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苦しいこと、つらいこと、抱え込まずに、話してみませんか。

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苦しいこと、つらいこと、抱え込まずに、話してみませんか。

エンドオブライフ・ケア協会
千田恵子さん
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Unique 前田理恵

エンドオブライフ・ケア協会(以下ELC)業務執行理事の千田恵子さんとUnique代表の前田の対談です。
テーマは、「苦しいこと、つらいこと、抱え込まずに話してみませんか」。
苦しいこと、つらいこと。
嫌なこと、不条理なこと。
普通に生活していても、沢山あります。
解決できない苦しみに心が悲鳴をあげたり、孤独に押しつぶされそうになったとき、皆さんはどうしているのでしょう。

一人で抱え込んでいるのなら、話してみませんか。
苦しい胸を内を打ちあけてみてください。
つらい時を過ごす今よりも、
少しだけ、心が軽くなるかもしれません。

そんなわたしたちからのメッセージが、苦しみを抱えているたくさんの人の心に届きますように。


千田:苦しいことって簡単には話せないかもしれません。
前田:気軽に話せる環境づくりも必要だと思います。

前田:苦しみや悲しみって、喜びやハッピーな気持ちになるのと同じように誰もが経験することなんですよね。そう思うと特別なことじゃないし、「話を聴いてもらえますかー!」って、もっとオープンな感じで話せたらいいのにと思ってしまいます。


千田恵子さん(以下・千田):そうですね、話せたらいいのかもしれませんが、話せない、あるいは話さないのは、理由がいくつかあるのかなと思うんです。
誰にも言えないとか、わかってもらえないのではないか、言ったら重たいと感じて敬遠されてしまうかも…と一人で抱え込んでいる人もいます。
そのことを自覚している人もいれば、気づいていないという人もいます。

前田:たしかに、自分自身が抱え込んでいることにさえ気づいてなかったら、話せないですよね。
ただ、そういうモヤモヤしたつらさが自分の中でどんどん大きくなると、苦しみが何倍にも膨れてしまう。そうなる前に気づいたり、抱え込むのを止めることができたら、苦しい気持ちだって軽くなるとは思うのだけれど…。



千田:最初から自分の悩みを話そうって意識して話せる人は、そう多くはないように思えます。だから、苦しんでいる人に「ちゃんと相談しよう」と働きかけるのは、ハードルが高いのかもしれません。


前田:どう話していいのかわからない、心の整理がつかないということもありますね。自分のモヤモヤに気づかないでいる人は、どんなことがきっかけで前にすすんでいけるのでしょう?


千田:意識しないでいても、話していくうちに気づくということもありますよね。
何気なく話していたら、そんなつもりはなかったのに、モヤモヤと感じていたことが少しずつ言葉になっていく。
本当はこうだったらいいなと思うのに、実際にはうまくいっていないこと、自分は実は傷ついていたんだ、苦しかったんだと気づいたり。


前田:そうですね。話しながら気づくことって多いかもしれません。
わたしは、icotto(イコット)という難病患者の交流会を催す活動を行なっているんですが、それを始めたのは、まさに話すことの必要性を感じたからなんです。
交流会では、いろいろな話をします。それは楽しい雑談の時間で、その中で皆さん、苦しみやつらい胸の内を話しています。
「話しやすいからついつい話しちゃった!」って晴れやかな顔になったのを見るとうれしくなりますね。
そういう場がないと、ずっと我慢したまま、心まで病んでいく人が増えてしまうと思います。

わたし自身、苦しんでいた時、話を聴いてくれた人がいたことでとても救われた経験があります。
だから、自分の気持ちを伝える場があること、それを受け止めてくれる人がいることの大切さを強く感じているんです。


千田 :聴いてくれる人がいて、その場がある。環境は重要ですね。
話せる人が誰もいなくて、苦しくても一人でじっと耐えているという人は少なくない気がします。

「この自分の苦しみは誰にもわからない」とか、「自分のことは自分で解決するもの」とか、「人に迷惑をかけてはいけない」、そういう自分と他者、公と私、内と外の間に厚い壁があるのかもしれません。
たとえば、働きながら家族の介護をしている人がいたとして、それを職場に言うことで、プライベートなことを持ち込んでいいのだろうかと思ったり。弱さを見せると不利にならないかと考えてしまうかもしれません。
誰にも言えない、言いたくない、言ってはいけない。
そんな気持ちから我慢し続けて、それまで以上に頑張らなければと自分を追い詰めていると、いつか心が壊れてしまわないかと心配です。

前田さんは、話すことで救われたと言うほど、苦しい時があったんですね。
自分の話を聴いてくれる人がいて、支えてくれる人がいると思えた時、どんなふうに気持ちが変わったのですか?


前田:その時はかなりラクになりました。苦しみの原因がなくなったわけでも、生活環境が変わったわけでもないんですが、それでも心の重石が軽くなったように感じました。
それに、「聴いてくれてありがとう!」とうれしい気持ちが自然に口から出てきて、感謝で胸がいっぱいでした。
そういう“いい気持ち“は、生きるエネルギーになりますね。


千田 :わたしも人に話すことで、前に進めた経験があります。
わたしは活動を始める前に父母を続けて見送ったんですが、そのことを人前でお話する機会をいただいたんです。
一つひとつの出来事に意味づけをして話すのですが、この過程で心の中が整理されて、たくさんのことがクリアになりました。
大切な人たちがいなくなってしまって、心に穴が開くってこういうことなんだなって感じましたし、会いたいという気持ちは今も変わらないのですが、いつも見守ってくれていると思えるので穏やかな気持ちになれるんです。
解決できないことに変わりはなくても、それでも穏やかになることはできる。
その可能性は誰にでもあるのだと思っています。


前田:話すには、聴く人が必要。でも聴くことって難しいと感じています。
千田:相手に「自分をわかってくれる人」と感じてもらうことが大切ですね。


前田:話せるってすごく幸せなのかも。当然ですが、聴いてくれる人がいるってことですものね。
わたしは聴く立場になることもあるのでですが、聴くってすごく難しくて、反省することも多いです。


千田: 「聴く」ことって、簡単なようで奥深いと考えています。
例えば、わたしは自分の経験を話すことに対して前向きであっても、「つらいかもしれませんが、聞いてもいいですか?」と気遣っていただくことがあります。
優しいお気持ちからとわかっているので、「いえいえ、つらくはないですよ」と言葉を添えていますが、「苦しい」=「つらい」という、聴き手の先入観って少なからずあると感じています。
だから、難しいというか“奥深い”。


前田:なるほど、奥深いとはぴったりの表現!
千田さんは、苦しんでいる人を支えられる環境づくりにも目を向けて活動されていますよね。“話を聴く“ということを大切にされているようですが…。


千田 :わたしたち(エンドオブライフ・ケア協会/以下:ELC)は、解決が難しい苦しみを抱えた人との関わり方を学び、それぞれの現場で活かしながら、お互いが支えとなるコミュニティを作り、活動しています。
特に「苦しんでいる人は、自分の苦しみを“わかってくれる人”がいるとうれしい」ことを心に留めて、苦しんでいる人の話を聴くことを大切にしています。

苦しんでいる人が目の前にいても、自分は専門家でもないし、その人と同じ状況でもないから、本人の苦しみを理解することができない。どう声をかけていいのかも分からない。
そんなふうに、関わる自分に自信がないとか、話を聴くことは敷居が高いという人がいますね。


前田:わたしも間違えなくその一人です。
わたしが話を聴いたところで、はたして役に立つのか。苦しんでいる状況をちゃんと理解できるのか。
そんな心配がいっぱいでてきます。


千田:自分が苦しんでいる相手を理解するのではなく、苦しんでいる人が自分のことを「わかってくれる人だ」と感じてくれる。それがすべてのはじまりだと考えてみてはいかがでしょう。
相手のことを理解したい気持ちは大切ですが、本当の意味で他人を理解することは、できないのかもしれません。

だから、相手が“わかってくれる人”と感じられる関わり方を知ること。そして、つたなくてもやってみることが、まずは実践するための一歩です。

ELCの活動には、身近な人の力になれる人が増えてほしいと思いがあります。そこに賛同してくださる方々が、草の根的に学びの場をつくって、その思いを全国に広げてくださっています。


前田:苦しんでいる人にどう接していいのか、なんて声をかけていいのか。そういうこと、学校や仕事で教わる機会がないですね。
どうしたらいいのかを知ることができれば、確かに声をかけやすくなりそう。
人との関わりが薄くなっている今、多くの人に知ってもらいたい活動ですね!

千田恵子/2015年有志とともに一般社団法人エンドオブライフ・ケア協会設立 
業務執行理事を勤める。

前田:誰かの力になることで、自分を大切に思える。この考え、心に響きました。
千田:お互いが支えになる“ホスピスマインド”が広がってほしいですね。


前田:ELCの活動は、医師でありELC代表の小澤竹俊先生がホスピスといういのちが限られた患者さんと関わる現場で、30年近く学んできた経験が根本にあるそうですね。


千田 :小澤が自らが学んだ経験から、患者さんとの関わり方に普遍性を見い出し、誰もができることとしてプログラムを作って、6年前から活動を始めています。

世の中には苦しんでいる人がたくさんいます。
子供にも苦しみはあるし、元気で生活している人だって苦しみを抱えていることもある。でも、自分が苦しんでいるとか、傷ついているとか、実は自分自身が気づいていない。そんなこと、ないでしょうか。
「苦しみ」とは、こうだったらいいな、という「希望」と、でも実際には…という「現実」との開きだと考えると、とても身近で誰もが関わる可能性のあることだと思います。


身近な人の力になりたい、自分自身の苦しみとも向き合いたい。そんなふうに思うことがあったら、わたしたちが主催するイベントに気軽に参加いただけたらうれしいです。


前田 :苦しんでいる人の力になるにはどうしたらいいのか。
迷いますし、自信もありません。
それでも、人を支えることができるのでしょうか?

千田 :もちろんです。
前田さんが話された「聴いてくれてありがとう!とうれしい気持ちが自然に口から出てきて、感謝で胸がいっぱい」という言葉や「icotto」の活動をされていることとか、もうすでに前田さんは実践していらっしゃいますよね。

支えてもらったことへの喜びが、自分も同じように誰かの力になりたいという気持ちに繋がるんじゃないかなと思います。
人と人が支えあう“ホスピスマインド”が広がっていけば、ちょっとした悩みも話しやすい、受け入れてもらいやすい環境ができてくると思います。


前田:たしかに、一方通行では支援者と支援される人という隔たりができてしまい、立場に強弱が生まれてしまいそう。
お互いが支えになる、そういう意識を持つことも大切ですね。
身近に苦しんでいる人がいて、その人に手を差し伸べることができたら、自信に繋がっていくかもしれません。


千田 :小さくても何か一つ、役に立てたと思うことで、文字通り、自分を信じることができる。
それも大切なことだと思います。

ただ、役に立てないってこともあるんですよね。


前田:ありますねー。かえって落ち込むかな。
自分のことを自分で認めることができなくなってしまいますよね。そんな時は、どう立ち直ったらいいのでしょうね。

千田: 支えがあることで穏やかな気持ちになれるかもしれません。
前田:話してラクになった。そこからが始まりなんですね。


千田:前田さんは、自分のことを“それでいいよ”と認めてくれる誰かはいますか。
“誰か”は、人であったり、手で触れられる何かとは限らなくて、私であれば、亡くなった父母です。
どんな自分であっても、「それでいいよ」と認めてくれている、そう感じられるので前に進むことができます。
物理的に話はできないですけど、心の中で私の苦しみを聴いてくれて、私のことを「わかってくれる人」と思える支えの存在です。


前田:そう言われると、わたしのことを認めてくれている人の顔が浮かんできました。支えてくれている人がいるのは、たしかに心強く思えます。

ELCのセミナーに参加させてもらいましたが、とても楽しかったです。
初心者向けに行われた企画でしたが、話を聴くことの大切さや、話の聴き方も知ることができたし、わずかな時間でいろいろな気づきがありました。

「この苦しい気持ちは誰にもわかってもらえない」と一人で悩んでいる時に、ほんの少し勇気を出して声を出してみたら、否定せずに聴いてくれた。
「この人ならわかってくれる」と感じて打ち明けてみたら、少し気持ちがラクになった。
そんなふうに、苦しみを打ち明けて心が軽くなったとしてもそれで完結ということではなく、むしろそこからが始まりなんだなと思えました。
話を聴いている人が相手の気持ちを理解するために聴くのではなくて、悩んでいる本人が「私の気持ちをわかってくれた」と感じられることが大切で、そのために話を聴くのですね。

前田理恵/難病患者のコミュニケーション支援と集いの場「icotto」主催。
当サイトUniqueの運営を行う一般社団法人Unique代表


千田 :対象者に合わせて、2日間の講座や、2時間程度のイベントなど、セミナーにはいろいろ種類があるのですが、いずれも様々な方が参加してくださっています。
医療や介護の専門職である必要はないですし、特定の立場の誰かから誰かへ一方的に提供されるものでもないと思うのです。
苦しむ人の力になりたいと願うすべての人にできることがある。そのことに気付いて行動する人が増えることを願っています。


前田:悩んでいる本人が“話す“ことを通して、誰かに自分の苦しみをわかってもらえたと感じたら、気持ちがラクになるだろうなと思います。
でもそれだけではなく、話を聴くことで自分自身も穏やかな気持ちになれる可能性があるという考えには、ハッとさせられました。
セミナーには、どんな方が参加されているのですか?


千田:参加される皆さんは、様々な分野の方々です。
例えば、働きながら家族の介護をしている方、学校に通えない子供と向き合っている方、仕事と育児の両立をしている方など、周囲からちょっとしたサポートや温かい声をかけていただいたことがうれしくて、自分も必要とする人がいればお役に立ちたいという考えの方々も多いです。


前田:難病の患者会でも、そうした考えがあることを伝えたいと思っています。
患者さんは、日々、苦しい思いをしながら過ごしています。心の拠り所や安らぎを求めているけれど、それだけでなく社会の一員でありたいという気持ちもあるんです。
いろんな人に支えてもらっているからこそ、恩返しの気持ちで人の役に立ちたいと思うのでしょう。
ELCの“ホスピスマインド”の考えは、とても魅力的ですね。


千田 :解決できない苦しみがあっても、支えがあることで穏やかな気持ちになれるかもしれません。
気持ちが穏やかになれたら、ものの見方も違ってくるし、苦しい中にある喜びや幸せに気づけるようになれると、気持ちもラクになれるかもしれませんね。

支える、支えてもらう、入り口はどちらからでもいいと思います。
自分が今できる一歩を、踏み出せるといいですね。


前田:ELCの活動は本当に奥が深いので、語り尽くせない、伝えきれないもどかしさがあります。
次の機会にぜひ「いのちの授業」について、お伺いさせてください。


千田:学校や地域コミュニティで行っている「折れない心を育てる いのちの授業」ですね。

小中学校でお話すると、子どもたちが、今まさに感じている心の動きが表情から伝わってきます。
苦しみも大小様々に抱えていることでしょう。
そんな子どもたちが、支えの存在に気づいたときのいきいきとした表情から、わたし自身が力をいただいています。
今を生きる子供たちとの関わりをもっと増やしていきたいと思っています。


前田:また、次の機会を楽しみにしていますね!


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