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インクルーシブな社会をめざし地域に根差して活動する、DET群馬 代表 飯島邦敏さん

 

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障害平等研修(DET)を原点に、住みやすい町づくりを!

 

最近、インクルーシブという言葉を頻繁に目にし、聞くようになりました。情報は溢れるほど豊富にあり、様々な考えや取り組みが行われていることを知ることができます。

その一方で、自分には何ができるのか、何をしたらいいのかと、「多様性が当たり前の社会づくり」という壮大なテーマに対し、迷走する人も多いのではないでしょうか?

インクルーシブ社会の実現をめざすDET (Disability Equality Training・障害平等研修)群馬代表の飯島邦敏さんに、ご自身が目指す社会に向けた活動について、たくさんのことをお伺いしました。


障害は社会がつくったもの。基準を変えていくことで、バリアはなくなる!

 

前田:最近、インクルーシブな社会(多様性を認め合う社会)に向かっているんだな…と感じることがありますが、飯島さんが病気を発症し、車いすユーザーになった10年以上前に比べると、障害者を取り巻く環境は徐々に変わってきていますよね。


飯島さん:私もそう感じています。地域にもよりますが、当時はまだバリアフリー化が新しい感じでしたから。
私の病気は、10万人に一人という難病です。そのため、病気に関する情報は少ないし、今のようなオンラインで交流する手段もなく同病者と会うこともがんばらないと実現できない。すごく孤独で不自由なことばかりでしたね。

とくに外出時、トイレや道の段差、階段とか、車いす生活になってこんなにも不便なことが多いということに気付きました。

トイレ探しは車いすユーザーにとって、大きな不安材料になるんです。私もそれがストレスで、だんだんと外に出ることをしなくなっていた時期もありましたから。

 


前田:病気になっていろんな変化を受け入れることができなくて、なんとなく引け目を感じているという人、少なくないですよね。人に迷惑をかけたくない、足手まといと思われたくない、誰だってそう思いますから。


飯島さん:でも、このままではダメだと思って患者会を立ち上げたりしながら、少しずつ活動を始めたんです。

ただ、自分が暮らしにくいと思う経験をたくさんしているのに、それをどうやって変えていったらいいのか、どう行動していいのかがつかめず、前に進んでいるようで進んでいない。

何か足りないな…と感じていました。

 


前田:そんなときに、人生を変える研修に出会ったんですね。


飯島さん:その当時、DETフォーラム(※)の講師による障害平等研修が伊勢崎市内で行われたんです。その研修に参加して、まるで雷に打たれたようにすごい衝撃を受けました。
それまでモヤモヤとしたことがクリアになって、いろんな迷いが吹っ飛んだんです。


(※)特定非営利活動法人障害平等研修フォーラムdetforum.org)https://detforum.org/


前田:どんな内容がそんなにも衝撃的だったのでしょう?


飯島さん:DETの受け止め方は人それぞれだと思います。
私の場合は、障害者がいるからいろいろな社会問題があるのではなく、誰もが過ごしやすいと思えないこの社会事態に問題がある。
そんなふうに、自分が思っていたこととまったく違う考え方があることに気付いて、
障害とはなにか? 
障害とはどこにある? 
障害のある社会とは?
といったことを深く考えることができました。


前田:確かに、地下を開発して階段だらけになった街の構造や、障害者とクラス分けされる教育システム…今の社会は普通であることが当たり前で、それに当てはまらないと障害者という肩書でくくられてしまう。まずは、不自由のある社会構造に目を向けるべきという考えですね。

 


飯島さん:簡単に言うとそういうことです。

今の社会が障害者をつくっている。

障害のない人が基準になってつくられた今の社会の中では、当然、生きづらく、希望を持って人生を楽しむことができないという人が多くいます。

でも、不自由なことを補う仕組みが整っていれば不便や辛さがなくなり、障害を感じないで暮らすことができます。そうなると「障害者」そのものが存在しなくなりますよね。

そんなふうに社会の基準を変えることで、誰もが暮らしやすいと思える社会づくりができるようになると気づきました。


前田:社会の基準を変えるというのはとても大きな目標だと思いますが、自分が経験した“不自由”をなくすためにはどうしたらいいのか…を考えると、自分ができること、何をしたらいいのかが少し見えてくるような気がします。


飯島さん:そうですよね。
研修後はすごく前向きな気持ちになれて、もっとこのDETを深く知って活用し、社会を変えていくための活動を行っていこうという思いが強くなりました。

それで、年1回、DETフォーラムが主催する「ファシリテーター養成講座」を受講し、そこからさらに認定ファシリテーターになって、その後はDET群馬を3人の仲間と立ち上げて、いろんな地でDETを行っています。


前田:飯島さんは、設立当初は事務局長、2018年からは代表を務められているそうですね。

研修を受けてからは目まぐるしいほどスピーティーに活動されていますね。


飯島さん:たしかに、自分がやるべきことがはっきりと見えてきて、気が付いたらこの活動にどっぷりハマっていますね(笑)

 

障害とは?バリアフリーとは?DET群馬が実施する障害学習研修。

前田:地元群馬を中心にした飯島さんの活動を教えてください。


飯島さん:DET群馬の主な活動は、「障害平等研修(DET)」の実施です。群馬県内だけでなく近隣の県や企業研修などにも対応しています。


前田:DET群馬のホームページには、「障害」を個人モデルではなく「社会モデル」として考えていくワークショップ型の障害学習研修と記載されていて、すごく興味がわきました。


飯島さん:障害当事者が参加者と対話しながら一緒に答えを見つけていく新しいタイプの障害学習研修を行っています。 

参加者に、社会モデルとしての考え方と視点を獲得してもらうことで、一人一人が何をすべきかを考え、行動(アクション)することへと結びつけていくための研修スタイルなんです。


前田:企業や中学、高校でも研修を行っているようですが、幅広い層を対象にされていて、飯島さんはじめDET群馬のファシリテーターは講演や研修スキルが高い方ばかりですね。


飯島さん:
まったくそんなことはないですよ(笑)

私に関して言えば、実は人見知りですから。人の前に立ってモノを言うなんて、苦手で病気になるまでやったこともなかった。

今でも苦手なほうなんですよ。


前田:飯島さんが人見知り!それは衝撃的な告白(笑)

人と接するのが好きで、無理することなく出会いや繋がりをつくって楽しめる方としか思えませんでした(笑)


飯島さん:よく言われます(笑)

苦手ではあるけれど、研修を行ったり、活動を続けていくにはそんなこと言ってはいられない。

じゃあどうしているか…というと、話好きで人見知りしないもう一人の自分をつくって対応しているんです。分身がいるようなイメージで、人前で話す時は分身に入れ替わる(笑)


前田:それはいい方法ですね。人見知りでもファシリテーターになれる?


飯島さん:もちろん、大丈夫!

私でもどうにか活動していますからね。
人前だと緊張してうまく話せない、自信がないという人も、社会を変えていきたいという思いがあったら、それを伝えることをあきらめてほしくないんです。

いいアドバイスになっているのかわからないけれど、気持ちさえあれば苦手でもどうにかできるってことを自分の経験から伝えたいですね。

 


当事者が社会を変える。地域に根付いたファシリテーターの活動。

 

前田:「DET群馬」を立ち上げて、自分の住んでいる地域から変えていくというのは、飯島さんにとって自然な流れだったのですか?

地域で活動を根付かせていくほうが、動きを起こしやすいのでしょうか?

 


飯島さん:そうですね。
自分が住む地域には当然、思い入れがあるし、自分にとって身近にある課題でもあるわけなので。


前田:当事者がファシリテーターとして活動の中心になっているんですね。


飯島さん:今の社会に生きづらさ、暮らしにくさを感じている当事者しかわからない苦労や不自由さがあると思います。

それは普通に生活できている人には気づかないことです。

当事者がバリアフリーの推進者になることで、そうした不自由さに気付いてもらうことも大切な一歩だと思っています。


それと、自分も経験者ですが、障害者は就労の困難性が高く、生活のために様々なことをあきらめなければならないという現実があります。

DET群馬では、ファシリテーターという役割を担うことで、活動そのものが仕事として収入に結びついたり、また生きがいになっていく。そんな可能性の広がりにも期待できるようになればいいという思いもあります。


前田:当事者が、不自由なこと、変えるべきことを障害者と縁のなかった人たちと共に考え、少しずつ変化を起こしていく。

それが各地で実現していけば、誰もが望む住みやすい街が実現し、未来に希望を持てるようになるのでしょうね。


飯島さんから、バリアフリーには4つの壁があると教えていただきました。

心理・制度・物理・環境

どの壁もなくさなければと思うと、どこから手を付けていいのか迷い、自分の無力さを感じてモチベーションも下がってしまいそうになります。

そんな時、どうしたらいいのか…。

「自分がやりたくないって思っていることをやる。そうすると、なにかしら動きがでてくるもの」

これも、飯島さんからのアドバイス。

なるほど。やりたくないことが実はやるべきこと…なんですね。



さて、次回は、実際に飯島さんが取り組むDET群馬の活動についてもう少し詳しくお伺いしていきます。

観光地としての地域の活性化にも大きなメリットをもたらしているとても興味深いお話しです。

次の掲載もぜひご一読ください。

 


飯島邦敏さん Profile

38歳のときに、10万人に一人の神経難病(CIDP)を患い遠位の四肢麻痺となる。2016年にDET研修に参加。同年「DET群馬」を設立し、現在代表を務める。

・障害平等研修フォーラム認定Aファシリテーター
・DETファシリテーター養成講座 チューター
・患者会 神経難病ケアネット スリーノース代表
・伊勢崎市身体障害者福祉団体連合会 会長
​・群馬県身体障害者福祉団体連合会 理事
・群馬県観光審議会 副会長
・特定非営利活動法人 日本福祉教育研究所 副理事
・群馬県せきずい損傷者協会 役員
​・東京ダイバーシティーライオンズクラブ会員​
・伊勢崎市障害者差別解消支援地域協議会 副会長
・伊勢崎市防災会議委員
・伊勢崎市人権教育、啓発の推進に関する伊勢崎市基本計画推進協議会委員
・伊勢崎市障害者相談員
・伊勢崎市障害者計画策定委員
​・伊勢崎市社会福祉協議会評議員
​・群馬県特別支援教育推進計画検討委員
・福祉用具専門相談員/​福祉住環境コーディネーター2級


●DET群馬

https://detgunma.wixsite.com/gunma

 

★Unique/Writing Maeda Rie 

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生活

ぜひ知ってほしい、介護保険制度。介護は自分や家族にとって身近な問題です。

介護制度をざっくり解説!

80歳のおばあちゃんが脳梗塞で突然倒れて介護が必要になったら…、という一つの例にそって介護保険の制度を説明する動画です。

「対象は、原則65歳以上」、「1割の額の負担でサービスを利用できる」、「状態によって介護度が決まる」などの基本的な内容を、りゅうさん流にかみ砕いて分かりやすく伝えています。


「ケアマネさんってなにをする人?」
「サービスにはどんなものがあるの?」

そんなことも、ざっくりと分かります。


基本から少しそれますが、「40~64歳で、認知症、リウマチ、末期癌の方も介護保険を利用できる」という大事な内容に触れています。
65歳以上でなくとも、介護保険で定められた介護が必要になる病気であれば利用できるんですね。

特に、人口の2人に1人はかかる病気と言われる癌。

さまざまな治療法が出てきて、癌と共存する人が増えています。癌の末期という制限はあるものの、介護保険サービスが利用できるということも初めて知りました


ALS患者の場合、65歳未満でもサービスを受けることができます。診断時40歳をすぎていた私は、介護保険にずっと助けられています!


介護保険は65歳以上の人だけのものではありません。ざっくりと制度を知っておくのは、どんな年代の人にとっても安心材料になると思います。


医療と介護・39の職業!健康を支えるお仕事大集合!

自分がどのような職種の方々のお世話になっているか。または、直接お世話になっていなくても、支えてくれている方々のことを知ることは、難病や障害の当事者として生きていくときの力になると思って、この動画をご紹介します。

「医療と介護のお仕事」を皆さん、どれだけ知っていますか?

私は10も思い浮かびませんでした。
実際に、私のサポートに関わってくれている方々を職業別にみると、現在はそのくらいの数なのです。

デイサービスでは介護福祉士やホームヘルパー、訪問では作業療法士や言語聴覚士、マッサージ師、病院では医師や看護師です。


でも、世の中にはその何倍もの職種が存在し、患者さんや介護保険サービスの利用者を支えていることを動画を観て知ることができました。

自分が今の生活を継続できるのは、医療や介護という職域だけでなく、社会全体に支えられているからなんですね。

例えば、病院からの依頼で患者さんの画像データを管理する医療系IT企業や病院の経営を守る医療経営コンサルタント。

一見、自分に関係のない仕事のようですが、どれかが欠けてしまうと私たちの療養生活に影響が出て、現状維持が難しくなるのだと思います。

そんなふうに、視野を広く持つことの大切さにも気づかせてくれた動画です。

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介護に生かしたいお化粧のちから 化粧×介護

臨床化粧療法士®河村しおりさん × 土屋訪問介護事業所・綾部清香さん × インタビュー・Unique 前田りえ


介護サービスのプロフェッショナル、土屋訪問介護事業所でブロックマネージャーを務める綾部清香さんと化粧を介して心身のケアを行う臨床化粧療法士の河村しおりさんの対談です。
介護の現場で、お化粧のちからは生かせるのか。
重度訪問介護のリアルな現状を話の舞台に、介護サービスを提供するヘルパーさん、受け手となるご利用者の双方の立場になってお化粧の生かし方を考えてみました。

前田りえ(以下:前田)
「介護とお化粧というテーマでお話伺いながら、介護現場でのお化粧の生かし方を探っていきたいと思っています。

一見、関係性が薄いように思いますが、お化粧と介護、その接点や結びつきを感じたご経験などはありますか?」


綾部清香さん(以下:綾部)
「今日、河村さんとのお話する機会をいただいたので、あれこれと考えていたら、自分の曾祖母のことを思い出しました。

小さい頃、曾祖母によく面倒をみてもらっていて、わたしはひいお婆ちゃん大好きっ子だったんですが、最近は思い出すこともなくなっていたのですごく懐かしい気持ちになりました。


思い出したのは、お婆ちゃんが通っていたデイサービスでお化粧をしてもらった日のことです。みんなにキレイって言われて、すごく嬉しかったんだと思います。私にも見せたいから、帰ってくるまでお化粧を落とさないで待っててくれて。
あの時の、真っ赤な口紅を塗ってうれしそうなお婆ちゃんの顔、久しぶりに思い出しました」



河村しおりさん(以下:河村)

「すごくいい思い出ですね。お化粧すると気分がいきいきして高揚感が生まれて、人によっては代謝が上がって、口腔ケアにもつながっていく。いい効果がいっぱいあります。

キレイになったねーって言われたら、やっぱりうれしくなりますよね」



綾部「そうですよね。いくつになってもキレイでいたいって思うのは当たり前で特別なことじゃない。それは、病気や障がいを持った方でも同じで、お化粧したり身だしなみが整っていると、気分よし!ってなりますよね。

臨床化粧心理士®の資格をとった方は、高齢者や介護が必要な方にもお化粧のアドバイスを行っているんですか?」



河村「2018年から化粧に関する3種類の資格講座を運用していて、認定資格者それぞれが美容に関する分野だけでなく、いろんな場で活躍しています。医療や介護の現場でも資格を生かしてがんばっている人はたくさんいますね。

臨床化粧療法は、お化粧を介した心理療法という考えが核にあるので、メンタルケアにおすすめなんです。
お化粧というのはあくまでもきっかけであって、行為に過ぎないんですが、それでもお化粧をすることですごくポジティブになったり、自信が持てるようになったり、心理面ではすごくいい効果が出ると思います」


前田「介護の現場でも、お化粧することを望まれる方はきっと少なくはないと思うのですが、いかがでしょう?
実際にお化粧をサポートすることはあるのでしょうか?」 


綾部「土屋訪問介護事業所は、重度介護が必要な方への訪問サービスが主なんです。動くことができなくて、自分ではお化粧をすることが難しいご利用者が多くいます。

動けなくてもキレイでいたい、お化粧してもらいたいという方にはその気持ちに応えたいと思うのですが、ご利用者の生活環境やスタッフとの関係性とか、それぞれ状況も違うので、そういうきっかけをつくるのが難しい場合もあるんです」



前田「お化粧って個人差があるから、サポートする側も得意な人もいれば苦手な人もいるはず。そこが一番の課題みたいですね


河村「お化粧って、いろんな段取りがあって、すべてに意思決定、判断、選択が必要とされる実はすごいハイレベルな行為。だからサポートする人にとってもハードルは高いはずです。

まずはスキンケアからトライしてみたらどうでしょう。肌を守って、清潔感を保つ意味でもスキンケアはとても大切です。
正しいやり方をすることで肌の状態がよくなるし、スキンシップという面でも効果的だと思います」


綾部「高齢者の方には、スキンケアサポートから声掛けするのはいいですね。
病気や障がいで介護が必要になった方に関しては、自分でやっていた頃と同じように生活することを望まれる方が多いんです。だからスキンケアも毎日、朝夕しっかりやってお肌ツルツル。うらやましいくらい(笑)
そんな方に、美容の知識やメイクに自信がないスタッフは積極的にお化粧の話をしにくいんですよね」


河村「病気になっても生活を変えたくない気持ちは、すごくよくわかります。
ご利用者の気持ちが一番だと思うから、まずそこを確認するきっかけが作れるとスムーズだと思うけれど…。
ヘルパーさんの得意、不得意があることを前提にすると、誰でも声を掛けやすくするような、仕組みがほしいところですね」


綾部「ヘルパーさんとご利用者の相性の問題もあるし、コミュニケーショ不足でうまくいかないというケースもあるので、スタッフに上手なきっかけの作り方を伝えたいな、と思うことが多いです」

河村「ちなみに、美容師法という法律では、美容の免許を持つもの以外は首から上のお化粧を行うことが禁止されているんです。この法律遵守の立場からすると、専門知識がない方がお化粧をしてあげることで、トラブルが発生することもあるんじゃないかと。それが心配ですね」


前田「美容師法という法律で規制されるくらいだから、お化粧にはメリットだけでなくて、気を付けなければいけないリスクもあるってことですよね」


河村「お化粧品が肌に与える問題や髪を染める時の市販のカラーリング剤のトラブルとか、いろいろあるんです。
薬を服用されている方も多いだろうし、体力、免疫が下がっている方も少なくはないと思うので、そういう方をケアする最低限の知識は持っていないと心配です」


綾部「美容師法では、そういう縛りがあるんですね。介護の制度では、お化粧はヘルパーの仕事として認められていますね。

居宅介護サービスの中でヘルパー(介護職員)が提供する生活支援業務に、メイクも含まれているんです。
身体整容(※1)の一部です。

私たち(介護職員)がお化粧をお手伝いするのは、美しくなってもらうことが目的ではなくて、身だしなみを整えたり、衛生面のケアの一つ、生活の中で必要なケアというとらえ方をしています」

※1訪問介護サービスや介護保険施設の介護現場で、介護者が提供する生活支援業務に「身体整容」という項目があって、洗顔・歯磨き・整髪・爪切り・耳かき・ひげそり・メイクのサービスが含まれています。


前田「お化粧は身だしなみの一部。そういう介護制度の内容だったり、現場の状況を知らない人が多いのではないでしょうか?

もっと多くの人が知ることになれば、ヘルパーさんを多面的にサポートすることができるのかもしれませんね」


綾部「重度訪問介護では、ご利用者の家族のかわりになって生活を支えることが求められるので、サポートする内容はものすごく多いし、幅広いんです。
人対人の関係性も重視される仕事だから、そういう面でヘルパーのサポートも必要なんです



河村「家族のかわりになって…はすごいっ!って思います。そうやって患者さんを支えているのを、知らない人も多いんじゃないでしょうか。社会に必要な素晴らしいお仕事だと思いますよ。

私たち臨床化粧療法士®もそういう介護事情というか、制度のことを知ることで、発展があるというか、お手伝いできることが見つけられるように思います」


綾部「ご利用者の生活の中に入ると、その方のペースで介護が成り立っているケースが多いのですが、河村さんが話されるように、トラブルにつながらないための知識は持っておくべきだと思うんです。
ご利用者の要望に応える時も、心配があるときはそのことをちゃんと説明することができれば、信頼関係が保てますよね」


河村「正確な情報を知っておくことは大事だと思います。
例えば、化粧をしたら、落とすサポートも考えてあげなくちゃダメですね。体を起こせない方がちゃんとお化粧を落とすにはどうしたらいいのか。
ふき取りタイプのクレンジングを使うとか、使ったことのない商品を使うのであれば肌にあうのかどうかをチェックするとか。
そういった知識を持っていないと、サポートする人も、される人も不安になるし、トラブルを起こさないための学びは絶対、もっておいたほうがいいですよ」


前田「お化粧はキレイになることでの心理的な効果だけでなく、介護の現場では、コミュニケーションづくりに生かすことができると思いますが、いかがでしょう?」


綾部「ヘルパーがご利用者との信頼関係をつくるのに必要なのは、ご利用者のことを知ることなんです。スキンケアやお化粧の話題からいろんなことを知ることができるかもしれないですね。

それにお化粧やスキンケアのサポートを行うと、肌に触れることになるので、グッと距離感がちぢまる気がします」



河村「コミュニケーションに生かすにもいいですね!
スキンケアの話をしましたが、他にはネイルもおすすめですよ。
ネイルは、装飾や好みの色でキレイになった手を自分の目で確認できるところがいいんです。鏡で見るのとは違ったリアル感があって、気持ちがあがりますよね」



綾部「アートっぽく仕上げることができなくても、シールとかありますよね。爪がツルツル、艶っぽい光沢感があるだけでも、ちょっといつもとは違う感じがして楽しいかも」



河村「臨床化粧療法士®協会の活動には、高齢者施設に出向き、お化粧体験や指導を行うこともあるのですが、訪問だとそれは難しいですよね。
でも、ヘルパーさんやご家族に向けて、お化粧のケア方法を知る機会があったら喜ばれるんじゃないでしょうか」


綾部「今、重度訪問介護の現場は人手不足で、十分な介護を受けられない方もいて、それをなんとかしたいんです。
一人でも多くの人が、ヘルパーさんがついて安心して生活していただけるようにするのが課題であって、大きな目標でもあります。

そのためにできるこは何か…を考えると、私は介護現場で働いていた経験から、ヘルパーさんが働きやすい環境を作っていきたいと思っているんです。
お化粧にかぎらずですが、ヘルパーが自分では対応しきれないこともたくさんあるので、そういう時に役に立つきっかけやヒントになるようなことを提供していくことが必要と感じています」

 


河村「綾部さんのお話しを伺って、重度訪問介護についてもっと深く知りたいと思いました。そういうきっかけをいただいてありがたいです。

ヘルパーさんをサポートすることが、患者さんのサポートにもつながっていくのだと思います。

お化粧によるプラスの心理効果をどうやって現場に生かしていくかは、まだ課題がありますね。
私たち臨床化粧療法士®が重度訪問介護の現場でどんなサポートができるか。その方法を見つけていきたいとも思います」


前田「綾部さん、河村さん、ありがとうございました!
介護の状況をよくするには、質と量の両面が十分に満たされることが必要だと思います。

お二人のお話から、介護に関わる方が質をめざしていける環境づくりへの大切さを改めて感じました。
それと、現場を知ることで多くのことに気付かされますね。

こうした領域の異なる異業種の出会いから、新しい支えあいのスタイルが生まれることを期待します」


綾部清香さん

ユースタイルラボラトリー㈱
土屋訪問介護事業所
エリアマネージャー

ユースタイルラボラトリー株式会社が運営する土屋訪問介護事業所に2015年入社。現在、千葉県・神奈川県の事業所管理を行うブロックマネージャーを務める。

★綾部さんのプロフィール詳細はコチラ
https://tsuchiya-houmon.com/4439/

★土屋訪問介護事業所
https://tsuchiya-houmon.com/

 

河村しおりさん

一般社団法人
日本臨床化粧療法士協会
代表理事

 

 

20代前半に指定難病(SLE・全身性エリテマトーデス)の診断を受ける。
闘病生活を送る中で、“化粧”による対人支援の道を見つけ、臨床化粧療法士®としてスキンケアの考え方を提唱。
化粧外来の運営や、医療機関内での美容相談、臨床化粧療法士®の認定・育成に力を注ぐ。

★河村さんへの講演依頼、臨床軽症療法士®へのセミナー依頼についてはこちらをご参考に。
ttps://japanclinical-cta.org/kigyou/
一般社団法人 日本臨床化粧療法士協会
https://japanclinical-cta.org/
★資格に興味を持った方はコチラを要チェック!https://japanclinical-cta.org/manabu/