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介護に生かしたいお化粧のちから 化粧×介護

臨床化粧療法士®河村しおりさん × 土屋訪問介護事業所・綾部清香さん × インタビュー・Unique 前田りえ


介護サービスのプロフェッショナル、土屋訪問介護事業所でブロックマネージャーを務める綾部清香さんと化粧を介して心身のケアを行う臨床化粧療法士の河村しおりさんの対談です。
介護の現場で、お化粧のちからは生かせるのか。
重度訪問介護のリアルな現状を話の舞台に、介護サービスを提供するヘルパーさん、受け手となるご利用者の双方の立場になってお化粧の生かし方を考えてみました。

前田りえ(以下:前田)
「介護とお化粧というテーマでお話伺いながら、介護現場でのお化粧の生かし方を探っていきたいと思っています。

一見、関係性が薄いように思いますが、お化粧と介護、その接点や結びつきを感じたご経験などはありますか?」


綾部清香さん(以下:綾部)
「今日、河村さんとのお話する機会をいただいたので、あれこれと考えていたら、自分の曾祖母のことを思い出しました。

小さい頃、曾祖母によく面倒をみてもらっていて、わたしはひいお婆ちゃん大好きっ子だったんですが、最近は思い出すこともなくなっていたのですごく懐かしい気持ちになりました。


思い出したのは、お婆ちゃんが通っていたデイサービスでお化粧をしてもらった日のことです。みんなにキレイって言われて、すごく嬉しかったんだと思います。私にも見せたいから、帰ってくるまでお化粧を落とさないで待っててくれて。
あの時の、真っ赤な口紅を塗ってうれしそうなお婆ちゃんの顔、久しぶりに思い出しました」



河村しおりさん(以下:河村)

「すごくいい思い出ですね。お化粧すると気分がいきいきして高揚感が生まれて、人によっては代謝が上がって、口腔ケアにもつながっていく。いい効果がいっぱいあります。

キレイになったねーって言われたら、やっぱりうれしくなりますよね」



綾部「そうですよね。いくつになってもキレイでいたいって思うのは当たり前で特別なことじゃない。それは、病気や障がいを持った方でも同じで、お化粧したり身だしなみが整っていると、気分よし!ってなりますよね。

臨床化粧心理士®の資格をとった方は、高齢者や介護が必要な方にもお化粧のアドバイスを行っているんですか?」



河村「2018年から化粧に関する3種類の資格講座を運用していて、認定資格者それぞれが美容に関する分野だけでなく、いろんな場で活躍しています。医療や介護の現場でも資格を生かしてがんばっている人はたくさんいますね。

臨床化粧療法は、お化粧を介した心理療法という考えが核にあるので、メンタルケアにおすすめなんです。
お化粧というのはあくまでもきっかけであって、行為に過ぎないんですが、それでもお化粧をすることですごくポジティブになったり、自信が持てるようになったり、心理面ではすごくいい効果が出ると思います」


前田「介護の現場でも、お化粧することを望まれる方はきっと少なくはないと思うのですが、いかがでしょう?
実際にお化粧をサポートすることはあるのでしょうか?」 


綾部「土屋訪問介護事業所は、重度介護が必要な方への訪問サービスが主なんです。動くことができなくて、自分ではお化粧をすることが難しいご利用者が多くいます。

動けなくてもキレイでいたい、お化粧してもらいたいという方にはその気持ちに応えたいと思うのですが、ご利用者の生活環境やスタッフとの関係性とか、それぞれ状況も違うので、そういうきっかけをつくるのが難しい場合もあるんです」



前田「お化粧って個人差があるから、サポートする側も得意な人もいれば苦手な人もいるはず。そこが一番の課題みたいですね


河村「お化粧って、いろんな段取りがあって、すべてに意思決定、判断、選択が必要とされる実はすごいハイレベルな行為。だからサポートする人にとってもハードルは高いはずです。

まずはスキンケアからトライしてみたらどうでしょう。肌を守って、清潔感を保つ意味でもスキンケアはとても大切です。
正しいやり方をすることで肌の状態がよくなるし、スキンシップという面でも効果的だと思います」


綾部「高齢者の方には、スキンケアサポートから声掛けするのはいいですね。
病気や障がいで介護が必要になった方に関しては、自分でやっていた頃と同じように生活することを望まれる方が多いんです。だからスキンケアも毎日、朝夕しっかりやってお肌ツルツル。うらやましいくらい(笑)
そんな方に、美容の知識やメイクに自信がないスタッフは積極的にお化粧の話をしにくいんですよね」


河村「病気になっても生活を変えたくない気持ちは、すごくよくわかります。
ご利用者の気持ちが一番だと思うから、まずそこを確認するきっかけが作れるとスムーズだと思うけれど…。
ヘルパーさんの得意、不得意があることを前提にすると、誰でも声を掛けやすくするような、仕組みがほしいところですね」


綾部「ヘルパーさんとご利用者の相性の問題もあるし、コミュニケーショ不足でうまくいかないというケースもあるので、スタッフに上手なきっかけの作り方を伝えたいな、と思うことが多いです」

河村「ちなみに、美容師法という法律では、美容の免許を持つもの以外は首から上のお化粧を行うことが禁止されているんです。この法律遵守の立場からすると、専門知識がない方がお化粧をしてあげることで、トラブルが発生することもあるんじゃないかと。それが心配ですね」


前田「美容師法という法律で規制されるくらいだから、お化粧にはメリットだけでなくて、気を付けなければいけないリスクもあるってことですよね」


河村「お化粧品が肌に与える問題や髪を染める時の市販のカラーリング剤のトラブルとか、いろいろあるんです。
薬を服用されている方も多いだろうし、体力、免疫が下がっている方も少なくはないと思うので、そういう方をケアする最低限の知識は持っていないと心配です」


綾部「美容師法では、そういう縛りがあるんですね。介護の制度では、お化粧はヘルパーの仕事として認められていますね。

居宅介護サービスの中でヘルパー(介護職員)が提供する生活支援業務に、メイクも含まれているんです。
身体整容(※1)の一部です。

私たち(介護職員)がお化粧をお手伝いするのは、美しくなってもらうことが目的ではなくて、身だしなみを整えたり、衛生面のケアの一つ、生活の中で必要なケアというとらえ方をしています」

※1訪問介護サービスや介護保険施設の介護現場で、介護者が提供する生活支援業務に「身体整容」という項目があって、洗顔・歯磨き・整髪・爪切り・耳かき・ひげそり・メイクのサービスが含まれています。


前田「お化粧は身だしなみの一部。そういう介護制度の内容だったり、現場の状況を知らない人が多いのではないでしょうか?

もっと多くの人が知ることになれば、ヘルパーさんを多面的にサポートすることができるのかもしれませんね」


綾部「重度訪問介護では、ご利用者の家族のかわりになって生活を支えることが求められるので、サポートする内容はものすごく多いし、幅広いんです。
人対人の関係性も重視される仕事だから、そういう面でヘルパーのサポートも必要なんです



河村「家族のかわりになって…はすごいっ!って思います。そうやって患者さんを支えているのを、知らない人も多いんじゃないでしょうか。社会に必要な素晴らしいお仕事だと思いますよ。

私たち臨床化粧療法士®もそういう介護事情というか、制度のことを知ることで、発展があるというか、お手伝いできることが見つけられるように思います」


綾部「ご利用者の生活の中に入ると、その方のペースで介護が成り立っているケースが多いのですが、河村さんが話されるように、トラブルにつながらないための知識は持っておくべきだと思うんです。
ご利用者の要望に応える時も、心配があるときはそのことをちゃんと説明することができれば、信頼関係が保てますよね」


河村「正確な情報を知っておくことは大事だと思います。
例えば、化粧をしたら、落とすサポートも考えてあげなくちゃダメですね。体を起こせない方がちゃんとお化粧を落とすにはどうしたらいいのか。
ふき取りタイプのクレンジングを使うとか、使ったことのない商品を使うのであれば肌にあうのかどうかをチェックするとか。
そういった知識を持っていないと、サポートする人も、される人も不安になるし、トラブルを起こさないための学びは絶対、もっておいたほうがいいですよ」


前田「お化粧はキレイになることでの心理的な効果だけでなく、介護の現場では、コミュニケーションづくりに生かすことができると思いますが、いかがでしょう?」


綾部「ヘルパーがご利用者との信頼関係をつくるのに必要なのは、ご利用者のことを知ることなんです。スキンケアやお化粧の話題からいろんなことを知ることができるかもしれないですね。

それにお化粧やスキンケアのサポートを行うと、肌に触れることになるので、グッと距離感がちぢまる気がします」



河村「コミュニケーションに生かすにもいいですね!
スキンケアの話をしましたが、他にはネイルもおすすめですよ。
ネイルは、装飾や好みの色でキレイになった手を自分の目で確認できるところがいいんです。鏡で見るのとは違ったリアル感があって、気持ちがあがりますよね」



綾部「アートっぽく仕上げることができなくても、シールとかありますよね。爪がツルツル、艶っぽい光沢感があるだけでも、ちょっといつもとは違う感じがして楽しいかも」



河村「臨床化粧療法士®協会の活動には、高齢者施設に出向き、お化粧体験や指導を行うこともあるのですが、訪問だとそれは難しいですよね。
でも、ヘルパーさんやご家族に向けて、お化粧のケア方法を知る機会があったら喜ばれるんじゃないでしょうか」


綾部「今、重度訪問介護の現場は人手不足で、十分な介護を受けられない方もいて、それをなんとかしたいんです。
一人でも多くの人が、ヘルパーさんがついて安心して生活していただけるようにするのが課題であって、大きな目標でもあります。

そのためにできるこは何か…を考えると、私は介護現場で働いていた経験から、ヘルパーさんが働きやすい環境を作っていきたいと思っているんです。
お化粧にかぎらずですが、ヘルパーが自分では対応しきれないこともたくさんあるので、そういう時に役に立つきっかけやヒントになるようなことを提供していくことが必要と感じています」

 


河村「綾部さんのお話しを伺って、重度訪問介護についてもっと深く知りたいと思いました。そういうきっかけをいただいてありがたいです。

ヘルパーさんをサポートすることが、患者さんのサポートにもつながっていくのだと思います。

お化粧によるプラスの心理効果をどうやって現場に生かしていくかは、まだ課題がありますね。
私たち臨床化粧療法士®が重度訪問介護の現場でどんなサポートができるか。その方法を見つけていきたいとも思います」


前田「綾部さん、河村さん、ありがとうございました!
介護の状況をよくするには、質と量の両面が十分に満たされることが必要だと思います。

お二人のお話から、介護に関わる方が質をめざしていける環境づくりへの大切さを改めて感じました。
それと、現場を知ることで多くのことに気付かされますね。

こうした領域の異なる異業種の出会いから、新しい支えあいのスタイルが生まれることを期待します」


綾部清香さん

ユースタイルラボラトリー㈱
土屋訪問介護事業所
エリアマネージャー

ユースタイルラボラトリー株式会社が運営する土屋訪問介護事業所に2015年入社。現在、千葉県・神奈川県の事業所管理を行うブロックマネージャーを務める。

★綾部さんのプロフィール詳細はコチラ
https://tsuchiya-houmon.com/4439/

★土屋訪問介護事業所
https://tsuchiya-houmon.com/

 

河村しおりさん

一般社団法人
日本臨床化粧療法士協会
代表理事

 

 

20代前半に指定難病(SLE・全身性エリテマトーデス)の診断を受ける。
闘病生活を送る中で、“化粧”による対人支援の道を見つけ、臨床化粧療法士®としてスキンケアの考え方を提唱。
化粧外来の運営や、医療機関内での美容相談、臨床化粧療法士®の認定・育成に力を注ぐ。

★河村さんへの講演依頼、臨床軽症療法士®へのセミナー依頼についてはこちらをご参考に。
ttps://japanclinical-cta.org/kigyou/
一般社団法人 日本臨床化粧療法士協会
https://japanclinical-cta.org/
★資格に興味を持った方はコチラを要チェック!https://japanclinical-cta.org/manabu/ 

 

 

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ALSと闘うSHUUさん 心の声

2年前にALSと診断されたSHUUさん。彼のことは、ブログで知りました。
自分の気持ちを正直に綴ったSHUUさんのブログはすごい人気で、たくさんの読者がいます。
毎日更新される日々の小さな出来事は、読んでいるとほっこり癒されるし、病気と闘いながらも優しさを失わないSHUUさんの強さ、溢れんばかりの家族への愛に触れ、温かい気持ちになれます。
けれど、すべてがhappy話ばかりではなく、悲しみや悔しさや時には憤りさえ感じてため息が出てしまうことも。
一喜一憂、こんなにも心を揺さぶられるブログは初めてです。
実際のSHUUさんは、どんな方だろう。
望む未来、見えない苦しみ、伝えたい思い、知ってもらいたいこと、気づいてほしいこと…もっと、もっとたくさん心の声があるんじゃないのかな。

SHUUさん、きかせてください。
今、あなたが伝えたいことは、何ですか?


interview

「今、たくさんの人からエネルギーをもらって生きています。ALSになっても人と繋がれる。生きていくには、孤独になっちゃダメなんです」



「ブログを始めたのは、自分がどうやってALSと向き合って、どんな思いで生きたかを息子に残しておきたかったから。
それと、ALSに罹患した人の参考だったり、生きる活力になれば…という思いもあったので。でも、今では自分が生きていくための活力になっています。
一言で言うと、ブログは心のジム!
ALSに身体の筋肉は取られてしまいますが、心の筋肉は取られません。
ブログの読者からのコメント一つひとつが、心の筋トレになっています。

体が不自由になり、外出が難しくなったり、コミュニケーションがとりにくくなったり、できないことがどんどん増えていますが、それでも、人って繋がっていくことができるんです。人との繋がりがいかに大切で、生きていくのに必要だということを、今、切実に感じています。

もし、病気や障がいがあって孤独を感じている人がいたら、あきらめないで、少しづつでも自分から動いてみると変わることがたくさんあるんじゃないかなと伝えたい。
わたしも、ブログなどで自分自身について発信したり、催しや集まりに参加することで、たくさんの人と新しい繋がりができました。今までやったことのない活動にも参加したり、健常者の頃より忙しいかも(笑)
ずっとふさぎこんだままで、自分の殻に閉じ籠っていたら、今きっとこの世にはいないと思う。
なので、リアルでもSNSでもいいから、まず自分から動いてみる。これは、とても大切なことだと思います」


誰だって震えるほど寂しい時がある。
死ぬほど辛くなるときもある。
そんなとき、SHUUさんの言葉を思い出してほしいと思います。

「自分から動いてみようよ」

辛くても、苦しくても、それでも動いてみよう。
きっと、何かが変わるはず。そう信じてね。

★SHUUさんのブログ

https://ameblo.jp/als-toubyou-kiroku

「多くの人が気づいてほしい、知ってもらいたい『地域格差』。誰もが同じ介護環境で生活できる世の中になってもらいたい」

SHUUさんは現在、長野県にお住まいです。この地で生まれ育ち、ご自身で美容院を経営されているそうです。


「他の場所に住んだことない、生粋の地元民です。
自分の故郷であるこの地をとても大切に思っていますが、病気になり、いざ24時間介護が必要という状況になってみると、介護支援サービスが遅れていて大変なことばかり!地域格差を強く感じています。
現在、長野市で重度訪問介護を受けている人は、自分をいれて2人しかいないようです。事業所は1つもなく、この制度が十分浸透していない事実、それによる生活維持の不便さは生死に関わる問題だと思います。

ちなみに、同居家族がありながら、わたしのように24時間の介護、月744時間を獲得できたのは、なんと市内初なんです!
前例がない、初めてのことだから、申請を出すのも大変でしたが、支援してくれる方々がチームになって頑張ってくれたおかげで、どうにか希望が叶いました。
自分という事例ができたので、今後に繋がっていってほしいと心の底から思っています。」

『地域格差』という言葉が何度も頭を打ち付けます。難病になると、病気だけでなく闘う対象が本当にたくさんあって、へこみます…。
SHUUさんが月744時間を獲得したとしても、肝心のヘルパーさんがいなくては、生活が成り立たない。重度訪問護事業所がないため、ヘルパーさんを自分たちで探すことになり、現在も募集中とのこと。自薦ヘルパーさんを雇用することになるので、それもひと苦労の様子。
ブログを読んでいても、SHUUさんの日常にいかにヘルパーさんの存在が必要不可欠であるかがわかります。
いなくてはならない存在がいないという現状。
でも、それはSHUUさんだけの問題ではなく、重度訪問介護を必要とする多くの人が直面する悩みの種でもあるのです。


「家族のことを思うと、24時間介護体制を整えて、少しでも負担を軽減させたい。自分のためというよりも、寝る時間がほとんどなくて、ずっと頑張り続けている奥さんが辛すぎるし、それを知って何もできない自分も辛いです…」


SHUUさんの伝えたい思い。
声に出すことができなくても、どんなに強く、切実な思いかが心に響いてきます。
この思いを受け止める人がもっと、もっと増えて、拡がって、大きな力になってほしい。誰もが、同じように支援を受けながら生活できる環境が必要です。
わたしも、声あげて伝えていきたい。
それは生きる選択につながっていくことだから。

「生涯、美容師でいたい!これからも、夢を追いかけて、心の声を思いっきり伝えていきたい」

「生涯美容師の夢が、現役としては志半ばで終わってしまいました。
でも、自宅でサロンをやっているので、現役ではないけど、持ってる知識を受け継いでいくことはできます。だから、生涯美容師でいたいという思いは、今も変わりません。
治療薬ができて病気が治り、美容師になると言っている息子(今のところは…笑)と一緒にサロンに立てる日が来ること。
これが、一番の夢!叶ったら最高!!」


SHUUさんがALSになってから、一番といっていいほど激しく落ち込んだのは、もう自分はカットが出来ないと悟った時。ALSに診断されたり、気管支切開の時よりもショックだったそうです。
どれだけ、美容師という仕事にほれ込んでいたか…。


「病院に2週間入院してサロンに戻った初日に、お客様のカットに入ったら腕が全然上がらず…。
もう、カットが出来ないんだ。美容師終わりじゃん。人生も終わりだ…と思いました。
まだ確定してから1ヶ月弱くらいしか経っていなくて、あまりにも早すぎる進行に、どうしようもないくらい絶望的になって…。夫婦で大泣き。
その日はちょうど送り盆で、同じALSで亡くなっている父が空に帰る日だったんです。
一緒に連れてって…って。これ、ブログにも書いたな」

今、自宅の2階をサロンにして、奥さんのあっちゃんとスタッフさんがお客様を迎えているそうです。
あっちゃん、サロンのこともバリバリこなしてすごい。一人でがんばりすぎてない?大丈夫かな…。


「全部一人でなんて、やり切れてないですよ。いつも、SHUUさんに相談しながらすすめているんです。アドバイスしてもらうというか、指示をもらいながら。美容師としてSHUUさんは技術も経験も教わるところばかり。SHUUさんがいるから、やっぱり心強いです」とあっちゃんが明るく返してくれました。
あっちゃんはSHUUさんと一緒に、大切なものを一生懸命守っているんですね。


最近、ご自身の経験をいかして、障がいのある方や病気の方でも気軽に、気楽に利用できる美容サロンになるという、新たな目標もできたそうです。

「自分が当事者になって気づいたんですが、体を自由に動せなくてもおしゃれしていたい。キレイにしていたい。そういう思いはあるけれど、迷惑かけるとか、気を使うから疲れるとか、もう自分なんてとか、あきらめちゃっている人が多いと思うんです。
気軽に行ける美容院があって、キレイになれたら気持ちも上がるし、楽しみが増える。外出が難しい人が、外に出ることにワクワクする、そんな気持ちになるようなサロンにしたいと考えています」

■SHUUさんの自宅2階、美容サロン
SOUP HAIR FACTORY(スープ ヘア ファクトリー)」
カット、ヘアカラー、パーマなどご要望を事前に伝え、予約を入れて来店ください。
※駐車場有 
※エレベーター有(広さに制限があります)  
※車いすのままでの対応可
問い合わせ:026-217-7628

最後に。あっちゃんへ…。

SHUUさんの奥さんであるあっちゃん。全身全霊でSHUUさんを支えています。妻であり、母親であり、サロンの仕事もこなす毎日は、きっと私が想像する何倍もハードなはず。それでも、悲壮感など微塵も感じさせないあっちゃんの明るさには、人を元気にする力がぎっしり!とても、強くて、優しくて、魅力的な人です。


「進行が早く、確定2ヶ月でマスク式呼吸器を使い始め、3ヶ月で車いすになって24時間マスク式呼吸器を使う生活になり、8ヶ月で気管切開と胃ろう。
早すぎて、行政も何も追い付かず、妻は24時間全介助をしながら大量の書類や申請をこなし、毎日ほとんど寝る間もない日が続いて…。
気管切開をしないと生きられない、そんな生きる選択をせまられた時、それでも一緒にいてほしいと言ってくれて…。
妻は病気になった自分と共に生きる選択をしてくれました。感謝なんて言葉では言い表せない。
気弱になって、悲観的なことを言っても、いつもわたしに最善な方法を考えてくれる。本当に心から思ってる、ありがとうって…。
妻と出会えたことが人生最大の幸せです


SHUUさんの思い、あっちゃんにしっかり伝わっていますよね。

読んでいただいた方にSHUUさんからのメッセージです。

「普通だったり、当たり前にできることが、どれだけ大切かを感じて、後悔しない生き方をしてほしい。それが自分の経験から伝えられることです」


後悔しないように、わたしは、まず大切な家族、支えてくれている人に、ちゃんと気持ちを伝えようと思いました。
心の声を一言、一言、丁寧に聞かせていただき、わたしなりの言葉で伝えさせていただいたことに、SHUUさんあっちゃんに心から感謝します。

※このインタビューは2020年11月にnote「NOW・いま」に掲載した記事を年数等のみ更新して「Unique」で掲載しています。

Unique/Writing Maeda Rie 


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「心を支える化粧のちから」臨床化粧療法士®河村しおりさん Interview 

自分の容姿にコンプレックスを抱えていたり、病気や事故による外見の変化に悩む人の苦しみを聴き、改善する方法を一緒に考え、寄り添うように支えてくれる人がいます。


臨床化粧療法士®のことを、あなたは知っていますか?


誰もが、自分の外見や容姿について、大なり小なりコンプレックスを感じているものです。

不安や悩みは一人で抱え込むことで大きくなり、苦しみが増して、生きづらさにつながっていく…。

そんな負のスパイラルにハマって抜け出せなくなっている人に手を差しのべてくれるのが「臨床化粧療法士®」です。

この資格の生みの親であり、活動の普及に力を注ぐ河村しおりさんに、化粧の持つちからについてお話を伺いました。

ネガティブな経験が
ポジティブの土台になる!

前田:河村さんがお化粧のちからで人をケアすることになった経緯は、日本臨床化粧療法士協会のホームページを拝見して知ることができました。
20代に難病SLE(全身性エリテマトーデス)を発症し、そこから長い闘病生活。そして、社会復帰、法人設立、新たな資格制度をつくって普及活動…すごくたくさんの経験をされていて、河村さんのこれまでの人生を本にしたら、一冊じゃ収まり切れないくらい長編作品ができそうです(笑)


河村しおりさん(以下:河村):そうなんです。波乱万丈ですよ。
難病になってからはしばらく、北海道の実家で無気力な闘病生活を送っていました。
このままじゃいけないと思って東京に飛び出し、それから友人の美容ディーラーの仕事を手伝うことになって兵庫県に移り住み、また東京に戻り協会を設立して…。

慌ただしい人生ですよね(笑)


前田:無気力な闘病生活を送る河村さんは想像できないですね。こうして話ながらもすごいパワーを感じています。
それでも、これまでの道のりにはたくさんの困難があったと思いますが、それを乗り越えてきたエネルギー源ってなんでしょう?


河村:落ちるだけ落ちて、あとは前を向くしかないというところまでいったので、開き直り的な底力はあったかもしれませんね。

でも、自分一人でここまでやってきたというわけではなく、私はすごく人に恵まれていて、支えてくれる人がいたから進むことができたんです。人の出会いや繋がりはとても大切ですね。


前田:自分を理解してくれたり、賛同してくれる人の存在は本当に大切だと思います。
ただ、そういうご縁や繋がりを作っていくには、自分自身に熱量がないと人の心に届かない。さらにその熱量を維持していくには、強い思いが必要ですよね。


河村:美容ディーラーの仕事に就いて、化粧を通じた社会貢献という道が見えてきたんです。それで、東京に戻り自分の容姿に苦しむ人の相談にのる「お化粧ボランティア」を始めました。
そのときに、患者ではなく利益を優先する現場に対して強い違和感を感じて、医療と美容を繋ぐ役割りになろう!お化粧のちからで人をケアしていきたいって、心から思ったんです。その思いが今の活動の原点ではありますね。


前田:患者主体という意識や気づきが持てたのは、ご自身が苦しんだ経験があったからこそなんでしょうね。

河村:そうなんです。患者でなければ気づかなかったかもしれませんね。
ネガティブだった時はすごく辛かったけれど、今ではその経験が役に立っていると言えます。
ネガティブな経験があったからこそポジティブになれた。
生きていて、無駄なことなんて、きっと何もないんですよね。


喜びを生み、自分を取り戻す
お化粧のちからは絶大!


前田:お化粧のちからで人をケアするというのは、具体的にはどんなふうに?


河村:対象者によって変わってきますが、どんな方にも知ってもらいたいと思うのが、正しいスキンケアです。
古くて劣化した化粧品を使わないための品質チェック。洗顔や頭皮の洗浄のやり方、肌の状態にあわせたスキンケア方法…、自分で自分の肌を守るための基本指導を積極的に行っています。
肌を健やかに保つことは感染症予防や褥瘡予防に通じるし、スキンケアをないがしろにして肌がガサガサでは、お化粧してもきれいにならないですよね。

スキンケアは、老若男女すべての人に関係することなんです。


前田:医療従事者の方々に向けたスキンケアセミナーを積極的に行っているそうですね。

病気になっても、歳をとっても肌はスベスベがいいし、身だしなみを整えていたいものです。そういう患者の気持ちを分かって、気配りをしてくれる人が増えてほしいと思います。

化粧療法では、心理的な面で実際に変化や効果はどんなふうに出ているのでしょうか?


河村:介護施設で利用者さんにメイクアップを楽しんでもらう化粧療法を行ったときは、みんな表情がいきいき、笑顔になってうれしそうでした。これこそお化粧のちから!生きていくには喜びが必要なんですよね。


前田:化粧によって喜びが生み出される。そこから発展した心理的効果はかなり期待できそうですね。


河村:お化粧という行為はとても崇高、レベルが高い行いなんです。
お化粧は選択肢を自分の中にもって、意思決定をする。これの繰り返しなんですね。
どの色にしよう、次はどれを付けよう。どんなイメージに仕上げよう。
そうやって自分が望む姿を作っていくと、自然と自分を再認識していたり、昔のことを思い出したり。


前田:普段何気なくやっているお化粧ですが、心理面だけでなく、実はその行為そのものがリハビリのようなものなんですね。


河村:一例ですが、昔、社交ダンスをやっていたという認知症の方にお化粧を進めたら、驚くほど積極的で、上手にメイクされました。
自分が華やかに踊っていた頃を思い出しているみたいでした。
認知症が進んで介護度が高い方でしたが、その後改善が見られています。
そんなふうに効果が分かりやすく出るケースもあります。


化粧を介して人に寄り添い、心を癒す
臨床化粧療法士®


前田:高齢の方だけでなく、病気によって容姿に悩む方へのケアにも力をいれていますよね。


河村:私は難病になってステロイドの大量投与で顔がパンパン、摂食障害も併発して髪も抜けていき、自分が自分でなくなっていく恐怖でいっぱいの時期がありました。

そういう経験があるからこそ、病気がもとで容姿のことに苦しむ人の支えになりたいという思いは強くあります。


前田:そういう場合、病気によって症状も違うし、メンタルが下がっている人も多いと思うので、対応はとても難しいのではないですか?


河村:なにが正しい、こうしなければならないという決まりは持っていないんです。相手を理解することを一番に、人それぞれ、ケースバイケースで接します。
今、現実をどうとらえていて、どうなりたいのか。それが思いつかないのなら一緒に模索を繰り返す。そして思いついた時に、その方がなりたい状態に近づけるサポートを行う。
それが臨床軽症療法士®の役割りだと思っています。


前田:あらためて、化粧のちからは興味深い!人を元気にできる可能性がいっぱいありますね。
必要とされる人と“化粧”を介して結ばれていくのが臨床化粧療法士®だとすれば、何をして効果を出すのかというよりも、人と繋がり、その人に寄り添うことが大切で、それがケアに必要なことなんですね。
これは、河村さんの経験から生まれた化粧療法の考えでしょうか?


河村:自分が病気による外見変化に苦しんでいた時に必要だったのは、相談するところ、話を聴いてくれる人だったんです。治すことができない病や、障がいを持ったことは、人生にとってすごく大きなアクシデント。事故のようなものだから、どうしてとか、なんでとか、考えても答えはでないんですよね。
でも、そのために社会の中で立ち止まって動けなくなってしまうこともある。そういう人の力のなりたいんです。

当事者だからこそわかること、できることがあると思うので。


前田:河村さんが難病を患っていることをついつい忘れそうになりながら、お話を聴かせていただきました(笑)

「化粧のちから」は本当に奥深くて、無限の可能性を感じます。臨床化粧療法士®が活躍する場も幅広いし、これからさらに広がっていきそうですね。

河村さんのブレない生き方にも、いい刺激をいただきました。

ありがとうございました!!


河村さんのお話はまだまだ続きます。次は介護をテーマにした話題で「化粧のちから」お届けします。

河村しおり
Kawamura Shiori

一般社団法人日本臨床化粧療法士協会 代表理事

20代前半に指定難病(SLE・全身性エリテマトーデス)の診断を受ける。闘病生活を送る中で、“化粧”による対人支援の道を見つけ、臨床化粧療法士®としてスキンケアの考え方を提唱。化粧外来の運営や、医療機関内での美容相談、臨床化粧療法士®の認定・育成に力を注ぐ。

※河村さんへの講演依頼、臨床軽症療法士®へのセミナー依頼についてはこちらをご参考に。

https://japanclinical-cta.org/kigyou/

●2017年 一般社団法人 日本臨床化粧療法士協会 設立

学術研究に基づいたアピアランスケアの考え方を提唱。法人団体を設立。


2018年、臨床化粧療法士®の資格認定を開始
臨床化粧アドバイザー/臨床化粧療法士®︎/化粧体操指導士

※資格に興味を持った方はコチラを要チェック!

https://japanclinical-cta.org/manabu/

日本臨床化粧療法士協会HP

TOP

●臨床化粧療法士®︎を選んでオンライン相談ができるWEBサイト/アピラボ

https://apilabo.jp/


●河村しおり SNSリンク集

https://linktr.ee/makeup_lovers

 
Unique/Writing:Maeda Rie

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暮らしの中に必要な支援を考える。秋山正子さんInterview!

「暮らしの保健室」、「マギーズ東京」の開設という偉業を成し、ケアーズ白十字訪問看護ステーション統括所長も勤められる秋山正子さん。

コロナ感染の不安が広がり、医療、看護、介護へも影響が及ぶ中、制限しながらも、相談者への対応を続けられています。
心の不安を受け止めてくれる存在が、どれほど人の支えになるか。
身に染みて感じる今日この頃。
“暮らしの中に必要な支援”について、秋山さんの思いをお伝えします。


扉の中は暖かいもう一つの我が家。
「暮らしの保健室」のこと

大都会新宿にある戸山ハイツ。ホッと安らぐ懐かしさが漂うエリア。

秋山正子さんが開設した「暮らしの保健室」は、東京新宿区、築50年を超える「戸山ハイツ」33号棟の1階にあります。

木香を感じるウッドな造りの外観は、昔ながらの商店街の中では目を惹く存在。夕暮れ時、窓から漏れる優しい灯りからは、ふと覗いてみたくなるような人肌の温もりが感じられます。
ここは、誰でも自由に訪れて、体のこと、病気のこと、介護や看護のことを相談することができる、まさに“保健室”。
そして、この地に住む人々の孤独を癒し、不安や悩みを話せる心の拠り所でもあります。

秋山さんに、この「暮らしの保健室」でお話を伺えることになりました。


-とても落ち着く室内ですね。大都会の中にいるせわしさをまったく感じません。


秋山正子さん(以下:秋山さん)「ここは2011年にオープンしました。予約がいらないこと、いつ来てもいいこと、相談料がかからないこと、そして木を使った安らげる空間という、マギーズの考え方を取り入れて造ったんです」

楽し気なおしゃべりと、笑い声が溢れてる「暮らしの保険室」。地域の人の憩いの場。

-「マギーズキャンサーケアリングセンター」の創設者、マギー・K・ジェンクスさんの考えですね。優しい照明と自然を取り入れた温かい雰囲気、リラックスできる空間。
これは「マギーズ東京」と同じコンセプトなんですね。


秋山さん「そうですね。病院でも自宅でもない、第二の我が家のような居場所。それがイメージです。
ここは、2017年にグッドデザイン賞を受賞しています。「暮らしの保健室」の考え方を含めて評価していただようです」

「暮らしの保健室」は、マギーズをお手本にしたけれど、違うところは病気に限らずに、地域の方からの相談やご質問に対応しているところです。
例えば、「家族が認知症になった」「旦那が病院に入院してしまった!」と不安な気持ちをお話に来る人がいたり、「何の薬か分からなくなってしまった」といった困り事を相談に来たり。
ほんのちょっとしたことだけれど、わからなくなったり、不安になると、先に進めないんですよね。
「暮らしの保健室」は、そういうちょっとした分からない事を気軽に話せる場所なんです」

2017年度グッドデザイン特別賞を受賞。「地域経済の活性化により経済発展に寄与するデザインとして特に優れたもの」として選出。


迷ったり、不安になったり、
困った人への道先案内。

-いろんな相談がくると、対応しきれないこともたくさんあるのではないでしょうか?
相談を受けるのはとても難しいように思います。上手な対応のコツというのはありますか?


秋山さん「私たちの相談支援は、セカンドオピニオンではないので、治療や医療に関して答えを出していくことはしていないし、できないんです。相談を受ける時は、相手の話をよく聴いて、一番大事にしていることは何か、何を解決したいと思っているのかを知ることから始めます。
それが分かってきたら、悩んでいる中身を少し整理して、次に何を選択していくかを考え、その人が次に進んでいくための道先案内をしていくような感じです」


-「道先案内」とは、とてもわかりやすい表現ですね。
秋山さんのそうした考えは広がっていて、「暮らしの保健室」は全国に50ヵ所以上開かれているそうですが、どの地域でも同じように運営されているのでしょうか?


秋山さん「「暮らしの保健室」は、立ちあげた方や地域の特性など、各施設がそれぞれの状況に応じたスタイルで運営を行っているんです。
ただ、考え方や基本方針は皆同じです。
患者さんや相談に来た方とは常に横並びの関係で、専門職が知識を伝授するとか、教え諭すようなことはありません。悩みをきいた上でどうしたらいいのかを一緒に考えて、病気や障がいをもった人が自分の足で歩いていけるようにする。
この、自立支援の考えはとても大切で、「暮らしの保健室」の柱になる考えです。状況が変わっても、これだけは、譲れないところですね」

何があっても訪問看護が維持できる。
その体制づくりが課題。

-ここ1、2年はコロナ対策で、入院すると家族や近しい人とまったく会えなくなってしまう状況が続いているので、自宅での療養を望む人が増えているようです。

訪問看護は、今、なくてはならない重要な存在ですが、利用者が増えていることもあり、人材不足の問題が益々深刻にならないかと心配です。


秋山さん「事業所の数は増えていますよね。ただ、ぎりぎりの人数で運営している事業所も少なくありません。そのため、災害やコロナなどの影響を受けると、人手に余裕がないために訪問ができなくなってしまわないかという心配があります。
誰かが休んでもカバーできるくらいの余裕ある人材確保ができればいいのですが…


看護師、ヘルパー不足は患者さんにとっては深刻な問題です。
解決への糸口があるとしたらどんなことでしょう?


秋山さん「人の問題は難しいですよね。白十字訪問看護ステーションのことを例に挙げると、訪問看護事業所の他に、看護小規模多機能型の施設「坂町ミモザの家」、そして「暮らしの保健室」といった事業内容の違う事業所を運営し、大変な時はみんなが連携して訪問看護を支えていくような仕組みを作っています。

話をしたり、相談できる場は、地域に住む人の支えになります。各家庭に訪問することだけでなく、目線を広げた地域のための活動が増えれば連携もとりやすく、人材確保にも繋がるのではないかと思っています」

「マギーズ東京」「暮らしの保健室」
大切なことは話を聴く。対話をすること。

東京の豊洲に開設された「マギーズ東京」。緑に囲まれ、ここだけ別世界のような雰囲気。

-「マギーズ東京」に行ってきました。都会の埋め立て地にこんなに自然を感じる場が存在することに、まず驚きでした。
室内の居心地もよく、訪れた人は緊張がほぐれて気分がよくなりますね。
環境って大事だなとつくづく思いました。


秋山さん「マギーズ東京の開設は、イギリスでセンター長を勤める方と、がん看護に関する学会で登壇者としてご一緒したことがきっかけになりました。
いつでも、誰でも相談に来れるように窓口を開き、がんを経験している人やご家族、友人など、がんに影響を受けるすべての人を受け入れて対応していることを知り、そういう場が日本でも必要だと強く感じたんです。
病院以外で、病気のことから暮らしのことなど、気軽に相談できる環境の整った場、というものがなかったんですよね。それで、マギーズをつくる運動を始めました。


-日本では前例もないし、発想や考えを理解されにくかったのではないですか?


秋山さん「そうなんです。整った環境の中、がんに影響を受ける人がいつでも自由に来て相談することができる。そんな場をつくると言っても、理解してもらうのは大変でした。
医療保険、介護保険も関係なく、収入源がない状態でどうやって運営するのかイメージできない…。ということをよく言われましたね。
でも、すでにオープンしていた「暮らしの保健室」がいい見本となって、支援へと繋げていくことができました」


-「マギーズ東京」、「暮らしの保健室」の両方で大切にしているのは、どんなことでしょうか?


秋山さん「相談者さんが、診断を受けて気持ちが下がっていたとしても、自分で決めて進んでいけるようにサポートすることが私たちの役目です。
相談に来られた方のことは、心理士、看護師などのスタッフが、毎日リフレクションという振り返りをして情報を共有しています。
誰が対応しても導く方向が同じになるようにするためです。

「マギーズ東京」を利用される方への関わり方で、一番大切にしていることは話を聴くこと。対話することです。
単なる傾聴ではなく、一緒に考え整理し、方向を共に探りながら話を聴く。それは、マギーズも保健室も同じです」

マギーズ東京の室内は木の香りでいっぱい。癒しとくつろぎの空間。

-気軽に相談できる場がある。
それは医療や看護に留まらずに、人の暮らしの大きな支えになっていると思います。
問題や不安が大きくなる前に、サポートできることもありますよね。


秋山さん「そうですね。今、生きづらさを抱えている人はたくさんいると思います。そういう方たちが気軽に相談できる場があると、問題に対して早めに対処ができるようになります。

例えば、体調が優れないとすぐに救急車を呼んで大きな病院に行こうとする人がいます。でも、それが一番いい方法かというと、そうではない場合もあります。
かかりつけ医がいれば、話をきいてもらって解決できるかもしれません。訪問看護が通っていれば、体調の変化に早めに気付くことができるかもしれません。そんなふうに、救急車を呼ぶことになる手前でサポートできることがたくさんあるはず。
ただ医療を使うのではなく、上手に医療にかかる。それは、必要以上に医療を使わないということも含めて、大事なことだと思います」


-難病でも、疾病の種類に関係なく、そうした垣根を越えて進む道を見つける場が必要です。
難病患者が気軽に相談できる場をつくりたいと、お話しを聴いてつくづく思いました。
少々、大きすぎる目標ですけれど…(笑)

幅広い世代の人が悩みや不安を
相談できる場を各地域に。


-自分の家で最後まで過ごしたいと望む人がいたら、その思いに応えていきたい。秋山さんは、そのために必要な道を一つひとつ切り開きながら歩んでこられていますが、これからさらに、どのような道をつくっていこうと考えていますか?

秋山さん「地域の中でいろんな人と手を組んで、そこに住む人が最後までこの街で、自分の家で過ごすにはどうしたらいいのか。そんなことを相談できる場が、もっともっと増えて、こうした考えが広がってほしいと思っています。

今、若い患者さんは、自分の意思で医療者と相談しながら治療を行っている人が増えていますね。患者さんが自分の意思で選択できる、そんな時代になってきているのだと思いますが、やはり迷いや不安はつきないのかと。
医療体制や考え方が変化しても、相談できる場、相談できる人がいることで安心を得られる人がいます。
そんなふうに考えると、「暮らしの保健室」は、これからもっといろんな世代の人に利用してもらいたい。そういう働きかけも大切だと思っています」


-最後に、今後の活動について、教えてください。


秋山さん「全国各地に広まった「暮らしの保健室」が、それぞれの地で次の世代が育ち、受け継がれていくのを見守っていこうと思っています」


とあるメディアに掲載されていた秋山さんの言葉で、印象深く心に残っている一文があります。

「お一人お一人の人生の最後の場面に出会うことは、その方の“いのち“を物語として受け継ぎ、次の世代へ語り継ぐ役目を負ったということだと思わされることも多々ある」

次世代へと繋げていく。
Uniqueも、こうした情報発信を行う上で、役目を負うのであれば、どんな役目なのだろう…と考えます。
もっと多くを経験し、もっと深く思考し、続けていかなければ見えないものなのかもしれません。
次世代へと繋げていく。
その役目を実感できた時、はたしてやり遂げたと思えるのか。
やり残したと思い、自分に落胆するのか。
先のことは見えないけれど、
一日、一日がその答えをつくる貴重な時間だということは、どんな時でも忘れずにいられそうです。

小さな町の保健室。秋山さんの考えが多くの地に広がり、人を支えているのだと思うと,温かい気持ちになれます。
年齢、性別、疾患、生涯、すべての垣根を取り除く集いの場が、これからも各地に、各町に、増えていくことを願います。



秋山あきやま 正子まさこさん
秋田市生まれ。
1973年聖路加看護大学(現聖路加国際大学)を卒業。看護師・助産師を経て、1992年東京の医療法人春峰会の白十字訪問看護ステーションで訪問看護を開始。
2001年ケアーズ白十字訪問看護ステーションを起業、代表取締役に。
2011年「暮らしの保健室」を東京・新宿に開設、2016年NPO法人マギーズ東京を設立。
2019年 第47回フローレンス・ナイチンゲール記章受賞

◆マギーズ東京
WEBサイト:外部サイトへ移動しますhttps://maggiestokyo.org

※マギーズ東京へのご寄付はコチラから↓

マギーズ東京 | マギーズ東京を支援する (maggiestokyo.org)

◆暮らしの保健室

WEBサイト:https://kuraho.jp/

※暮らしの保健室開設にご興味のある方へ・基本ガイド

https://kuraho.jp/steps.html

 

 Unique/Writing:Maeda Rie


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苦しいこと、つらいこと、抱え込まずに、話してみませんか。

エンドオブライフ・ケア協会
千田恵子さん
×
Unique 前田理恵

エンドオブライフ・ケア協会(以下ELC)業務執行理事の千田恵子さんとUnique代表の前田の対談です。
テーマは、「苦しいこと、つらいこと、抱え込まずに話してみませんか」。
苦しいこと、つらいこと。
嫌なこと、不条理なこと。
普通に生活していても、沢山あります。
解決できない苦しみに心が悲鳴をあげたり、孤独に押しつぶされそうになったとき、皆さんはどうしているのでしょう。

一人で抱え込んでいるのなら、話してみませんか。
苦しい胸を内を打ちあけてみてください。
つらい時を過ごす今よりも、
少しだけ、心が軽くなるかもしれません。

そんなわたしたちからのメッセージが、苦しみを抱えているたくさんの人の心に届きますように。


千田:苦しいことって簡単には話せないかもしれません。
前田:気軽に話せる環境づくりも必要だと思います。

前田:苦しみや悲しみって、喜びやハッピーな気持ちになるのと同じように誰もが経験することなんですよね。そう思うと特別なことじゃないし、「話を聴いてもらえますかー!」って、もっとオープンな感じで話せたらいいのにと思ってしまいます。


千田恵子さん(以下・千田):そうですね、話せたらいいのかもしれませんが、話せない、あるいは話さないのは、理由がいくつかあるのかなと思うんです。
誰にも言えないとか、わかってもらえないのではないか、言ったら重たいと感じて敬遠されてしまうかも…と一人で抱え込んでいる人もいます。
そのことを自覚している人もいれば、気づいていないという人もいます。

前田:たしかに、自分自身が抱え込んでいることにさえ気づいてなかったら、話せないですよね。
ただ、そういうモヤモヤしたつらさが自分の中でどんどん大きくなると、苦しみが何倍にも膨れてしまう。そうなる前に気づいたり、抱え込むのを止めることができたら、苦しい気持ちだって軽くなるとは思うのだけれど…。



千田:最初から自分の悩みを話そうって意識して話せる人は、そう多くはないように思えます。だから、苦しんでいる人に「ちゃんと相談しよう」と働きかけるのは、ハードルが高いのかもしれません。


前田:どう話していいのかわからない、心の整理がつかないということもありますね。自分のモヤモヤに気づかないでいる人は、どんなことがきっかけで前にすすんでいけるのでしょう?


千田:意識しないでいても、話していくうちに気づくということもありますよね。
何気なく話していたら、そんなつもりはなかったのに、モヤモヤと感じていたことが少しずつ言葉になっていく。
本当はこうだったらいいなと思うのに、実際にはうまくいっていないこと、自分は実は傷ついていたんだ、苦しかったんだと気づいたり。


前田:そうですね。話しながら気づくことって多いかもしれません。
わたしは、icotto(イコット)という難病患者の交流会を催す活動を行なっているんですが、それを始めたのは、まさに話すことの必要性を感じたからなんです。
交流会では、いろいろな話をします。それは楽しい雑談の時間で、その中で皆さん、苦しみやつらい胸の内を話しています。
「話しやすいからついつい話しちゃった!」って晴れやかな顔になったのを見るとうれしくなりますね。
そういう場がないと、ずっと我慢したまま、心まで病んでいく人が増えてしまうと思います。

わたし自身、苦しんでいた時、話を聴いてくれた人がいたことでとても救われた経験があります。
だから、自分の気持ちを伝える場があること、それを受け止めてくれる人がいることの大切さを強く感じているんです。


千田 :聴いてくれる人がいて、その場がある。環境は重要ですね。
話せる人が誰もいなくて、苦しくても一人でじっと耐えているという人は少なくない気がします。

「この自分の苦しみは誰にもわからない」とか、「自分のことは自分で解決するもの」とか、「人に迷惑をかけてはいけない」、そういう自分と他者、公と私、内と外の間に厚い壁があるのかもしれません。
たとえば、働きながら家族の介護をしている人がいたとして、それを職場に言うことで、プライベートなことを持ち込んでいいのだろうかと思ったり。弱さを見せると不利にならないかと考えてしまうかもしれません。
誰にも言えない、言いたくない、言ってはいけない。
そんな気持ちから我慢し続けて、それまで以上に頑張らなければと自分を追い詰めていると、いつか心が壊れてしまわないかと心配です。

前田さんは、話すことで救われたと言うほど、苦しい時があったんですね。
自分の話を聴いてくれる人がいて、支えてくれる人がいると思えた時、どんなふうに気持ちが変わったのですか?


前田:その時はかなりラクになりました。苦しみの原因がなくなったわけでも、生活環境が変わったわけでもないんですが、それでも心の重石が軽くなったように感じました。
それに、「聴いてくれてありがとう!」とうれしい気持ちが自然に口から出てきて、感謝で胸がいっぱいでした。
そういう“いい気持ち“は、生きるエネルギーになりますね。


千田 :わたしも人に話すことで、前に進めた経験があります。
わたしは活動を始める前に父母を続けて見送ったんですが、そのことを人前でお話する機会をいただいたんです。
一つひとつの出来事に意味づけをして話すのですが、この過程で心の中が整理されて、たくさんのことがクリアになりました。
大切な人たちがいなくなってしまって、心に穴が開くってこういうことなんだなって感じましたし、会いたいという気持ちは今も変わらないのですが、いつも見守ってくれていると思えるので穏やかな気持ちになれるんです。
解決できないことに変わりはなくても、それでも穏やかになることはできる。
その可能性は誰にでもあるのだと思っています。


前田:話すには、聴く人が必要。でも聴くことって難しいと感じています。
千田:相手に「自分をわかってくれる人」と感じてもらうことが大切ですね。


前田:話せるってすごく幸せなのかも。当然ですが、聴いてくれる人がいるってことですものね。
わたしは聴く立場になることもあるのでですが、聴くってすごく難しくて、反省することも多いです。


千田: 「聴く」ことって、簡単なようで奥深いと考えています。
例えば、わたしは自分の経験を話すことに対して前向きであっても、「つらいかもしれませんが、聞いてもいいですか?」と気遣っていただくことがあります。
優しいお気持ちからとわかっているので、「いえいえ、つらくはないですよ」と言葉を添えていますが、「苦しい」=「つらい」という、聴き手の先入観って少なからずあると感じています。
だから、難しいというか“奥深い”。


前田:なるほど、奥深いとはぴったりの表現!
千田さんは、苦しんでいる人を支えられる環境づくりにも目を向けて活動されていますよね。“話を聴く“ということを大切にされているようですが…。


千田 :わたしたち(エンドオブライフ・ケア協会/以下:ELC)は、解決が難しい苦しみを抱えた人との関わり方を学び、それぞれの現場で活かしながら、お互いが支えとなるコミュニティを作り、活動しています。
特に「苦しんでいる人は、自分の苦しみを“わかってくれる人”がいるとうれしい」ことを心に留めて、苦しんでいる人の話を聴くことを大切にしています。

苦しんでいる人が目の前にいても、自分は専門家でもないし、その人と同じ状況でもないから、本人の苦しみを理解することができない。どう声をかけていいのかも分からない。
そんなふうに、関わる自分に自信がないとか、話を聴くことは敷居が高いという人がいますね。


前田:わたしも間違えなくその一人です。
わたしが話を聴いたところで、はたして役に立つのか。苦しんでいる状況をちゃんと理解できるのか。
そんな心配がいっぱいでてきます。


千田:自分が苦しんでいる相手を理解するのではなく、苦しんでいる人が自分のことを「わかってくれる人だ」と感じてくれる。それがすべてのはじまりだと考えてみてはいかがでしょう。
相手のことを理解したい気持ちは大切ですが、本当の意味で他人を理解することは、できないのかもしれません。

だから、相手が“わかってくれる人”と感じられる関わり方を知ること。そして、つたなくてもやってみることが、まずは実践するための一歩です。

ELCの活動には、身近な人の力になれる人が増えてほしいと思いがあります。そこに賛同してくださる方々が、草の根的に学びの場をつくって、その思いを全国に広げてくださっています。


前田:苦しんでいる人にどう接していいのか、なんて声をかけていいのか。そういうこと、学校や仕事で教わる機会がないですね。
どうしたらいいのかを知ることができれば、確かに声をかけやすくなりそう。
人との関わりが薄くなっている今、多くの人に知ってもらいたい活動ですね!

千田恵子/2015年有志とともに一般社団法人エンドオブライフ・ケア協会設立 
業務執行理事を勤める。

前田:誰かの力になることで、自分を大切に思える。この考え、心に響きました。
千田:お互いが支えになる“ホスピスマインド”が広がってほしいですね。


前田:ELCの活動は、医師でありELC代表の小澤竹俊先生がホスピスといういのちが限られた患者さんと関わる現場で、30年近く学んできた経験が根本にあるそうですね。


千田 :小澤が自らが学んだ経験から、患者さんとの関わり方に普遍性を見い出し、誰もができることとしてプログラムを作って、6年前から活動を始めています。

世の中には苦しんでいる人がたくさんいます。
子供にも苦しみはあるし、元気で生活している人だって苦しみを抱えていることもある。でも、自分が苦しんでいるとか、傷ついているとか、実は自分自身が気づいていない。そんなこと、ないでしょうか。
「苦しみ」とは、こうだったらいいな、という「希望」と、でも実際には…という「現実」との開きだと考えると、とても身近で誰もが関わる可能性のあることだと思います。


身近な人の力になりたい、自分自身の苦しみとも向き合いたい。そんなふうに思うことがあったら、わたしたちが主催するイベントに気軽に参加いただけたらうれしいです。


前田 :苦しんでいる人の力になるにはどうしたらいいのか。
迷いますし、自信もありません。
それでも、人を支えることができるのでしょうか?

千田 :もちろんです。
前田さんが話された「聴いてくれてありがとう!とうれしい気持ちが自然に口から出てきて、感謝で胸がいっぱい」という言葉や「icotto」の活動をされていることとか、もうすでに前田さんは実践していらっしゃいますよね。

支えてもらったことへの喜びが、自分も同じように誰かの力になりたいという気持ちに繋がるんじゃないかなと思います。
人と人が支えあう“ホスピスマインド”が広がっていけば、ちょっとした悩みも話しやすい、受け入れてもらいやすい環境ができてくると思います。


前田:たしかに、一方通行では支援者と支援される人という隔たりができてしまい、立場に強弱が生まれてしまいそう。
お互いが支えになる、そういう意識を持つことも大切ですね。
身近に苦しんでいる人がいて、その人に手を差し伸べることができたら、自信に繋がっていくかもしれません。


千田 :小さくても何か一つ、役に立てたと思うことで、文字通り、自分を信じることができる。
それも大切なことだと思います。

ただ、役に立てないってこともあるんですよね。


前田:ありますねー。かえって落ち込むかな。
自分のことを自分で認めることができなくなってしまいますよね。そんな時は、どう立ち直ったらいいのでしょうね。

千田: 支えがあることで穏やかな気持ちになれるかもしれません。
前田:話してラクになった。そこからが始まりなんですね。


千田:前田さんは、自分のことを“それでいいよ”と認めてくれる誰かはいますか。
“誰か”は、人であったり、手で触れられる何かとは限らなくて、私であれば、亡くなった父母です。
どんな自分であっても、「それでいいよ」と認めてくれている、そう感じられるので前に進むことができます。
物理的に話はできないですけど、心の中で私の苦しみを聴いてくれて、私のことを「わかってくれる人」と思える支えの存在です。


前田:そう言われると、わたしのことを認めてくれている人の顔が浮かんできました。支えてくれている人がいるのは、たしかに心強く思えます。

ELCのセミナーに参加させてもらいましたが、とても楽しかったです。
初心者向けに行われた企画でしたが、話を聴くことの大切さや、話の聴き方も知ることができたし、わずかな時間でいろいろな気づきがありました。

「この苦しい気持ちは誰にもわかってもらえない」と一人で悩んでいる時に、ほんの少し勇気を出して声を出してみたら、否定せずに聴いてくれた。
「この人ならわかってくれる」と感じて打ち明けてみたら、少し気持ちがラクになった。
そんなふうに、苦しみを打ち明けて心が軽くなったとしてもそれで完結ということではなく、むしろそこからが始まりなんだなと思えました。
話を聴いている人が相手の気持ちを理解するために聴くのではなくて、悩んでいる本人が「私の気持ちをわかってくれた」と感じられることが大切で、そのために話を聴くのですね。

前田理恵/難病患者のコミュニケーション支援と集いの場「icotto」主催。
当サイトUniqueの運営を行う一般社団法人Unique代表


千田 :対象者に合わせて、2日間の講座や、2時間程度のイベントなど、セミナーにはいろいろ種類があるのですが、いずれも様々な方が参加してくださっています。
医療や介護の専門職である必要はないですし、特定の立場の誰かから誰かへ一方的に提供されるものでもないと思うのです。
苦しむ人の力になりたいと願うすべての人にできることがある。そのことに気付いて行動する人が増えることを願っています。


前田:悩んでいる本人が“話す“ことを通して、誰かに自分の苦しみをわかってもらえたと感じたら、気持ちがラクになるだろうなと思います。
でもそれだけではなく、話を聴くことで自分自身も穏やかな気持ちになれる可能性があるという考えには、ハッとさせられました。
セミナーには、どんな方が参加されているのですか?


千田:参加される皆さんは、様々な分野の方々です。
例えば、働きながら家族の介護をしている方、学校に通えない子供と向き合っている方、仕事と育児の両立をしている方など、周囲からちょっとしたサポートや温かい声をかけていただいたことがうれしくて、自分も必要とする人がいればお役に立ちたいという考えの方々も多いです。


前田:難病の患者会でも、そうした考えがあることを伝えたいと思っています。
患者さんは、日々、苦しい思いをしながら過ごしています。心の拠り所や安らぎを求めているけれど、それだけでなく社会の一員でありたいという気持ちもあるんです。
いろんな人に支えてもらっているからこそ、恩返しの気持ちで人の役に立ちたいと思うのでしょう。
ELCの“ホスピスマインド”の考えは、とても魅力的ですね。


千田 :解決できない苦しみがあっても、支えがあることで穏やかな気持ちになれるかもしれません。
気持ちが穏やかになれたら、ものの見方も違ってくるし、苦しい中にある喜びや幸せに気づけるようになれると、気持ちもラクになれるかもしれませんね。

支える、支えてもらう、入り口はどちらからでもいいと思います。
自分が今できる一歩を、踏み出せるといいですね。


前田:ELCの活動は本当に奥が深いので、語り尽くせない、伝えきれないもどかしさがあります。
次の機会にぜひ「いのちの授業」について、お伺いさせてください。


千田:学校や地域コミュニティで行っている「折れない心を育てる いのちの授業」ですね。

小中学校でお話すると、子どもたちが、今まさに感じている心の動きが表情から伝わってきます。
苦しみも大小様々に抱えていることでしょう。
そんな子どもたちが、支えの存在に気づいたときのいきいきとした表情から、わたし自身が力をいただいています。
今を生きる子供たちとの関わりをもっと増やしていきたいと思っています。


前田:また、次の機会を楽しみにしていますね!


★エンドオブライフ・ケア協会HP

https://endoflifecare.or.jp/

★オンラインイベント情報

https://endoflifecare.or.jp/posts/show/8832

★Facebook

https://www.facebook.com/endoflifecare.or.jp/


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車いすでもあきらめない世界をつくる。WheeLog 代表・織田友理子さん


最近、「バリアフリー」の取り組みが社会の中に浸透してきたと感じることが増えてきました。車いす用トイレ、エレベーターの設置や段差をなくす等のハード面だけでなく、“多様な人が社会に参加する上での障壁(バリア)をなくす“といった多面的なバリアフリー化の動きも広がっています。
その背景には、障がいがあり、不自由さと常に向き合う人たちの活動が、大きな推進力になっているのだと思います。

「車いすでもあきらめない世界をつくる」のスローガンを掲げて活動をする、一般社団法人WheeLog 代表の織田友理子さんもバリアフリー社会の担い手といえる方です。
車いすでも気軽に外出を楽しめるようにバリアフリーマップのアプリをつくり、その活動を日本だけでなく世界に広げています。

WheeLogのそうした活動は多くのメディアにとりあげられ、織田さんは常に注目される存在です。世の中に新しい可能性を広げている活動への期待とともに、織田さんの強い心の持ち方に多くの人が魅了されています。
あきらめないこと。
人生を楽しむこと。
後悔しない生き方のバイブルになる、織田さんの思いを伝えさせていただきます。


interview

障がいがあるからこそ、情報が必要。もっと楽しく、自由に生きるために情報を活用してほしいと思います。

-インタビュー当日、初めてお会いした織田さんは大きな瞳が愛らしく、可憐な雰囲気の方でした。

それでも、活動への思いを語るときは、華奢で繊細な印象からは想像できないほど一言、一言が重低音のサウンドのようにズシリと心に響いてきます。



織田さん:車いす生活になった当初、外出することをあきらめることが多くなり、自然と1日のほとんどを家で過ごすようになっていました。

そんな時、家族で海に行く話が出たんですね。
海なんて、車いすで行ってもしょうがない、楽しめないし、面倒をかけるばかりと思っていたら、海に入れる車いすのようなものがあり、それを借りることができるってことを知ったんです。
実際、海に行き、その車いすを使って久しぶりにアウトドアを楽しんで、その時に情報があれば車いすユーザーでももっと楽しめる、あきらめなくてもいいんじゃないか、ということに気づきました。

それから、車いすで外出するときに必要な情報を発信することを始めました。自分で体験したことをまず伝えていこうと思い、移動や外出先でチェックしたバリアフリー状況をYouTubeで配信していき、今でも続けています。

障がいがあるからこそ情報は必要で、そして情報を活用することで、もっと自由に行動の場を広げていくことができると思うのです。
生活の中に楽しみや喜びが増えていき、それは生きていく上でとても大切なことなんですよね。


-それから、WheeLogを立ち上げて、本格的に誰もが使えるバリアフリーマップのアプリをつくる活動を始めたんですね。
本当に素晴らしい発想だと思います。
その発想力だけでなく、“ユーザーが育てて広めていく“という仕組みがつくられているところにも、これを広めていこう!という熱い思いが感じられます。

健常者も車いすで移動。車いすユーザーの目線が体験できる、
街歩きイベントの様子。
街歩きイベントの予定は、WheeLogホームページをチェック!


織田さん:そうなんです。役に立つものをつくっても、知ってもらい、活用してもらわないと意味がないんです。
だから、このアプリを広めていくことは最重要課題。それがすごく大変です!
SNSが普及しているお陰で、WheeLog!の情報を拡散することはできるのですが、それだけでは必要性が十分に伝わりません。やはり実際に体験してもらうことで私たちの活動をより身近に感じ、協力者になってもらいたい。
そんな思いで車いすでの街歩きイベントを催すようになりました。

出会ったご縁を大切に、細くてもずっと繋がっていると、また新しい人の繋がりが生まれます。

-WheeLog!が多くの人に活用されているのは、活動を支えている人の力も大きいと感じました。
織田さんの周りには、サポートをしてくれるたくさんの人がいますよね。


織田さん:WheeLog!は地道な活動の積み重ねで広がっています。それは協力してくれている人たちのお陰でなんです。本当に感謝しかありません。
WheeLogの活動を始めて、人の繋がりの大切さを身に染みて感じています。だから、お会いした方とは、そのご縁を大切にしたくて、細い繋がりでもいい、繋がっていることが大切と思っています。
考えがそぐわずに、付き合いが続かないということもあるんですが、それはその時で、もしかしたら時間がたてば変わるかもしれない。離れてしまっている方でも、また繋がる機会があるかもしれません。

気が付くと、新しい出会いも増えています。人が人を呼び、その輪が広がっているのがとってもうれしいですね。

できないと思うとそれでおしまい。先がなくなるから「できる」「やってみる」としか思わないようにしています。

-講演活動やイベントを主催、または参加するなど、織田さんのエネルギッシュな活動には驚きさえ感じます。

病気になると気力が萎えてしまい、いろいろなことをあきらめてしまう人もいます。織田さんの行動力に繋がる思いとはなんでしょう?


織田さん:自分でできないと決めてしまうと、そこでストップ。それ以上のことはできなくなってしまう。
だから、できないと思わないようにしているんです。
基本は「できる」「やってみる」。
結果ダメなら、納得がいくけれど、何もしないのに最初からあきらめてしまうのはすごくもったいない。
車いすでも、障がいがあったとしても、その生き方や楽しみ方は自分次第なのだと思います。
情報は多ければ多いほうが選択肢が広がりますが、その選択をするかしないかはやっぱり自分次第。
自分らしく生きることをあきらめないでほしいと思います。

おしつけ、自己満足になっていないか、自問自答から答えが見えてくる。

- 常に挑戦を続けている織田さんですが、判断、決断をしなければならないことも多いと思います。不安や迷いが出る時は、どのようにして前に進まれているのでしょう?


織田さん:不安になったり、いろいろ考えることはしょっちゅうあります。
自分の気持ちのおしつけになっていないか、自己満足ではないか。目的から外れていないか。
自問自答繰り返しです。でもそれが大切で、そこで軌道修正したり、見直したりしながら進むようにしています。

快適なバリアフリー環境は、障がい者も健常者も区別なく、みんなが一緒になってつくるもの。

-WheeLog!のユーザーは現在30,000人。
WheeLog!の支持者やマップを更新するなど、参加しているユーザーは車いすの方だけではないようですね。


織田さん:そうなんです。
車いすユーザーじゃない方もWheeLog!でマップを更新したり、書き込み情報をくれたり、またイベントに参加するなど、応援してくれる人が増えています。
これはとてもうれしいことで、バリアフリーをさらに広めていくには必要なことなんです。
バリアフリーの考えが浸透しているといっても、まだまだ不便な面がたくさんあります。社会をもっとよりよく変えていくには、障がい者も健常者も区別する必要はなく、すべての人に思いを共有してもらいたい。
車いすユーザーでない人の力も必要なんです。WheeLog!を理解してもらうためにも、そうした呼び掛けをこれからもいろいろな方法で行っていきたいと思っています。

人の役に立つこと、喜びが生まれること。人に求められることで、強くなれるのだと思います。

年齢も幅広く、病気、事故など障がいをもった原因も様々な方が集まる
街歩きイベントに参加すると、視野が思い切り広がります。

-これから織田さんが取り組みたいこと、挑戦したいことを教えてください。
それと、心が折れない秘訣があれば、参考にさせていただきたいです!


織田さん:これまで多くのことを経験し、自分一人で抱え込まずに、人に頼ることも必要だということを学びました。
自分だけではやれることが限られてしまうし、思いを共有する人が誰もいないと、これまで続けてきたことが止まってしまう可能性だってあります。
人に頼って、任せるところはお願いして、どんなことがあっても変わらずに動いていけるのが理想。これからもっと広い視野で、しっかりとした仕組みや組織作りを行っていく必要があると感じています。


心が折れない秘訣…。秘訣というほどのすごい策は持ってないですね(笑)
進行性の病気なので、やっぱりシンドイ時はたくさんあるし、体だけでなく、心が折れそうになることもあります。それでも続けていけるのは、たくさんの人の役に立てる、障がいがあってもあきらめなくていい世界をつくりたいという思いがあるから。自分だけのためだったら、もしかしたら投げ出しているかもしれません。
たくさんの人の喜びに繋がっていくこと、求められているということが、私のあきらめない原動力です。


-どうしたら織田さんのように強くなれるのだろう。
心が折れることなく前に進めるのだろう。

お話を伺っていくうちに、織田さんに一番聞きたかったことの答えが見えてきました。

自分だけのためなら、投げ出しているかも

人は人と支えあって生かされて、求められることで強くなれる。それはとってもやさしい強さです。
自分を大切に思い、求めてくれる人がいることを忘れないでいれば、自然と逞しく前に進めるのかもしれませんね。

織田さん、ありがとうございました。
ドバイ万博でのご活躍と土産話を配信していただけるのを楽しみにしています。


◆information
織田友理子さん/ODA YURIKO
大学生の時に遠位型ミオパチーを発症。車いす生活となり、2008年に遠位型ミオパチーの患者会「PADM(パダム)」を発足。代表として同病者の支えとなる活動を開始。
2014年にYouTubeでバリアフリーの情報提供チャンネル「車椅子ウォーカー」を配信。
2018年にはバリアフリーマップ「WheeLog!」を作り、一般社団法人WheeLogを設立。

国土交通省とのWheeLog!を使った共同実証実験や自治体や地元団体などのバリアフリー観光推進協議に総務省からの派遣で参加するなど、国、自治体と連携をとり、幅広くバリアフリー社会づくりに貢献。
海外にも活動を広げ、2019年ポルトガルにて開催された国連後援のWorld Summit Award(WSA)にて、世界一となるWSAグローバルチャンピオンを受賞。
2021年ドバイで開催中のドバイ万博において、Expo Liveのパビリオンに登壇予定。


・一般社団法人WheeLogホームページ

https://wheelog.com/hp/

・アプリのダウンロードはコチラ

https://wheelog.com/hp/ap

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健康、介護、病気…。相談できる人がそばにいますか?

屋台の相談カフェを開く薬剤師、石丸勝之さんに注目です!

石丸勝之さん、東京都板橋区で在宅療養される方を対象にした薬局の薬剤師さんです。
とはいっても、石丸さんは薬局の中にいて、お薬を調剤してくれる薬剤師とは少し違うようです。勤務先は在宅専門なので、お薬の管理や服薬指導は患者さんの自宅に訪問して行っています。
そして、休日は屋台をひき、立ち寄ってくれたお客さんにお茶をふるまい、おしゃべりを楽しみながら体調や健康相談にのっているそうです。

そんな石丸さんを知ったのは、WEBメディアに掲載されていた記事でした。

「雑談のなかにこそ健康状態を知るヒントがある」。

「屋台を引くエプロン姿の薬剤師。夢は『調剤喫茶』を開くこと」。

高齢化社会になり、在宅療養が浸透する中で、病院や薬局だけが
医療の現場ではなく、地域の人が健やかに生活するための支援が多様化している。そんな時代の変化を改めて感じながら、石丸さんの発想と行動力に惹かれて、お話しを伺う機会をいただきました。

Interview


薬剤師という型にハマらない、
対話から始まる健康サポート。

-いろいろなメディアの取材を受けられていますね。それだけ、石丸さんに多くの人が注目しているということですね。期待されることでプレッシャーを感じたりしていませんか?

石丸勝之さん(以下:石丸さん)「屋台で街に出て健康相談を行うという構想を実現させるために、クラウドファンディングに挑戦したんですが、その時、自分が思った以上に支援してくれる人がたくさんいて驚きました。注目してもらっていること、期待されていることはしっかり受けとめていますが、プレッシャーという感じではないです。
その期待に応えたいという思いのほうが強いかな。
ただ、初めてのことばかりなので、新しく知ることや、やらなきゃいけないこともたくさんあって、今は学ぶことがすごく多いです。
想像していたのと現実は違ってた、ということもけっこうあるので、その度に臨機応変に対応したり、軌道修正したり。それでも、前に進んでいる感触はあります!」


-コロナの感染の問題で、いろんなことが進まなくなっている中で、新しい挑戦をするのはすごくエネルギーがいると思います。何もしないと変わらないから、やれるだけのことを出し惜しみせずにやるしかない。石丸さんの行動からは、そんな勢いとまっすぐな思いが伝わってきますね。
出会った人を元気にしてくれるような、明るいオーラ―を感じる(笑)


石丸さん「それは、うれしいな(笑)
昨年の9月にクラウドファンディングで多くの人に支援していただき資金の目途がたって、屋台をつくりました。11月にやっと営業許可が出て、12月に初始動という流れで進んできましたが、まん延防止になって今は様子をみている状態です」

休みの日は街に出て、屋台の相談cafeをオープン!

-発想がすごくいいですね。それに行動力も。普通に薬局の中で働く薬剤師の仕事では得られないやりがいを感じていますか?


石丸さん「自分のやりがい、というのも確かにありますね。でも薬剤師としてのやりがいを求めているということではないんです。もちろん薬剤師の知識と経験が役に立てるのなら、喜んで相談にのります。ただ、そういう健康相談にのることがすべてじゃない。薬や健康以外に話したいこと、聞いてほしいことって、皆さんたくさんありますよね。健康相談がしたい人のほうが少ないと思います。
日々の生活の中で、生きづらさを感じていたり、ちょっと困っているようなこととか、そんな話をしたい時の受け皿というか、話して気持ちがラクになるような場をつくりたいという思いがあるんです。

だから今は、そのためのスタートラインに立ったばかりですね」


-石丸さんのそうした思いは、いつから“夢”となって走り出したんでしょう?


石丸さん「子供の頃から“近所の頼れるおっさん“になりたい、そんな人に憧れるような気持ちがあって、そこが原点かも。
僕は東京の下町育ちなんですが、母親がおせっかい母さんでいろんなことに首をだして、世話を焼いているような人だったんです。そんな母親の影響かもしれません」



-薬剤師になったのも、医薬で人の支えになりたいという思いがあったから?


石丸さん「そうですね。でも、薬局の薬剤師を経験して、少し違うなという思いが膨らんできたんです。
薬局のカウンター越しでは、患者さんは落ち着いて話ができないし、困っていることや相談したいことがあっても話づらいようです。
薬局内は待っている人がいて、混んでいることが多いので話づらいとは思います。でも、それだけじゃなく、患者さんにとって白衣を着た薬剤師は気軽に話せる人ではなく、薬局は話しをしたいと思う場所ではないんだと感じて。
なんか違う、そんな違和感を持つようになって在宅専門の薬局に転職したんです」

寂しい人をつくらない、
あたたかい街づくりを。

-そこから一気に目標に向かって走り始めることにしたんですね。
屋台cafeはスタート地点ということですが、これから実現しようとしていることはどんなこと?


石丸さん「喫茶店のマスターになることです!街に住む人が困ったり、相談したい時に此処に来ればどうにかなるかも、そんな存在になることを目指します。そして、街の人をつないだり、支えあいのコミュニティーが生まれる場をつくりたいですね」


-人の役に立つ。それを具現化することはいろんな意味ですごく難しいことだと思います。
さらりと話してくれたけれど、実際、石丸さんはいろんなことを積極的に学びながら、人の輪も広げていて、しっかりと一歩一歩を踏みしめながら歩んでいますよね。

石丸さん「たしかに、いろいろな方から学ばせてもらっています。
自分の目標を一言で言うと『だれも寂しくないまちづくり』なんです。
調剤喫茶はコミュニティーをつくるための場で、実際に人の役に立つように機能するには、生活に関わる様々な面でのサポートが必要だと思っています。それは医療の範囲をはるかに超えた多方面での知識だったり、専門性だったり。
そうしたいろんな分野の方と協力しあうことが大切かなと思って行動しています」

-例えば、どんな時にそういう協力が必要ですか?

石丸さん「例えば、健康や病気、体調不良では、日々の食事が影響していることも多くあります。そうすると栄養や漢方、ハーブなど、食に繋がるいろんな面での知恵というか情報が必要になってくる。
そんな時に、管理栄養士や調理師、それに八百屋さんやお肉屋さんも!それぞれの専門分野の方の力を借りることができれば、役に立つことが増えていきます。
だからこそ人の繋がりはとても大切で、これからも広げていきたいと思っています!」

石丸勝之さん:東邦大学薬学部を卒業後、薬局薬剤師経験を得て、現在在宅専門の薬局に勤務。夢に向かってまっしぐら!

-石丸さん、ありがとうございました!
石丸さんの夢が叶うと、癒される人、助かる人が増えていく。
そんなイメージが頭に広がって、シアワセな気持ちになれました。
石丸さんの開いた調剤喫茶が、街中を温めてくれる存在になる日を待ち遠しく思います。


■Twitter/ ※調剤喫茶いしまる/匿名質問を募集中!https://twitter.com/chozaikissa
 

『いしまる調剤喫茶・in Unique』はじめます!
Uniqueでは、石丸さんの「雑談から始める健康相談」エピソードを配信していきます。
体だけでなく、心の調整が必要な時も気軽に訪れてもらいたい。そんな
『いしまる調剤喫茶・in Unique』。
どうぞよろしくお願いします。

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障がい者アートに魅せられて。アーティスト・kaito

好きなことを仕事に。
チャレンジしながら前に進む。

幼い頃から難病と闘ってきたkaitoさん。
現在、高校を卒業して創作活動に意欲的に取り組んでいます。
kaitoさんの夢は、自分の作品と作品をデザインしたオリジナルグッズを販売するショップを開くこと。
自分が一番好きなことを仕事にする。
うらやましいくらい夢に向かって一直線。
障がいの有無なんて関係ない。
kaitoさんは自分の道をひたすらに、歩んでいます。


INTERVEW

★アーティスト:kaitoさん (山崎海斗)

福井県在住

難病「筋ジストロフィー」と闘いながら、
創作活動を続ける。

作品の特徴的な点は、

棒線と丸で描いた人間の集合体で描く

「棒人間アート」。



-kaitoさんの作品「棒人間アート」について教えてください。棒人間?とはどういうことなんでしょう?

棒人間をたくさん集めて描いているので、そう呼んでいます」

Untitled
棒線と丸で描いた「棒人間」。この小さな棒人間が集まって、画ができあがります。

- どうして棒人間をたくさん描いて表現することにしたのですか?

「子供のころ、この棒人間をたくさん並べて棒人間同士を紙の上で戦わせたり、棒人間を入れた絵を描いたりしていました。
それを思い出して、棒人間を使って描くことを思いつきました」


- 普通に描くよりも、何倍も時間がかかって、とても大変そう。嫌になったりしませんか?

「楽しいです。動物が好きなので、動物をよく描いています。いつもでき上るのが楽しみです」


- 一番お気に入りの作品は?

「レッサーパンダです。よくインターネットで動物の写真を探して、それを見ながら描いています。レッサーパンダは小動物園で見て、描きたくなりました」


- レッサーパンダのふわっとした毛並みがリアルですね。もしかして、この小さな点のようなものが棒人間?!
すごい!細かい!どのくらいの期間で仕上がった作品ですか?

「1日2時間ぐらい描いて、約2週間くらいかかりました。休みながら描いているので、疲れたり、嫌になったことはないんです」


- 何を使って描いていますか?イグアナや鳥の画は、色が多彩ですごくキレイ!

「ボールペンで描いています。最初は黒いペンで白黒でしたが、今はいろんな色のボールペンを使って描いています」


- 「棒人間アート」という表現方法も独特ですが、動物の表情や描くアングルにもkaitoさんらしさが感じられます。
例えばキリンの画ですが、キリンの特徴の長い首ではなく、顔のアップにしていることとか。視点が独特ですね。
どんなところに、こだわっているのでしょう?

「キリンもネットを見て描いたんです。こんなふうに描きたいというのが浮かんできたら、そのまま描いています。
こだわりは、目です。きらきらした感じになるように描いています。生きている感じが出るように」


- ゾウやネズミ、大きい動物から小動物まで、幅広く動物を描かれていますね。これから描きたいものは?

「今、イグアナと鳥の画が制作途中です。これを描き上げたいです。それと、動物以外にも描いてみたいと思う画があります。お城を描いてみたいんです」


- kaitoさんが描いたお城、どんなふうに表現されるか楽しみです!
今年の目標などはありますか?

「今、90点くらいの作品があります。今年は100点を越えるように頑張って描いていきたいです」


- 作品数が随分、増えてきましたね。
kaitoさんの夢は、ご自身の作品や描いた画を使ったオリジナルグッズを作って販売することなんですよね。
夢に向かって着実に進んでいるんですね。

「はい。画だけじゃなく、僕の画を使っていろんなモノを作って、それを販売したいと思っています。いろんなグッズになれば僕の画を見てくれる人も増えるし、身に着けてもらえたらうれしいです」


- kaitoショップのオープンが待ち遠しいですね!
障がいがあっても関係なく、自分の好きなことを仕事にして、そして自立への道を切り開いている。kaitoさんがそんなふうに前向きでいられる秘訣があれば教えてください。

「好きなことを見つけて、それを楽しんでることだと思います」


◆福井県鯖江市内で開催される「みんながまる○展」に作品を出展予定。

【開催期間】令和4年3月16日(水)~3月21日(月)
【開催場所】「鯖江市まなべの館」1階展示ホール
https://sabaerotary.com

新作も発表予定。
展示会の様子や作品はkaitoさんが「フェイスブックで掲載します」とのこと。

◆棒人間アートHP
https://boningenart215.wixsite.com/-site-1

◆棒人間アートfacebook

https://www.facebook.com/boningenworld

※kaitoさんの作品が12ヵ月を彩るオリジナルカレンダーが販売されています。すでに予定数は完売とのことですが、希望すれば対応してくれることも。Facebookに詳細が記載されています。



★kaitoさんのインタビュー内で紹介した作品は、
一般社団法人 障がい者アート協会に登録されています。下記のサイトからご確認ください。
https://artnowa.org/artist/38402



Unique/Writing:Maeda Rie

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障がい者アートに魅せられて。アーティスト・Shigeru

喜んでくれることが描く喜び。

shigeruさんの描いた絵には、不思議な魅力がある。
動物が好きというだけあって、描くものの対象は猫、鳥、ゴリラなど生き物が大半をしめているとのこと。
紙面いっぱいに描かれた動物たちは、どこか懐かしく、愛らしく、そして思わずクスッと笑ってしまう愛嬌があって、惹きつけられてしまう。

心を和やかにさせてくれる楽しい画。
考える時間が長く、1週間もずっと考え続けたこともあるというshigeruさんは、どんな思いで描いているのでしょう。
わたしが最大限の創造力を屈指しても、とうてい知ることのできない世界がshigeruさんの心の中で広がっているのだろうか。

好きな絵を描いて、人が喜んでくれて、それがとてもうれしいというshigeruさん。
描いたものは、どれも100%満足!と誇らしげな笑顔を見せてくれます。
精神障がいがあることで、社会の中で歩調を合わせて生きていくのは難しいけれど、自分の生きやすい場所で、自分の才を生かしている。
shigeruさんのお話しと作品の一部をご紹介します。


INTERVEW

★アーティスト:shigeruさん

大阪市在住

2020年2月から就労継続支援B型事業所「工房はんど」に通所。

-shigeruさんの作品は生き物を描いたものが多いですね。

「動物が好きです。猫が一番好き。鳥も好き」


-好きなものを描いているんですね。作品の中で一番気に入っているのは、猫を描いたものですか?

「猫の絵は気に入ってる。それと海の絵も。いろんな生き物が楽しそうだから」


-shigeruさんの画は、楽しくて面白いですね。思わず笑ってしまう愉快な感じがして、気持ちが明るくなります。

「面白いのが好きなんです。笑顔が好きなので、笑ってもらいたいんです。笑かしたろかーって思って描いたり」


-なるほど。さすが大阪人(笑)
海の画はいろんな生き物がたくさんいて、賑やかですね。
タコやイカは宇宙人みたい!
描くときに気を付けていることとかあるのですか?

「かわいく描きたい。かわいいなぁって、好かれるように」


-絵を描いてうれしいと思うことはどんなこと?

「いろんな人が喜んでくれるのがうれしいね。選んでもらったのも、うれしい。次にナニ描こうかって考えるのが楽しいね」



-ゴリラの画はどこか人間のようで、かわいらしい感じですね。寝そべってるゴリラがいたり、恐竜のような生き物がいたり。
ゴリラの表情がみんなやさしく感じますね。
shigeruさんの画は茶色やグレーが多いみたい。

「茶色、グレーが好きな色。明るくないけどおしゃれな色が好きな色です」

-shigeruさんがこれから描きたいと思っているのはどんな画ですか?

「景色が描きたい。山とか海とか、自然の画がいいね」

-目指している画家さんはいるのですか?

「葛飾北斎がすごいなと思ってます。あんなふうに景色を描きたいです」

-今まで描いてきた画に点数を付けるとしたら、何点でしょう?気に入っている画と、あまり気に入っていないという画はありますか?

「みんな気に入っているね。みんな満点です!」


「工房はんど」が育む
障がい者と社会の隔たりをなくす
アートのチカラ。

shigeruさんは、「工房はんど」という就労継続支援B型事業所に通所して作品づくりに励んでいます。

shigeruさんの理解者であり、事業所の代表である安野さんは、16年以上も障がいのある方の相談員をされていた経歴があり、その時の経験を生かして「工房はんど」を立ち上げました。
現在、shigeruさんの他に21名の方が通所され、多くの方が発達障がい、精神障がいを抱えています。

「工房はんど」では、通所する皆さんの描いた作品を2次利用して商品化したり、画のリースや販売を行っています。
そこで得た利益は、事業所の運営だけでなく作者にも還元され、彼らの収入を増やすことにも繋げています。

安野さん:「shigeruさんのこともそうですが、通って来るみんなを僕は障がい者と思って接していないんです。できないこともあるけれど、彼らにあった環境さえ整えば、自立して生活できる人がたくさんいます。
僕は画が好きだけど、描くのはヘタクソ。
みんなのほうが心に残る魅力的な画を描いていて、秀でていると思うところもいっぱいあって、そこを大切にしたいと思っています。
誰だっていいところ、悪いところがあるし、できるできないもあります。だから、ここに通ってくるみんなは別に特別じゃない、そのことにもっと多くの人が気づいてほしいし、知ってほしい。障がい者という括りでひとまとめにしないで、一人ひとりの個性や感性をみてほしいという思いで『工房はんど』を立ち上げたんです」

shigeruさんの描いた5匹の猫の画は、企業の新商品開発に起用されました。
トートバックなどの雑貨商品にデザインされ、全国にある店頭に並んだことをshigeruさんはとても喜んで、選ばれた画と同じように動物が5匹並んだ画をしばらく描き続けていたそうです。

こうした企業とのコラボレーションに積極的に取り組んでいる安野さんは、「商品になることで彼らの自信に繋がるんですね、やりがいを感じてもらいたいから、こうした機会を増やしていきたいと思ってます」と話してくれました。

障がい者アート協会やWEBメディアを利用したり、SNSで情報発信することで、「工房はんど」の存在は広く知られていき、販路の開拓にも繋がっています。
ネット社会の中で、今後“障がい者アート“という一つのジャンルが確立していくのか、または障がい者という表現を取り去り、個性あるアートの一つとして普及するのか。そうした点にも注目しつつ、人を魅了する障がいのある人の表現力を、多くの人に知ってもらいたいと思います。

企業の商品開発で選ばれた、5匹の猫を描いたshigeruさんの作品。
トートバックになって販売されました。

「工房はんど」のアーティストたちの作品を使ったオリジナル商品はネット通販で購入ができます。サイトには、無垢でひたすらで、そして無限の可能性を秘めた楽しい作品が並んでいるので、皆さん、覗いてみてください。


◆工房はんど
大阪府富田林市錦織中1-14-1

◆HP/facebook       https://www.facebook.com/kobohand/

◆ネットショップ  https://kobohand.raku-uru.jp/


★shigeruさんのインタビューで紹介した作品は、
一般社団法人 障がい者アート協会に登録されています。下記のサイトからご確認ください。https://artnowa.org/?s=shigeru


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パートナーが病めるとき、一緒に生きる選択ができますか?

一生共に寄り添い、支え合うことを決めたパートナーが治療困難な病気になったとき、これまで築いてきた夫婦の関係に大なり小なり変化が生じます。
夫婦はもともとは他人。どこまで一緒に“闘病“というイバラの道を歩んでいけるのか。共に笑い、共に助け合い、パートナーを支えていく覚悟はできるのか。
夫婦について少し深く考えてみました。


新郎○○(新婦○○)、あなたは○○を妻(夫)とし、健やかなるときも、病めるときも、喜びのときも、悲しみのときも、富めるときも、貧しいときも、妻を愛し、敬い、慰め合い、共に助け合い、その命ある限り真心を尽くすことを誓いますか?


誰もが聞いたことのあるこの台詞。
そう、これは結婚の誓いの言葉の一例です。この一節にある「病めるときも…」をテーマに、今回はALSで闘病中の小田重文さんの奥さんまゆさんにお話を聞かせていただきました。


intertview

ALSでもどうにかなる!
負けない!ポジティブ全開に!

職場も一緒。トヨタハートフルプラザ千葉に行くとお2人に会えます。
トヨタハートフルプラザ千葉/千葉市美浜区稲毛海岸4-5-1
TEL:043-241-1488 


お二人は結婚して10年になるご夫婦です。職場恋愛で結ばれ、二人のお子さんにも恵まれて、まゆさん曰く「それなりに幸せな日々」を送っていたそうです。
そんなとき、重文さんの体に異変が現れ始めました。


まゆさん「左手が動かしにくい、しゃべりにくさを感じる…、急にそう言われました。頑張り屋で負けず嫌いな人なので、私に言ってきた時は、よほど不安になっていたのだと思います」

重文さんとまゆさんのALSとのつきあい(闘い?)は、この時から始まることになりました。

重文さんの仕事は、車の整備士です。
レーシングカーの整備も行うベテランの整備士で、「天職」というほど仕事大好き人間の旦那さんです。それなのに、仕事に支障を感じるほど手の動きがどんどん鈍くなり、半年後に診断された病名は、ALS(筋萎縮側索硬化症)でした。

難病患者なら誰もが経験するであろう、診断後に襲いかかる猛烈な絶望感。明るく社交的な重文さんが、周囲を遮断して自分の殻の中に閉じ込もり、暗くなるばかり…。

当事者は確かに辛い。
周りが見えなくなって、動かなくなる恐怖に怯えて縮こまったまま時間が過ぎていく。
明るくて、子供のようによく笑う重文さんから、だんだん表情がなくなっていくのを傍で見ているしかできないまゆさん。
不安、憤り、悲しみ、もどかしさ…、当事者とはまた違う辛さでいっぱいだったはず。

現在、重文さん愛用のペルモビールは立つこともできるスーパー車椅子!


まゆさん「そうですね。思えばあの時が一番辛かったのかもしれません。知識も情報も不十分で、不安しかない状態だったから。
彼は、もう見るからにどん底で、心の落ち方のほうが病気の進行よりも早いくらいでした。
どうしたらいいのか誰に聞いてもわからないし、そもそも答えがないから向かう方向も見つからなくて…。
でも、そんな状況でも絶対にどうにかなる。大丈夫。病気には負けない。
どうしてだか、そんな強い思いが心の中にあって、私は意外と冷静だったと思います」

それは、確信できる何かがあったから?

まゆさん 「いえ、まったくそんなんじゃなく、根拠のない自信ですね(笑)。
ALSなら気管切開という生きる道があって、死んでしまうわけじゃない。まだ時間がある。どうにかできる。やれることはある。
究極にポジティブ思考に走ってました(笑)」

病人扱いしない。
対等な関係でいたいから。

落ち込んでいた重文さんが、生きることに前向きになれたのは、まゆさんの存在が大きいと思うけれど、きっかけも必要ですよね。

まゆさん 「私は労わるというよりも、このままじゃダメだと思って、いい加減にしな!自分だけが苦しいんじゃない!一人じゃないんだよ!ってぶちきれました(笑)」


スゴイ!その状況でブチ切れられるなんて(笑)
まゆさんの歯に衣着せぬモノ言いは、気持ちがいいくらいサバサバしていて話すテンポも自然と上がり気味になってきます。
そのせいか、まるで漫才のように突っ込んだり、笑ったり。
愉快とは言えない内容のはずなのに、不思議なくらい少しも暗い気持ちにならずに話が進んでいきます。


まゆさん 「夫が前向きになれたきっかけですか?
それは、同じ病気で闘病される患者さんとそのご家族のお陰だと思います。
その頃、同じ地域に住んでいる同病の患者さんを紹介してもらい、その方に会いに行ったんです。
ALSになって10年以上という患者さんですが、自分で介護事業所を立ち上げて、いつもスタッフに囲まれて、とにかく明るくて笑顔がいっぱい。
気管支切開してもこんなふうに生活していくことができるということを、目の当たりにして、私も夫もハッとしました。目の前が明るくなった感じでしたね。お子さんがウチの子供と同じくらいの年齢だったので、自然と家族ぐるみのお付き合いが生まれて、夫はすごくいい影響を受けたようです」


やっぱり、一人で抱え込んでいては追いつめられてしまうばかりなんですね。同じような思いを持つ患者さんやご家と出会うことは、前向きになれる秘訣かもしれません。
重文さんはそのあたりから立ち直ってきて、今では超がつくほどポジティブですね。


まゆさん 「そうですね。もともとストイックな性格で、何でも一つのことに夢中になる人なので、体に良いと思うこと、前向きになれることには、一生懸命に取り組んでいます。
やりすぎってくらい頑張ってしまうので、ハラハラすることもありますけど。
夫は感情が顔に出やすいから、落ち込んだり気持ちが下がっている時はすぐにわかるんです。
そんな時?
普通にしてます。病人扱い、まったくしてませんね(笑)
あんまり長く落ち込んでると、しっかりしろ!って怒ったり、労わったり気を使うこともなく生活しています」

犬の散歩は重文さん担当。愛車(車いす)のペルモビールで一人で外出も。

特別な生活をしているわけじゃない、
だから心のコントロールは自然まかせ

まゆさん自身が落ち込んだり、不安になったり、気持ちのコントロールがつかない時もあると思うけど、そんな時はどうやってケアされているのでしょう?


まゆさん 「自分の時間がもう少しほしいなって思うことはありますね。でも、ほんの少しあったらいいなというだけで、なくても気になるほどではありません。
今は職場も同じなので、ほとんどの時間、夫と一緒にいますが、それは自分にとって普通のことで特別なことではないんです。だから、嫌になるとかないですね」


一緒にいるのが普通。

まゆさんの一言が心に残ります。
病気の夫を抱えて大変で苦労している妻。
きっと、誰もが当たり前のようにそんなイメージを持つことでしょう。
病気になったのは悲しくて、辛いことだけれど、それが全てではなくて、むしろ生活の一部。
一緒に生きていくことに変わりはない。
まゆさんと話をしていると、その思いが伝わってきます。

ケンカしたり笑ったり、賑やかな小田家の日常は温かさで満ちています。
ちょいちょい、落ち込む重文さんを、子供たちがしっかりしろ!と怒った話には爆笑してしまいました。
難病=悲しみ。そんなフィルターを取り去ると、大切なことがよく見えてくるものです。
夫婦でいることは、苦しみの共有だけではないんでよね。
気負うこともなく一緒にいる。
それはまゆさんと重文さんご夫婦の当たり前なこと。特別なことではなく、一番自然な生き方。

一緒にいるのが普通。

その言葉の重みを身に沁みて感じます。

10年先も一緒に笑って、
一緒に暮らしています。

まゆさん、今、一番楽しいと思う時は?

まゆさん 「私も車が好きなんです。
それで、夫と車のことをあれこれ話している時が楽しいかな。
夫が病気になり、生活に手助けが必要だから側にいるという気持ちではないんです。
私が一番話したい相手が夫で、一番必要だと思うのが夫なんです。だから、一緒にいて苦労してるとか思ってないし、言いたいことも言ってます」


少し照れくさそうに話してくれました。
そして、「自分はそれほど強い人間ではない。夫と二人で一人前なんですよ」とステキな言葉を付け加えてくれました。


太くてがっしりとした木は丈夫で強いけれど、折れる時は裂けるようにポキリと折れてしまう。ゆらゆらと風になびかれながら、しなぐように立っている柳の強さを見習わないとね。

柳の心の話は、心理カウンセリングでも例えに使われることのある表現のようですが、私はこの話を祖母からよく聴かされていました。思えば、祖母は柳の心のお手本のような人で、少し、まゆさんと似ているかも。
まゆさんは自分を頑固というけれど、とても正直な人で、そして柳のように根を深く張り、困難に目を背けず、しなやかにかわしながら乗り越えようとしています。
これから先も、お二人はきっと変わらないのだろうと思わずにいられません。
夫婦という関係も柳のごとく。
環境やお互いの気持ちの変化に、時には身を任せるくらい柔軟でいたほうがいいのかもしれません。


ところで例えば10年後、お二人のどんな姿を想像しますか?

まゆさん「変わらないです。変わらず、2人で車の話をして笑ってる。病気とかALSとか、私たちに関係ないとは言えないけれど…。でもやっぱり関係ないんです」

夫婦は他人。
でも、だからこそ、結んだ絆は強くなるのかもしれません。
この先、どんなことが起こるかわからないのは皆同じです。
迷ったり、気持ちが揺れることがあった時こそ、しっかりと自分の心に聴き耳をたててみようと思いました。
意外と、思っていることとは違う声が聞こえてくるかも。
この人と一緒に生きたい。
そんな心の声が聞こえてきたら、迷うことなく気持ちのままにしてみましょう。
苦労かどうか、幸せかどうかは、自分の心が決めること。

まゆさん、重文さんからのメッセージです。

ロボケアセンターでHALのリハビリに挑戦中!

Unique/Writing:Maeda Rie