかなか口に出してい言えない言葉、残したい言葉を紡いでできた歌なのです。 時は無限かもしれないけれど、自分に与えられた時間は決して無限ではなく限りがあります。今を、この瞬間を大切に。精一杯、自分らしく。 二人からの、そんなメッセージが歌にのって聴こえてくるようです。 もう一度、この歌を聞きたい。そんな声が広がっていきますように。 ★たか&ゆうきHP https://alllovesings.jimdofree.com/ ★ゆうきさんの着ていたオリジナルの応援Tシャツ販売 https://all-love-sings.stores.jp/ ★YouTubeぱくぱくチャンネル https://www.youtube.com/@user-zn6vn3mi7u たくさんの応援コメントありがとうございました!難病患者の交流会「icottoイコット」に遊びにきませんか?
難病患者のコミュニケーションをサポートし、難病の啓発と生活の質の向上を目指した活動を行なっている民間の団体「icotto」をご紹介します。現在、指定難病に入る疾患は330以上もあります。治療法がなく、体調維持が最善という状況の中、難病の患者さんは、病気の進行や不自由な環境と闘いながら日々を送っています。 病気になると、外出するのが困難になる方が多くいます。コロナ禍により、介護する家族も同様で、他人とのコミュニケーションをとる機会が減って孤独を感じる人も少なくありません。icottoでは、疾患に関係なく、患者や家族、さらに医療、介護、セラピストなど患者をサポートする側の人も参加できる交流会を開き、情報交換を行っています。 「icottoの名前は「気軽にいこっと」というイメージでつけました。誰もが気軽に参加して質問をしたり、また答えたり。たわいもないおしゃべりに花を咲かせてもらいたいという思いが込められています。闘病を続けていると、一人だと考えすぎてしまい、絶望と孤独しか見えなくなってしまうことがあります。人とコミュニケーションをとることで、気持ちが明るくなるし、元気になれる。新しい出会いや繋がりができるなど、喜びや楽しみも生まれます。それに、実体験をもとにしたナマ情報が得られる場も必要だと思ったんです」 icotto主催:前田理恵/丸山明子 icottoの公式LINEに登録すると、交流会のお知らせや関連する情報が配信されてきます。登録者がやることは、自分自身が必要と思う情報に対し、必要なアクション(参加申し込みなど)をおこすだけ。体調に変化の多い患者さんの負担にならないよう、都度つど返信したり、コメントする必要もないので気軽に登録、参加ができます。現在、全国各地、120名近い登録者があり、大所帯となったicotto。登録者が自由に、好きな時に参加できるオープンチャットも好評で、日々、悩みや情報交換が行われています。 難病に関連しなくても、活動にご興味を持っていただければ登録は可能です。ちょっと覗いてみようかな。そんな気持ちでicottoに立ち寄ってみてください。 団体名 icotto(イコット) 登録者数 130名※2022.5月現在 登録料 無料 登録方法 公式LINEにご登録くださいhttps://lin.ee/55pcWLy1l 登録対象者 難病患者(確定診断のみ)、難病患者ご家族、介護、医療、 福祉に携わる方、難病支援(ボランティア)に関心のある方。 対象地域 全国 主な活動 ・交流会開催※現在オンラインのみ ・LINEによるオープンチャット常設・難病・介護・リハビリに関する情報提供※icottoは個人的なお付き合いを目的とした集まりではありません。個人情報を公にしたり、特定の方へのアプローチはご遠慮ください。 主催者 前田理恵・丸山明子 当い合わせ icottocafe@gmail.com
– INTERVIEW –
インタビュー
ALSと闘うSHUUさん 心の声
2年前にALSと診断されたSHUUさん。彼のことは、ブログで知りました。自分の気持ちを正直に綴ったSHUUさんのブログはすごい人気で、たくさんの読者がいます。毎日更新される日々の小さな出来事は、読んでいるとほっこり癒されるし、病気と闘いながらも優しさを失わないSHUUさんの強さ、溢れんばかりの家族への愛に触れ、温かい気持ちになれます。けれど、すべてがhappy話ばかりではなく、悲しみや悔しさや時には憤りさえ感じてため息が出てしまうことも。一喜一憂、こんなにも心を揺さぶられるブログは初めてです。実際のSHUUさんは、どんな方だろう。望む未来、見えない苦しみ、伝えたい思い、知ってもらいたいこと、気づいてほしいこと…もっと、もっとたくさん心の声があるんじゃないのかな。 SHUUさん、きかせてください。今、あなたが伝えたいことは、何ですか? interview 「今、たくさんの人からエネルギーをもらって生きています。ALSになっても人と繋がれる。生きていくには、孤独になっちゃダメなんです」 「ブログを始めたのは、自分がどうやってALSと向き合って、どんな思いで生きたかを息子に残しておきたかったから。それと、ALSに罹患した人の参考だったり、生きる活力になれば…という思いもあったので。でも、今では自分が生きていくための活力になっています。一言で言うと、ブログは心のジム!ALSに身体の筋肉は取られてしまいますが、心の筋肉は取られません。ブログの読者からのコメント一つひとつが、心の筋トレになっています。 体が不自由になり、外出が難しくなったり、コミュニケーションがとりにくくなったり、できないことがどんどん増えていますが、それでも、人って繋がっていくことができるんです。人との繋がりがいかに大切で、生きていくのに必要だということを、今、切実に感じています。 もし、病気や障がいがあって孤独を感じている人がいたら、あきらめないで、少しづつでも自分から動いてみると変わることがたくさんあるんじゃないかなと伝えたい。わたしも、ブログなどで自分自身について発信したり、催しや集まりに参加することで、たくさんの人と新しい繋がりができました。今までやったことのない活動にも参加したり、健常者の頃より忙しいかも(笑)ずっとふさぎこんだままで、自分の殻に閉じ籠っていたら、今きっとこの世にはいないと思う。なので、リアルでもSNSでもいいから、まず自分から動いてみる。これは、とても大切なことだと思います」 誰だって震えるほど寂しい時がある。死ぬほど辛くなるときもある。そんなとき、SHUUさんの言葉を思い出してほしいと思います。 「自分から動いてみようよ」 辛くても、苦しくても、それでも動いてみよう。きっと、何かが変わるはず。そう信じてね。 ★SHUUさんのブログ https://ameblo.jp/als-toubyou-kiroku 「多くの人が気づいてほしい、知ってもらいたい『地域格差』。誰もが同じ介護環境で生活できる世の中になってもらいたい」 SHUUさんは現在、長野県にお住まいです。この地で生まれ育ち、ご自身で美容院を経営されているそうです。 「他の場所に住んだことない、生粋の地元民です。自分の故郷であるこの地をとても大切に思っていますが、病気になり、いざ24時間介護が必要という状況になってみると、介護支援サービスが遅れていて大変なことばかり!地域格差を強く感じています。現在、長野市で重度訪問介護を受けている人は、自分をいれて2人しかいないようです。事業所は1つもなく、この制度が十分浸透していない事実、それによる生活維持の不便さは生死に関わる問題だと思います。 ちなみに、同居家族がありながら、わたしのように24時間の介護、月744時間を獲得できたのは、なんと市内初なんです!前例がない、初めてのことだから、申請を出すのも大変でしたが、支援してくれる方々がチームになって頑張ってくれたおかげで、どうにか希望が叶いました。自分という事例ができたので、今後に繋がっていってほしいと心の底から思っています。」 『地域格差』という言葉が何度も頭を打ち付けます。難病になると、病気だけでなく闘う対象が本当にたくさんあって、へこみます…。SHUUさんが月744時間を獲得したとしても、肝心のヘルパーさんがいなくては、生活が成り立たない。重度訪問護事業所がないため、ヘルパーさんを自分たちで探すことになり、現在も募集中とのこと。自薦ヘルパーさんを雇用することになるので、それもひと苦労の様子。ブログを読んでいても、SHUUさんの日常にいかにヘルパーさんの存在が必要不可欠であるかがわかります。いなくてはならない存在がいないという現状。でも、それはSHUUさんだけの問題ではなく、重度訪問介護を必要とする多くの人が直面する悩みの種でもあるのです。 「家族のことを思うと、24時間介護体制を整えて、少しでも負担を軽減させたい。自分のためというよりも、寝る時間がほとんどなくて、ずっと頑張り続けている奥さんが辛すぎるし、それを知って何もできない自分も辛いです…」 SHUUさんの伝えたい思い。声に出すことができなくても、どんなに強く、切実な思いかが心に響いてきます。この思いを受け止める人がもっと、もっと増えて、拡がって、大きな力になってほしい。誰もが、同じように支援を受けながら生活できる環境が必要です。わたしも、声あげて伝えていきたい。それは生きる選択につながっていくことだから。 「生涯、美容師でいたい!これからも、夢を追いかけて、心の声を思いっきり伝えていきたい」 「生涯美容師の夢が、現役としては志半ばで終わってしまいました。でも、自宅でサロンをやっているので、現役ではないけど、持ってる知識を受け継いでいくことはできます。だから、生涯美容師でいたいという思いは、今も変わりません。治療薬ができて病気が治り、美容師になると言っている息子(今のところは…笑)と一緒にサロンに立てる日が来ること。これが、一番の夢!叶ったら最高!!」 SHUUさんがALSになってから、一番といっていいほど激しく落ち込んだのは、もう自分はカットが出来ないと悟った時。ALSに診断されたり、気管支切開の時よりもショックだったそうです。どれだけ、美容師という仕事にほれ込んでいたか…。 「病院に2週間入院してサロンに戻った初日に、お客様のカットに入ったら腕が全然上がらず…。もう、カットが出来ないんだ。美容師終わりじゃん。人生も終わりだ…と思いました。まだ確定してから1ヶ月弱くらいしか経っていなくて、あまりにも早すぎる進行に、どうしようもないくらい絶望的になって…。夫婦で大泣き。その日はちょうど送り盆で、同じALSで亡くなっている父が空に帰る日だったんです。一緒に連れてって…って。これ、ブログにも書いたな」 今、自宅の2階をサロンにして、奥さんのあっちゃんとスタッフさんがお客様を迎えているそうです。あっちゃん、サロンのこともバリバリこなしてすごい。一人でがんばりすぎてない?大丈夫かな…。 「全部一人でなんて、やり切れてないですよ。いつも、SHUUさんに相談しながらすすめているんです。アドバイスしてもらうというか、指示をもらいながら。美容師としてSHUUさんは技術も経験も教わるところばかり。SHUUさんがいるから、やっぱり心強いです」とあっちゃんが明るく返してくれました。あっちゃんはSHUUさんと一緒に、大切なものを一生懸命守っているんですね。 最近、ご自身の経験をいかして、障がいのある方や病気の方でも気軽に、気楽に利用できる美容サロンになるという、新たな目標もできたそうです。 「自分が当事者になって気づいたんですが、体を自由に動せなくてもおしゃれしていたい。キレイにしていたい。そういう思いはあるけれど、迷惑かけるとか、気を使うから疲れるとか、もう自分なんてとか、あきらめちゃっている人が多いと思うんです。気軽に行ける美容院があって、キレイになれたら気持ちも上がるし、楽しみが増える。外出が難しい人が、外に出ることにワクワクする、そんな気持ちになるようなサロンにしたいと考えています」 ■SHUUさんの自宅2階、美容サロン「SOUP HAIR FACTORY(スープ ヘア ファクトリー)」カット、ヘアカラー、パーマなどご要望を事前に伝え、予約を入れて来店ください。※駐車場有 ※エレベーター有(広さに制限があります) ※車いすのままでの対応可問い合わせ:026-217-7628 最後に。あっちゃんへ…。 SHUUさんの奥さんであるあっちゃん。全身全霊でSHUUさんを支えています。妻であり、母親であり、サロンの仕事もこなす毎日は、きっと私が想像する何倍もハードなはず。それでも、悲壮感など微塵も感じさせないあっちゃんの明るさには、人を元気にする力がぎっしり!とても、強くて、優しくて、魅力的な人です。 「進行が早く、確定2ヶ月でマスク式呼吸器を使い始め、3ヶ月で車いすになって24時間マスク式呼吸器を使う生活になり、8ヶ月で気管切開と胃ろう。早すぎて、行政も何も追い付かず、妻は24時間全介助をしながら大量の書類や申請をこなし、毎日ほとんど寝る間もない日が続いて…。気管切開をしないと生きられない、そんな生きる選択をせまられた時、それでも一緒にいてほしいと言ってくれて…。妻は病気になった自分と共に生きる選択をしてくれました。感謝なんて言葉では言い表せない。気弱になって、悲観的なことを言っても、いつもわたしに最善な方法を考えてくれる。本当に心から思ってる、ありがとうって…。妻と出会えたことが人生最大の幸せです」 SHUUさんの思い、あっちゃんにしっかり伝わっていますよね。 読んでいただいた方にSHUUさんからのメッセージです。 「普通だったり、当たり前にできることが、どれだけ大切かを感じて、後悔しない生き方をしてほしい。それが自分の経験から伝えられることです」 後悔しないように、わたしは、まず大切な家族、支えてくれている人に、ちゃんと気持ちを伝えようと思いました。心の声を一言、一言、丁寧に聞かせていただき、わたしなりの言葉で伝えさせていただいたことに、SHUUさんとあっちゃんに心から感謝します。 ※このインタビューは2020年11月にnote「NOW・いま」に掲載した記事を年数等のみ更新して「Unique」で掲載しています。 Unique/Writing Maeda Rie「心を支える化粧のちから」臨床化粧療法士®河村しおりさん Interview
自分の容姿にコンプレックスを抱えていたり、病気や事故による外見の変化に悩む人の苦しみを聴き、改善する方法を一緒に考え、寄り添うように支えてくれる人がいます。 臨床化粧療法士®のことを、あなたは知っていますか? 誰もが、自分の外見や容姿について、大なり小なりコンプレックスを感じているものです。 不安や悩みは一人で抱え込むことで大きくなり、苦しみが増して、生きづらさにつながっていく…。 そんな負のスパイラルにハマって抜け出せなくなっている人に手を差しのべてくれるのが「臨床化粧療法士®」です。 この資格の生みの親であり、活動の普及に力を注ぐ河村しおりさんに、化粧の持つちからについてお話を伺いました。 ネガティブな経験がポジティブの土台になる! 前田:河村さんがお化粧のちからで人をケアすることになった経緯は、日本臨床化粧療法士協会のホームページを拝見して知ることができました。20代に難病SLE(全身性エリテマトーデス)を発症し、そこから長い闘病生活。そして、社会復帰、法人設立、新たな資格制度をつくって普及活動…すごくたくさんの経験をされていて、河村さんのこれまでの人生を本にしたら、一冊じゃ収まり切れないくらい長編作品ができそうです(笑) https://japanclinical-cta.org/aisatsu/ 河村しおりさん(以下:河村):そうなんです。波乱万丈ですよ。難病になってからはしばらく、北海道の実家で無気力な闘病生活を送っていました。このままじゃいけないと思って東京に飛び出し、それから友人の美容ディーラーの仕事を手伝うことになって兵庫県に移り住み、また東京に戻り協会を設立して…。 慌ただしい人生ですよね(笑) 前田:無気力な闘病生活を送る河村さんは想像できないですね。こうして話ながらもすごいパワーを感じています。それでも、これまでの道のりにはたくさんの困難があったと思いますが、それを乗り越えてきたエネルギー源ってなんでしょう? 河村:落ちるだけ落ちて、あとは前を向くしかないというところまでいったので、開き直り的な底力はあったかもしれませんね。 でも、自分一人でここまでやってきたというわけではなく、私はすごく人に恵まれていて、支えてくれる人がいたから進むことができたんです。人の出会いや繋がりはとても大切ですね。 前田:自分を理解してくれたり、賛同してくれる人の存在は本当に大切だと思います。ただ、そういうご縁や繋がりを作っていくには、自分自身に熱量がないと人の心に届かない。さらにその熱量を維持していくには、強い思いが必要ですよね。 河村:美容ディーラーの仕事に就いて、化粧を通じた社会貢献という道が見えてきたんです。それで、東京に戻り自分の容姿に苦しむ人の相談にのる「お化粧ボランティア」を始めました。そのときに、患者ではなく利益を優先する現場に対して強い違和感を感じて、医療と美容を繋ぐ役割りになろう!お化粧のちからで人をケアしていきたいって、心から思ったんです。その思いが今の活動の原点ではありますね。 前田:患者主体という意識や気づきが持てたのは、ご自身が苦しんだ経験があったからこそなんでしょうね。 河村:そうなんです。患者でなければ気づかなかったかもしれませんね。ネガティブだった時はすごく辛かったけれど、今ではその経験が役に立っていると言えます。ネガティブな経験があったからこそポジティブになれた。生きていて、無駄なことなんて、きっと何もないんですよね。 喜びを生み、自分を取り戻すお化粧のちからは絶大! 前田:お化粧のちからで人をケアするというのは、具体的にはどんなふうに? 河村:対象者によって変わってきますが、どんな方にも知ってもらいたいと思うのが、正しいスキンケアです。古くて劣化した化粧品を使わないための品質チェック。洗顔や頭皮の洗浄のやり方、肌の状態にあわせたスキンケア方法…、自分で自分の肌を守るための基本指導を積極的に行っています。肌を健やかに保つことは感染症予防や褥瘡予防に通じるし、スキンケアをないがしろにして肌がガサガサでは、お化粧してもきれいにならないですよね。 スキンケアは、老若男女すべての人に関係することなんです。 前田:医療従事者の方々に向けたスキンケアセミナーを積極的に行っているそうですね。 病気になっても、歳をとっても肌はスベスベがいいし、身だしなみを整えていたいものです。そういう患者の気持ちを分かって、気配りをしてくれる人が増えてほしいと思います。 化粧療法では、心理的な面で実際に変化や効果はどんなふうに出ているのでしょうか? 河村:介護施設で利用者さんにメイクアップを楽しんでもらう化粧療法を行ったときは、みんな表情がいきいき、笑顔になってうれしそうでした。これこそお化粧のちから!生きていくには喜びが必要なんですよね。 前田:化粧によって喜びが生み出される。そこから発展した心理的効果はかなり期待できそうですね。 河村:お化粧という行為はとても崇高、レベルが高い行いなんです。お化粧は選択肢を自分の中にもって、意思決定をする。これの繰り返しなんですね。どの色にしよう、次はどれを付けよう。どんなイメージに仕上げよう。そうやって自分が望む姿を作っていくと、自然と自分を再認識していたり、昔のことを思い出したり。 前田:普段何気なくやっているお化粧ですが、心理面だけでなく、実はその行為そのものがリハビリのようなものなんですね。 河村:一例ですが、昔、社交ダンスをやっていたという認知症の方にお化粧を進めたら、驚くほど積極的で、上手にメイクされました。自分が華やかに踊っていた頃を思い出しているみたいでした。認知症が進んで介護度が高い方でしたが、その後改善が見られています。そんなふうに効果が分かりやすく出るケースもあります。 化粧を介して人に寄り添い、心を癒す臨床化粧療法士® 前田:高齢の方だけでなく、病気によって容姿に悩む方へのケアにも力をいれていますよね。 河村:私は難病になってステロイドの大量投与で顔がパンパン、摂食障害も併発して髪も抜けていき、自分が自分でなくなっていく恐怖でいっぱいの時期がありました。 そういう経験があるからこそ、病気がもとで容姿のことに苦しむ人の支えになりたいという思いは強くあります。 前田:そういう場合、病気によって症状も違うし、メンタルが下がっている人も多いと思うので、対応はとても難しいのではないですか? 河村:なにが正しい、こうしなければならないという決まりは持っていないんです。相手を理解することを一番に、人それぞれ、ケースバイケースで接します。今、現実をどうとらえていて、どうなりたいのか。それが思いつかないのなら一緒に模索を繰り返す。そして思いついた時に、その方がなりたい状態に近づけるサポートを行う。それが臨床軽症療法士®の役割りだと思っています。 前田:あらためて、化粧のちからは興味深い!人を元気にできる可能性がいっぱいありますね。必要とされる人と“化粧”を介して結ばれていくのが臨床化粧療法士®だとすれば、何をして効果を出すのかというよりも、人と繋がり、その人に寄り添うことが大切で、それがケアに必要なことなんですね。これは、河村さんの経験から生まれた化粧療法の考えでしょうか? 河村:自分が病気による外見変化に苦しんでいた時に必要だったのは、相談するところ、話を聴いてくれる人だったんです。治すことができない病や、障がいを持ったことは、人生にとってすごく大きなアクシデント。事故のようなものだから、どうしてとか、なんでとか、考えても答えはでないんですよね。でも、そのために社会の中で立ち止まって動けなくなってしまうこともある。そういう人の力のなりたいんです。 当事者だからこそわかること、できることがあると思うので。 前田:河村さんが難病を患っていることをついつい忘れそうになりながら、お話を聴かせていただきました(笑) 「化粧のちから」は本当に奥深くて、無限の可能性を感じます。臨床化粧療法士®が活躍する場も幅広いし、これからさらに広がっていきそうですね。 河村さんのブレない生き方にも、いい刺激をいただきました。 ありがとうございました!! 河村さんのお話はまだまだ続きます。次は介護をテーマにした話題で「化粧のちから」お届けします。 河村しおりKawamura Shiori 一般社団法人日本臨床化粧療法士協会 代表理事 20代前半に指定難病(SLE・全身性エリテマトーデス)の診断を受ける。闘病生活を送る中で、“化粧”による対人支援の道を見つけ、臨床化粧療法士®としてスキンケアの考え方を提唱。化粧外来の運営や、医療機関内での美容相談、臨床化粧療法士®の認定・育成に力を注ぐ。 ※河村さんへの講演依頼、臨床軽症療法士®へのセミナー依頼についてはこちらをご参考に。 https://japanclinical-cta.org/kigyou/ ●2017年 一般社団法人 日本臨床化粧療法士協会 設立 学術研究に基づいたアピアランスケアの考え方を提唱。法人団体を設立。 ●2018年、臨床化粧療法士®の資格認定を開始臨床化粧アドバイザー/臨床化粧療法士®︎/化粧体操指導士 ※資格に興味を持った方はコチラを要チェック! https://japanclinical-cta.org/manabu/ https://japanclinical-cta.org/manabu/ ●日本臨床化粧療法士協会HP https://japanclinical-cta.org/ ●臨床化粧療法士®︎を選んでオンライン相談ができるWEBサイト/アピラボ https://apilabo.jp/ ●河村しおり SNSリンク集 https://linktr.ee/makeup_lovers Unique/Writing:Maeda Rie暮らしの中に必要な支援を考える。秋山正子さんInterview!
「暮らしの保健室」、「マギーズ東京」の開設という偉業を成し、ケアーズ白十字訪問看護ステーション統括所長も勤められる秋山正子さん。 コロナ感染の不安が広がり、医療、看護、介護へも影響が及ぶ中、制限しながらも、相談者への対応を続けられています。心の不安を受け止めてくれる存在が、どれほど人の支えになるか。身に染みて感じる今日この頃。“暮らしの中に必要な支援”について、秋山さんの思いをお伝えします。 扉の中は暖かいもう一つの我が家。「暮らしの保健室」のこと 大都会新宿にある戸山ハイツ。ホッと安らぐ懐かしさが漂うエリア。 秋山正子さんが開設した「暮らしの保健室」は、東京新宿区、築50年を超える「戸山ハイツ」33号棟の1階にあります。 木香を感じるウッドな造りの外観は、昔ながらの商店街の中では目を惹く存在。夕暮れ時、窓から漏れる優しい灯りからは、ふと覗いてみたくなるような人肌の温もりが感じられます。ここは、誰でも自由に訪れて、体のこと、病気のこと、介護や看護のことを相談することができる、まさに“保健室”。そして、この地に住む人々の孤独を癒し、不安や悩みを話せる心の拠り所でもあります。 秋山さんに、この「暮らしの保健室」でお話を伺えることになりました。 -とても落ち着く室内ですね。大都会の中にいるせわしさをまったく感じません。 秋山正子さん(以下:秋山さん)「ここは2011年にオープンしました。予約がいらないこと、いつ来てもいいこと、相談料がかからないこと、そして木を使った安らげる空間という、マギーズの考え方を取り入れて造ったんです」 楽し気なおしゃべりと、笑い声が溢れてる「暮らしの保険室」。地域の人の憩いの場。 -「マギーズキャンサーケアリングセンター」の創設者、マギー・K・ジェンクスさんの考えですね。優しい照明と自然を取り入れた温かい雰囲気、リラックスできる空間。これは「マギーズ東京」と同じコンセプトなんですね。 秋山さん「そうですね。病院でも自宅でもない、第二の我が家のような居場所。それがイメージです。ここは、2017年にグッドデザイン賞を受賞しています。「暮らしの保健室」の考え方を含めて評価していただようです」 「暮らしの保健室」は、マギーズをお手本にしたけれど、違うところは病気に限らずに、地域の方からの相談やご質問に対応しているところです。例えば、「家族が認知症になった」「旦那が病院に入院してしまった!」と不安な気持ちをお話に来る人がいたり、「何の薬か分からなくなってしまった」といった困り事を相談に来たり。ほんのちょっとしたことだけれど、わからなくなったり、不安になると、先に進めないんですよね。「暮らしの保健室」は、そういうちょっとした分からない事を気軽に話せる場所なんです」 2017年度グッドデザイン特別賞を受賞。「地域経済の活性化により経済発展に寄与するデザインとして特に優れたもの」として選出。 迷ったり、不安になったり、困った人への道先案内。 -いろんな相談がくると、対応しきれないこともたくさんあるのではないでしょうか?相談を受けるのはとても難しいように思います。上手な対応のコツというのはありますか? 秋山さん「私たちの相談支援は、セカンドオピニオンではないので、治療や医療に関して答えを出していくことはしていないし、できないんです。相談を受ける時は、相手の話をよく聴いて、一番大事にしていることは何か、何を解決したいと思っているのかを知ることから始めます。それが分かってきたら、悩んでいる中身を少し整理して、次に何を選択していくかを考え、その人が次に進んでいくための道先案内をしていくような感じです」 -「道先案内」とは、とてもわかりやすい表現ですね。秋山さんのそうした考えは広がっていて、「暮らしの保健室」は全国に50ヵ所以上開かれているそうですが、どの地域でも同じように運営されているのでしょうか? 秋山さん「「暮らしの保健室」は、立ちあげた方や地域の特性など、各施設がそれぞれの状況に応じたスタイルで運営を行っているんです。ただ、考え方や基本方針は皆同じです。患者さんや相談に来た方とは常に横並びの関係で、専門職が知識を伝授するとか、教え諭すようなことはありません。悩みをきいた上でどうしたらいいのかを一緒に考えて、病気や障がいをもった人が自分の足で歩いていけるようにする。この、自立支援の考えはとても大切で、「暮らしの保健室」の柱になる考えです。状況が変わっても、これだけは、譲れないところですね」 何があっても訪問看護が維持できる。その体制づくりが課題。 -ここ1、2年はコロナ対策で、入院すると家族や近しい人とまったく会えなくなってしまう状況が続いているので、自宅での療養を望む人が増えているようです。 訪問看護は、今、なくてはならない重要な存在ですが、利用者が増えていることもあり、人材不足の問題が益々深刻にならないかと心配です。 秋山さん「事業所の数は増えていますよね。ただ、ぎりぎりの人数で運営している事業所も少なくありません。そのため、災害やコロナなどの影響を受けると、人手に余裕がないために訪問ができなくなってしまわないかという心配があります。誰かが休んでもカバーできるくらいの余裕ある人材確保ができればいいのですが…」 -看護師、ヘルパー不足は患者さんにとっては深刻な問題です。解決への糸口があるとしたらどんなことでしょう? 秋山さん「人の問題は難しいですよね。白十字訪問看護ステーションのことを例に挙げると、訪問看護事業所の他に、看護小規模多機能型の施設「坂町ミモザの家」、そして「暮らしの保健室」といった事業内容の違う事業所を運営し、大変な時はみんなが連携して訪問看護を支えていくような仕組みを作っています。 話をしたり、相談できる場は、地域に住む人の支えになります。各家庭に訪問することだけでなく、目線を広げた地域のための活動が増えれば連携もとりやすく、人材確保にも繋がるのではないかと思っています」 「マギーズ東京」「暮らしの保健室」大切なことは話を聴く。対話をすること。 東京の豊洲に開設された「マギーズ東京」。緑に囲まれ、ここだけ別世界のような雰囲気。 -「マギーズ東京」に行ってきました。都会の埋め立て地にこんなに自然を感じる場が存在することに、まず驚きでした。室内の居心地もよく、訪れた人は緊張がほぐれて気分がよくなりますね。環境って大事だなとつくづく思いました。 秋山さん「マギーズ東京の開設は、イギリスでセンター長を勤める方と、がん看護に関する学会で登壇者としてご一緒したことがきっかけになりました。いつでも、誰でも相談に来れるように窓口を開き、がんを経験している人やご家族、友人など、がんに影響を受けるすべての人を受け入れて対応していることを知り、そういう場が日本でも必要だと強く感じたんです。病院以外で、病気のことから暮らしのことなど、気軽に相談できる環境の整った場、というものがなかったんですよね。それで、マギーズをつくる運動を始めました。 -日本では前例もないし、発想や考えを理解されにくかったのではないですか? 秋山さん「そうなんです。整った環境の中、がんに影響を受ける人がいつでも自由に来て相談することができる。そんな場をつくると言っても、理解してもらうのは大変でした。医療保険、介護保険も関係なく、収入源がない状態でどうやって運営するのかイメージできない…。ということをよく言われましたね。でも、すでにオープンしていた「暮らしの保健室」がいい見本となって、支援へと繋げていくことができました」 -「マギーズ東京」、「暮らしの保健室」の両方で大切にしているのは、どんなことでしょうか? 秋山さん「相談者さんが、診断を受けて気持ちが下がっていたとしても、自分で決めて進んでいけるようにサポートすることが私たちの役目です。相談に来られた方のことは、心理士、看護師などのスタッフが、毎日リフレクションという振り返りをして情報を共有しています。誰が対応しても導く方向が同じになるようにするためです。 「マギーズ東京」を利用される方への関わり方で、一番大切にしていることは話を聴くこと。対話することです。単なる傾聴ではなく、一緒に考え整理し、方向を共に探りながら話を聴く。それは、マギーズも保健室も同じです」 マギーズ東京の室内は木の香りでいっぱい。癒しとくつろぎの空間。 -気軽に相談できる場がある。それは医療や看護に留まらずに、人の暮らしの大きな支えになっていると思います。問題や不安が大きくなる前に、サポートできることもありますよね。 秋山さん「そうですね。今、生きづらさを抱えている人はたくさんいると思います。そういう方たちが気軽に相談できる場があると、問題に対して早めに対処ができるようになります。 例えば、体調が優れないとすぐに救急車を呼んで大きな病院に行こうとする人がいます。でも、それが一番いい方法かというと、そうではない場合もあります。かかりつけ医がいれば、話をきいてもらって解決できるかもしれません。訪問看護が通っていれば、体調の変化に早めに気付くことができるかもしれません。そんなふうに、救急車を呼ぶことになる手前でサポートできることがたくさんあるはず。ただ医療を使うのではなく、上手に医療にかかる。それは、必要以上に医療を使わないということも含めて、大事なことだと思います」 -難病でも、疾病の種類に関係なく、そうした垣根を越えて進む道を見つける場が必要です。難病患者が気軽に相談できる場をつくりたいと、お話しを聴いてつくづく思いました。少々、大きすぎる目標ですけれど…(笑) 幅広い世代の人が悩みや不安を相談できる場を各地域に。 -自分の家で最後まで過ごしたいと望む人がいたら、その思いに応えていきたい。秋山さんは、そのために必要な道を一つひとつ切り開きながら歩んでこられていますが、これからさらに、どのような道をつくっていこうと考えていますか? 秋山さん「地域の中でいろんな人と手を組んで、そこに住む人が最後までこの街で、自分の家で過ごすにはどうしたらいいのか。そんなことを相談できる場が、もっともっと増えて、こうした考えが広がってほしいと思っています。 今、若い患者さんは、自分の意思で医療者と相談しながら治療を行っている人が増えていますね。患者さんが自分の意思で選択できる、そんな時代になってきているのだと思いますが、やはり迷いや不安はつきないのかと。医療体制や考え方が変化しても、相談できる場、相談できる人がいることで安心を得られる人がいます。そんなふうに考えると、「暮らしの保健室」は、これからもっといろんな世代の人に利用してもらいたい。そういう働きかけも大切だと思っています」 -最後に、今後の活動について、教えてください。 秋山さん「全国各地に広まった「暮らしの保健室」が、それぞれの地で次の世代が育ち、受け継がれていくのを見守っていこうと思っています」 とあるメディアに掲載されていた秋山さんの言葉で、印象深く心に残っている一文があります。 「お一人お一人の人生の最後の場面に出会うことは、その方の“いのち“を物語として受け継ぎ、次の世代へ語り継ぐ役目を負ったということだと思わされることも多々ある」 次世代へと繋げていく。Uniqueも、こうした情報発信を行う上で、役目を負うのであれば、どんな役目なのだろう…と考えます。もっと多くを経験し、もっと深く思考し、続けていかなければ見えないものなのかもしれません。次世代へと繋げていく。その役目を実感できた時、はたしてやり遂げたと思えるのか。やり残したと思い、自分に落胆するのか。先のことは見えないけれど、一日、一日がその答えをつくる貴重な時間だということは、どんな時でも忘れずにいられそうです。 小さな町の保健室。秋山さんの考えが多くの地に広がり、人を支えているのだと思うと,温かい気持ちになれます。年齢、性別、疾患、生涯、すべての垣根を取り除く集いの場が、これからも各地に、各町に、増えていくことを願います。 秋山あきやま 正子まさこさん秋田市生まれ。1973年聖路加看護大学(現聖路加国際大学)を卒業。看護師・助産師を経て、1992年東京の医療法人春峰会の白十字訪問看護ステーションで訪問看護を開始。2001年ケアーズ白十字訪問看護ステーションを起業、代表取締役に。2011年「暮らしの保健室」を東京・新宿に開設、2016年NPO法人マギーズ東京を設立。2019年 第47回フローレンス・ナイチンゲール記章受賞 ◆マギーズ東京WEBサイト:https://maggiestokyo.org ※マギーズ東京へのご寄付はコチラから↓ マギーズ東京 | マギーズ東京を支援する (maggiestokyo.org) ◆暮らしの保健室 WEBサイト:https://kuraho.jp/ ※暮らしの保健室開設にご興味のある方へ・基本ガイド https://kuraho.jp/steps.html Unique/Writing:Maeda Rie苦しいこと、つらいこと、抱え込まずに、話してみませんか。
エンドオブライフ・ケア協会千田恵子さん×Unique 前田理恵 エンドオブライフ・ケア協会(以下ELC)業務執行理事の千田恵子さんとUnique代表の前田の対談です。テーマは、「苦しいこと、つらいこと、抱え込まずに話してみませんか」。苦しいこと、つらいこと。嫌なこと、不条理なこと。普通に生活していても、沢山あります。解決できない苦しみに心が悲鳴をあげたり、孤独に押しつぶされそうになったとき、皆さんはどうしているのでしょう。 一人で抱え込んでいるのなら、話してみませんか。苦しい胸を内を打ちあけてみてください。つらい時を過ごす今よりも、少しだけ、心が軽くなるかもしれません。 そんなわたしたちからのメッセージが、苦しみを抱えているたくさんの人の心に届きますように。 千田:苦しいことって簡単には話せないかもしれません。前田:気軽に話せる環境づくりも必要だと思います。 前田:苦しみや悲しみって、喜びやハッピーな気持ちになるのと同じように誰もが経験することなんですよね。そう思うと特別なことじゃないし、「話を聴いてもらえますかー!」って、もっとオープンな感じで話せたらいいのにと思ってしまいます。 千田恵子さん(以下・千田):そうですね、話せたらいいのかもしれませんが、話せない、あるいは話さないのは、理由がいくつかあるのかなと思うんです。誰にも言えないとか、わかってもらえないのではないか、言ったら重たいと感じて敬遠されてしまうかも…と一人で抱え込んでいる人もいます。そのことを自覚している人もいれば、気づいていないという人もいます。 前田:たしかに、自分自身が抱え込んでいることにさえ気づいてなかったら、話せないですよね。ただ、そういうモヤモヤしたつらさが自分の中でどんどん大きくなると、苦しみが何倍にも膨れてしまう。そうなる前に気づいたり、抱え込むのを止めることができたら、苦しい気持ちだって軽くなるとは思うのだけれど…。 千田:最初から自分の悩みを話そうって意識して話せる人は、そう多くはないように思えます。だから、苦しんでいる人に「ちゃんと相談しよう」と働きかけるのは、ハードルが高いのかもしれません。 前田:どう話していいのかわからない、心の整理がつかないということもありますね。自分のモヤモヤに気づかないでいる人は、どんなことがきっかけで前にすすんでいけるのでしょう? 千田:意識しないでいても、話していくうちに気づくということもありますよね。何気なく話していたら、そんなつもりはなかったのに、モヤモヤと感じていたことが少しずつ言葉になっていく。本当はこうだったらいいなと思うのに、実際にはうまくいっていないこと、自分は実は傷ついていたんだ、苦しかったんだと気づいたり。 前田:そうですね。話しながら気づくことって多いかもしれません。わたしは、icotto(イコット)という難病患者の交流会を催す活動を行なっているんですが、それを始めたのは、まさに話すことの必要性を感じたからなんです。交流会では、いろいろな話をします。それは楽しい雑談の時間で、その中で皆さん、苦しみやつらい胸の内を話しています。「話しやすいからついつい話しちゃった!」って晴れやかな顔になったのを見るとうれしくなりますね。そういう場がないと、ずっと我慢したまま、心まで病んでいく人が増えてしまうと思います。 わたし自身、苦しんでいた時、話を聴いてくれた人がいたことでとても救われた経験があります。だから、自分の気持ちを伝える場があること、それを受け止めてくれる人がいることの大切さを強く感じているんです。 千田 :聴いてくれる人がいて、その場がある。環境は重要ですね。話せる人が誰もいなくて、苦しくても一人でじっと耐えているという人は少なくない気がします。 「この自分の苦しみは誰にもわからない」とか、「自分のことは自分で解決するもの」とか、「人に迷惑をかけてはいけない」、そういう自分と他者、公と私、内と外の間に厚い壁があるのかもしれません。たとえば、働きながら家族の介護をしている人がいたとして、それを職場に言うことで、プライベートなことを持ち込んでいいのだろうかと思ったり。弱さを見せると不利にならないかと考えてしまうかもしれません。誰にも言えない、言いたくない、言ってはいけない。そんな気持ちから我慢し続けて、それまで以上に頑張らなければと自分を追い詰めていると、いつか心が壊れてしまわないかと心配です。 前田さんは、話すことで救われたと言うほど、苦しい時があったんですね。自分の話を聴いてくれる人がいて、支えてくれる人がいると思えた時、どんなふうに気持ちが変わったのですか? 前田:その時はかなりラクになりました。苦しみの原因がなくなったわけでも、生活環境が変わったわけでもないんですが、それでも心の重石が軽くなったように感じました。それに、「聴いてくれてありがとう!」とうれしい気持ちが自然に口から出てきて、感謝で胸がいっぱいでした。そういう“いい気持ち“は、生きるエネルギーになりますね。 千田 :わたしも人に話すことで、前に進めた経験があります。わたしは活動を始める前に父母を続けて見送ったんですが、そのことを人前でお話する機会をいただいたんです。一つひとつの出来事に意味づけをして話すのですが、この過程で心の中が整理されて、たくさんのことがクリアになりました。大切な人たちがいなくなってしまって、心に穴が開くってこういうことなんだなって感じましたし、会いたいという気持ちは今も変わらないのですが、いつも見守ってくれていると思えるので穏やかな気持ちになれるんです。解決できないことに変わりはなくても、それでも穏やかになることはできる。その可能性は誰にでもあるのだと思っています。 前田:話すには、聴く人が必要。でも聴くことって難しいと感じています。千田:相手に「自分をわかってくれる人」と感じてもらうことが大切ですね。 前田:話せるってすごく幸せなのかも。当然ですが、聴いてくれる人がいるってことですものね。わたしは聴く立場になることもあるのでですが、聴くってすごく難しくて、反省することも多いです。 千田: 「聴く」ことって、簡単なようで奥深いと考えています。 例えば、わたしは自分の経験を話すことに対して前向きであっても、「つらいかもしれませんが、聞いてもいいですか?」と気遣っていただくことがあります。優しいお気持ちからとわかっているので、「いえいえ、つらくはないですよ」と言葉を添えていますが、「苦しい」=「つらい」という、聴き手の先入観って少なからずあると感じています。だから、難しいというか“奥深い”。 前田:なるほど、奥深いとはぴったりの表現!千田さんは、苦しんでいる人を支えられる環境づくりにも目を向けて活動されていますよね。“話を聴く“ということを大切にされているようですが…。 千田 :わたしたち(エンドオブライフ・ケア協会/以下:ELC)は、解決が難しい苦しみを抱えた人との関わり方を学び、それぞれの現場で活かしながら、お互いが支えとなるコミュニティを作り、活動しています。特に「苦しんでいる人は、自分の苦しみを“わかってくれる人”がいるとうれしい」ことを心に留めて、苦しんでいる人の話を聴くことを大切にしています。 苦しんでいる人が目の前にいても、自分は専門家でもないし、その人と同じ状況でもないから、本人の苦しみを理解することができない。どう声をかけていいのかも分からない。そんなふうに、関わる自分に自信がないとか、話を聴くことは敷居が高いという人がいますね。 前田:わたしも間違えなくその一人です。わたしが話を聴いたところで、はたして役に立つのか。苦しんでいる状況をちゃんと理解できるのか。そんな心配がいっぱいでてきます。 千田:自分が苦しんでいる相手を理解するのではなく、苦しんでいる人が自分のことを「わかってくれる人だ」と感じてくれる。それがすべてのはじまりだと考えてみてはいかがでしょう。相手のことを理解したい気持ちは大切ですが、本当の意味で他人を理解することは、できないのかもしれません。 だから、相手が“わかってくれる人”と感じられる関わり方を知ること。そして、つたなくてもやってみることが、まずは実践するための一歩です。 ELCの活動には、身近な人の力になれる人が増えてほしいと思いがあります。そこに賛同してくださる方々が、草の根的に学びの場をつくって、その思いを全国に広げてくださっています。 前田:苦しんでいる人にどう接していいのか、なんて声をかけていいのか。そういうこと、学校や仕事で教わる機会がないですね。どうしたらいいのかを知ることができれば、確かに声をかけやすくなりそう。人との関わりが薄くなっている今、多くの人に知ってもらいたい活動ですね! 千田恵子/2015年有志とともに一般社団法人エンドオブライフ・ケア協会設立 業務執行理事を勤める。 前田:誰かの力になることで、自分を大切に思える。この考え、心に響きました。千田:お互いが支えになる“ホスピスマインド”が広がってほしいですね。 前田:ELCの活動は、医師でありELC代表の小澤竹俊先生がホスピスといういのちが限られた患者さんと関わる現場で、30年近く学んできた経験が根本にあるそうですね。 千田 :小澤が自らが学んだ経験から、患者さんとの関わり方に普遍性を見い出し、誰もができることとしてプログラムを作って、6年前から活動を始めています。 世の中には苦しんでいる人がたくさんいます。子供にも苦しみはあるし、元気で生活している人だって苦しみを抱えていることもある。でも、自分が苦しんでいるとか、傷ついているとか、実は自分自身が気づいていない。そんなこと、ないでしょうか。「苦しみ」とは、こうだったらいいな、という「希望」と、でも実際には…という「現実」との開きだと考えると、とても身近で誰もが関わる可能性のあることだと思います。 身近な人の力になりたい、自分自身の苦しみとも向き合いたい。そんなふうに思うことがあったら、わたしたちが主催するイベントに気軽に参加いただけたらうれしいです。 前田 :苦しんでいる人の力になるにはどうしたらいいのか。迷いますし、自信もありません。それでも、人を支えることができるのでしょうか? 千田 :もちろんです。前田さんが話された「聴いてくれてありがとう!とうれしい気持ちが自然に口から出てきて、感謝で胸がいっぱい」という言葉や「icotto」の活動をされていることとか、もうすでに前田さんは実践していらっしゃいますよね。 支えてもらったことへの喜びが、自分も同じように誰かの力になりたいという気持ちに繋がるんじゃないかなと思います。人と人が支えあう“ホスピスマインド”が広がっていけば、ちょっとした悩みも話しやすい、受け入れてもらいやすい環境ができてくると思います。 前田:たしかに、一方通行では支援者と支援される人という隔たりができてしまい、立場に強弱が生まれてしまいそう。お互いが支えになる、そういう意識を持つことも大切ですね。身近に苦しんでいる人がいて、その人に手を差し伸べることができたら、自信に繋がっていくかもしれません。 千田 :小さくても何か一つ、役に立てたと思うことで、文字通り、自分を信じることができる。それも大切なことだと思います。 ただ、役に立てないってこともあるんですよね。 前田:ありますねー。かえって落ち込むかな。自分のことを自分で認めることができなくなってしまいますよね。そんな時は、どう立ち直ったらいいのでしょうね。 千田: 支えがあることで穏やかな気持ちになれるかもしれません。 前田:話してラクになった。そこからが始まりなんですね。 千田:前田さんは、自分のことを“それでいいよ”と認めてくれる誰かはいますか。“誰か”は、人であったり、手で触れられる何かとは限らなくて、私であれば、亡くなった父母です。どんな自分であっても、「それでいいよ」と認めてくれている、そう感じられるので前に進むことができます。物理的に話はできないですけど、心の中で私の苦しみを聴いてくれて、私のことを「わかってくれる人」と思える支えの存在です。 前田:そう言われると、わたしのことを認めてくれている人の顔が浮かんできました。支えてくれている人がいるのは、たしかに心強く思えます。 ELCのセミナーに参加させてもらいましたが、とても楽しかったです。初心者向けに行われた企画でしたが、話を聴くことの大切さや、話の聴き方も知ることができたし、わずかな時間でいろいろな気づきがありました。 「この苦しい気持ちは誰にもわかってもらえない」と一人で悩んでいる時に、ほんの少し勇気を出して声を出してみたら、否定せずに聴いてくれた。「この人ならわかってくれる」と感じて打ち明けてみたら、少し気持ちがラクになった。そんなふうに、苦しみを打ち明けて心が軽くなったとしてもそれで完結ということではなく、むしろそこからが始まりなんだなと思えました。話を聴いている人が相手の気持ちを理解するために聴くのではなくて、悩んでいる本人が「私の気持ちをわかってくれた」と感じられることが大切で、そのために話を聴くのですね。 前田理恵/難病患者のコミュニケーション支援と集いの場「icotto」主催。当サイトUniqueの運営を行う一般社団法人Unique代表 千田 :対象者に合わせて、2日間の講座や、2時間程度のイベントなど、セミナーにはいろいろ種類があるのですが、いずれも様々な方が参加してくださっています。医療や介護の専門職である必要はないですし、特定の立場の誰かから誰かへ一方的に提供されるものでもないと思うのです。苦しむ人の力になりたいと願うすべての人にできることがある。そのことに気付いて行動する人が増えることを願っています。 前田:悩んでいる本人が“話す“ことを通して、誰かに自分の苦しみをわかってもらえたと感じたら、気持ちがラクになるだろうなと思います。でもそれだけではなく、話を聴くことで自分自身も穏やかな気持ちになれる可能性があるという考えには、ハッとさせられました。セミナーには、どんな方が参加されているのですか? 千田:参加される皆さんは、様々な分野の方々です。例えば、働きながら家族の介護をしている方、学校に通えない子供と向き合っている方、仕事と育児の両立をしている方など、周囲からちょっとしたサポートや温かい声をかけていただいたことがうれしくて、自分も必要とする人がいればお役に立ちたいという考えの方々も多いです。 前田:難病の患者会でも、そうした考えがあることを伝えたいと思っています。患者さんは、日々、苦しい思いをしながら過ごしています。心の拠り所や安らぎを求めているけれど、それだけでなく社会の一員でありたいという気持ちもあるんです。いろんな人に支えてもらっているからこそ、恩返しの気持ちで人の役に立ちたいと思うのでしょう。ELCの“ホスピスマインド”の考えは、とても魅力的ですね。 千田 :解決できない苦しみがあっても、支えがあることで穏やかな気持ちになれるかもしれません。気持ちが穏やかになれたら、ものの見方も違ってくるし、苦しい中にある喜びや幸せに気づけるようになれると、気持ちもラクになれるかもしれませんね。 支える、支えてもらう、入り口はどちらからでもいいと思います。自分が今できる一歩を、踏み出せるといいですね。 前田:ELCの活動は本当に奥が深いので、語り尽くせない、伝えきれないもどかしさがあります。次の機会にぜひ「いのちの授業」について、お伺いさせてください。 千田:学校や地域コミュニティで行っている「折れない心を育てる いのちの授業」ですね。 小中学校でお話すると、子どもたちが、今まさに感じている心の動きが表情から伝わってきます。苦しみも大小様々に抱えていることでしょう。そんな子どもたちが、支えの存在に気づいたときのいきいきとした表情から、わたし自身が力をいただいています。今を生きる子供たちとの関わりをもっと増やしていきたいと思っています。 前田:また、次の機会を楽しみにしていますね! ★エンドオブライフ・ケア協会HP https://endoflifecare.or.jp/ ★オンラインイベント情報 https://endoflifecare.or.jp/posts/show/8832 ★Facebook https://www.facebook.com/endoflifecare.or.jp/