喜んでくれることが描く喜び。
shigeruさんの描いた絵には、不思議な魅力がある。
動物が好きというだけあって、描くものの対象は猫、鳥、ゴリラなど生き物が大半をしめているとのこと。
紙面いっぱいに描かれた動物たちは、どこか懐かしく、愛らしく、そして思わずクスッと笑ってしまう愛嬌があって、惹きつけられてしまう。
心を和やかにさせてくれる楽しい画。
考える時間が長く、1週間もずっと考え続けたこともあるというshigeruさんは、どんな思いで描いているのでしょう。
わたしが最大限の創造力を屈指しても、とうてい知ることのできない世界がshigeruさんの心の中で広がっているのだろうか。
好きな絵を描いて、人が喜んでくれて、それがとてもうれしいというshigeruさん。
描いたものは、どれも100%満足!と誇らしげな笑顔を見せてくれます。
精神障がいがあることで、社会の中で歩調を合わせて生きていくのは難しいけれど、自分の生きやすい場所で、自分の才を生かしている。
shigeruさんのお話しと作品の一部をご紹介します。
INTERVEW
★アーティスト:shigeruさん
大阪市在住
2020年2月から就労継続支援B型事業所「工房はんど」に通所。
-shigeruさんの作品は生き物を描いたものが多いですね。
「動物が好きです。猫が一番好き。鳥も好き」
-好きなものを描いているんですね。作品の中で一番気に入っているのは、猫を描いたものですか?
「猫の絵は気に入ってる。それと海の絵も。いろんな生き物が楽しそうだから」
-shigeruさんの画は、楽しくて面白いですね。思わず笑ってしまう愉快な感じがして、気持ちが明るくなります。
「面白いのが好きなんです。笑顔が好きなので、笑ってもらいたいんです。笑かしたろかーって思って描いたり」
-なるほど。さすが大阪人(笑)
海の画はいろんな生き物がたくさんいて、賑やかですね。
タコやイカは宇宙人みたい!
描くときに気を付けていることとかあるのですか?
「かわいく描きたい。かわいいなぁって、好かれるように」
-絵を描いてうれしいと思うことはどんなこと?
「いろんな人が喜んでくれるのがうれしいね。選んでもらったのも、うれしい。次にナニ描こうかって考えるのが楽しいね」
-ゴリラの画はどこか人間のようで、かわいらしい感じですね。寝そべってるゴリラがいたり、恐竜のような生き物がいたり。
ゴリラの表情がみんなやさしく感じますね。
shigeruさんの画は茶色やグレーが多いみたい。
「茶色、グレーが好きな色。明るくないけどおしゃれな色が好きな色です」
-shigeruさんがこれから描きたいと思っているのはどんな画ですか?
「景色が描きたい。山とか海とか、自然の画がいいね」
-目指している画家さんはいるのですか?
「葛飾北斎がすごいなと思ってます。あんなふうに景色を描きたいです」
-今まで描いてきた画に点数を付けるとしたら、何点でしょう?気に入っている画と、あまり気に入っていないという画はありますか?
「みんな気に入っているね。みんな満点です!」
「工房はんど」が育む
障がい者と社会の隔たりをなくす
アートのチカラ。
shigeruさんは、「工房はんど」という就労継続支援B型事業所に通所して作品づくりに励んでいます。
shigeruさんの理解者であり、事業所の代表である安野さんは、16年以上も障がいのある方の相談員をされていた経歴があり、その時の経験を生かして「工房はんど」を立ち上げました。
現在、shigeruさんの他に21名の方が通所され、多くの方が発達障がい、精神障がいを抱えています。
「工房はんど」では、通所する皆さんの描いた作品を2次利用して商品化したり、画のリースや販売を行っています。
そこで得た利益は、事業所の運営だけでなく作者にも還元され、彼らの収入を増やすことにも繋げています。
安野さん:「shigeruさんのこともそうですが、通って来るみんなを僕は障がい者と思って接していないんです。できないこともあるけれど、彼らにあった環境さえ整えば、自立して生活できる人がたくさんいます。
僕は画が好きだけど、描くのはヘタクソ。
みんなのほうが心に残る魅力的な画を描いていて、秀でていると思うところもいっぱいあって、そこを大切にしたいと思っています。
誰だっていいところ、悪いところがあるし、できるできないもあります。だから、ここに通ってくるみんなは別に特別じゃない、そのことにもっと多くの人が気づいてほしいし、知ってほしい。障がい者という括りでひとまとめにしないで、一人ひとりの個性や感性をみてほしいという思いで『工房はんど』を立ち上げたんです」
shigeruさんの描いた5匹の猫の画は、企業の新商品開発に起用されました。
トートバックなどの雑貨商品にデザインされ、全国にある店頭に並んだことをshigeruさんはとても喜んで、選ばれた画と同じように動物が5匹並んだ画をしばらく描き続けていたそうです。
こうした企業とのコラボレーションに積極的に取り組んでいる安野さんは、「商品になることで彼らの自信に繋がるんですね、やりがいを感じてもらいたいから、こうした機会を増やしていきたいと思ってます」と話してくれました。
障がい者アート協会やWEBメディアを利用したり、SNSで情報発信することで、「工房はんど」の存在は広く知られていき、販路の開拓にも繋がっています。
ネット社会の中で、今後“障がい者アート“という一つのジャンルが確立していくのか、または障がい者という表現を取り去り、個性あるアートの一つとして普及するのか。そうした点にも注目しつつ、人を魅了する障がいのある人の表現力を、多くの人に知ってもらいたいと思います。
「工房はんど」のアーティストたちの作品を使ったオリジナル商品はネット通販で購入ができます。サイトには、無垢でひたすらで、そして無限の可能性を秘めた楽しい作品が並んでいるので、皆さん、覗いてみてください。
◆工房はんど
大阪府富田林市錦織中1-14-1
◆HP/facebook https://www.facebook.com/kobohand/
◆ネットショップ https://kobohand.raku-uru.jp/
★shigeruさんのインタビューで紹介した作品は、
一般社団法人 障がい者アート協会に登録されています。下記のサイトからご確認ください。https://artnowa.org/?s=shigeru
Unique/Writing:Maeda Rie